第56話 沈没。

 *食べ物に文句をつける習慣はありません。例外的なものです。

 

 業務スーパーで格安で買ってきた、2Lボトルのアイスコーヒーが、長い事常温で店に並んでいたためか、それとも消費期限が過ぎていたためか……香りは良いんだけれど、味がひたすら苦い。


 飲むと、胸やけがして、わだかまる。




 吐き気がして、苦しいのでつい、考えなくてもいいことを考えてしまう。


 世界平和とか……前言撤回、考えるべきだろう。


 お腹も壊してしまった。




 母に訴えたら、「薄めて飲んだら?」とか「いいわ、お母さん飲むから」っていうけれど、心配だわ。


 そして、私が文句をつけたものだから、母が今度は紙パックのアイスコーヒーを買ってきて飲めという。


 今、ダイエット中で、飲み物はお茶かコーヒーに決められているのだった。




 で、飲んでみた。


 以前のことがあるから、少量、カップの半分くらいの量を、ちょっぴりずつ口にした。


 体に震えが来た。




 手指がプルプル震えて、またも胸やけがするので、ソファに横になった。


 頬から血の気が引いていく感覚がする。


 口の中はカラカラで、飲みくだせない唾液が舌の裏にたまっていく。




 なにもできない。


 気持ち悪くて、起き上がれない。


 また、母が「私が薄めて飲むわ」と宣言。




 しかし、すごく危機感を感じるので、実はやめて欲しい。


 私は、安売りのインスタントである、ネスカフェ・ゴールドブレンドを、ごくごく薄味で呑むのがいい。


 どうやら、自分は甘党なんだなと改めて思った。

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