一矢射的

　実に見事です。 　中国の三国時代を舞台とした復讐劇でありながら、我々が読んでも違和感なく入り込めるように様々な配慮がなされていました。当時の風習、常識について事細かな説明が入っ…続きを読む

ベットとベッド。 シミュレーションとシュミレーション。 正しい表現はどっち？ そんなカタカナ表記の誤用について面白おかしくまとめた為になるエッセイです。カクヨム作家たるもの、言葉…続きを読む

人のとる行動には何らかの因果関係があって、深読みすれば行動から動機を読み解くことも出来る。それが名探偵ホームズが世に広めた推理というものであります。 この推理、大層なものに見えて意…続きを読む

人魚の伝説が残る島、毎年行われる祭儀、その裏で脈々と行われてきた生贄の儀式。幻想的な文章で紡がれる祭りの様子は「美しい」の一言です。 丁寧に重ねられる描写は残酷なこの世界に未だ非現…続きを読む

まるで揺りかごのような優しさで描かれた学生さん向けの恋愛小説です。 図書館で見つけた秘密の本を通じて行われる文通。顔も名前も知らない相手は色々な本を紹介してくれるまるで「博士」のよ…続きを読む

残念なことだけど世の中には嫌な奴が一定数居て、そいつらと関わらずに生きていくのは不可能なのです。では、どうしたら良いのか？ 嫌な奴を避けて、膝を抱えながら自室に引きこもっていればよ…続きを読む

私も企画でよくレビューを書いているので、筆者さまの気持ちは良くわかるのですが。実の所、カクヨムには二種類の作品があるのです。レビューが書きやすい作品と、どうやっても書けそうにない作…続きを読む

耽美にして瀟洒、バラの香りが漂う華族の結婚生活を描いた傑作です。 恋と結婚は似て非なるもの。ましてや貴族であれば、子孫を残さねばならないし、お家同士の関係やしがらみも多々あるもので…続きを読む

実に興味深く面白い話でした。 インテリ文学部の大学生と人妻の不倫。 それだけならアリガチだと読み流したでしょう。 ところが、この主人公は不倫を正当化し「それを悪しく罵る世間の方がお…続きを読む

キャラクターというものはやはり作品の魅力に直結している。そう判らせてくれる良作でした。恋人に裏切られた過去を持ち、そのせいですっかり女性不審になってしまった主人公。これだけ書くと有…続きを読む

モラハラ、それは心の病。 協調性が著しく欠如し、自分の決めた謎ルールに他人を従わせるのが当然だと思っている人のこと。 この作品ではそんなモラハラ嘘つき夫がコミカルに描かれています…続きを読む

ひとつの恋がたったの一言で終わる。 未来を信じていた恋人たちにとって、それはまさにこの世の終わりに等しい宣告です。アタマが真っ白になって考えられない、理由も判らずに泣くしかない。 …続きを読む

彼は「渡り鳥」であり「５２ヘルツの鯨」でもあった。 その共通点は、絶え間ない孤独。 溜息が出るほど美しい文章でした。 読み終わる前から「今回の入賞これだな」と確信できるほどに。 …続きを読む

もしも拷問官の相棒が心を読めるテレパスだったら？ 斬新な発想で描かれたこの作品はファンタジーの新しい地平を切り開く無限の可能性を秘めています。リアリティあふれる世界観でありながら、…続きを読む

クライマックスの衝撃が、企画で集まった作品の中でも群を抜いていました。 そこに至るまでヒントとなる沢山の描写はあるのだけど、どれもさりげない見せ方で読者に気付かせないんですよねぇ。…続きを読む

手傷を負った猫又が霊能力者に修行をつけてもらい「大切なあの人」を守る為に必要な力を身につけ再起するまで…妖怪と人のちょっと不思議な師弟関係を描いたアヤカシ奇談です。 鬼滅の刃しか…続きを読む

通常、人の死は全ての終わりでありその先に物語など存在し得ないはずですが。 これは死すらも「一時の別れ」と捉え、幾度の転生を経ようとも再び巡り合う「固い絆に結ばれた四つの魂」の物語な…続きを読む

あと十年で米寿を迎える主人公の悩みは両親が「かつて住んでいた」家の管理。 売るのも壊すのもそう簡単ではないし、維持するのだってお金がかかる。 ここにあるのは時の流れと相続にまつわる…続きを読む

緑内障。場合によっては失明の危険もある恐ろしい病です。 スマホいじりと読書が何よりも趣味の奥様と…彼女を大切に思いながら新しい趣味や生き方を探すよう提案する旦那様。 こう書くと重…続きを読む

恋愛作品は告白したら終わりなのだろうか？ 恋人同士の甘い関係は結婚したら終わりなのだろうか？ ある意味ではそうだ。実際、多くの作品がそのような結末を迎えている。 けれど実際の人生…続きを読む

夢を追いかけるのは独りで続けられることではありません。 誰かと励まし合い、同じ夢を見てくれる仲間がいるからこそ頑張れるもの。 しかし、そのファンが自分の彼女であった場合、少し話は違…続きを読む

マザーグースの歌とサンドイッチを組み合わせたその発想に驚かされました。 『六ペンスの唄』と言えばマザーグースの中でも もっとも不思議かつ幻想的な歌詞で有名な童謡です。意味を探れば探…続きを読む

たかがアニメオタクと侮るなかれ！ 己が愛する作品の解析に全てをかけ、その世界観をファンと共有する者。それが真のアニメオタクなのですから。 そのこだわりは半端なく、聖地巡礼の為に始発…続きを読む

いや、持ってないのは知っていました。 非常に有名な場面ですからね。しかし、まさかこんな理由だったとは！ 感動で腹筋が痙攣し、熱い涙が筆者の目元を濡らしています。 誰もが知る名台詞…続きを読む

　何が凄いって作者さまの料理に関する知識が作品内でも遺憾なく発揮されている所です。食材は火の通し方次第で触感も味もまったく違ってくるもの。その点をきちんと把握した上で「無理難題やト…続きを読む

オンラインの合コン、オンラインのデート、その実態とはいかなるものか？ 令和の時代に相応しい最新の恋愛テクノロジー小説です。 現実で直に会うのとは違ってパソコンの画面越しなら色々と誤…続きを読む

ファンタジーだからこそ描ける世界観。 それがこの作品には確かにあると感じました。 知人の女性が作り出した見た目からして食べ物じゃない ――名前からして聞いたこともない未知の物質エ…続きを読む

話しの構造はSFファンタジー風味の「サウンドオブミュージック」です。 問題を抱えた家庭にスーパー家政婦がやってきて、奮闘に果てに素晴らしく理想的な家族が築かれるという感動のドラマで…続きを読む

お風呂に対象を浸すことで、体の芯まで温かく癒してくれる「炎系回復術師エイダン」の冒険譚、番外編です。 素朴で牧歌的な主人公のキャラクターも微笑ましいし、何より冒険の舞台となるオー…続きを読む

主人公の鮮烈なキャラクターが本当にすごい。 ここに描かれているのは歪み切った狂気そのもので、私ごときでは徹頭徹尾一ミリも共感できなかった。ところが彼女にとってそれは真理そのものであ…続きを読む

非常に珍しい「構造で読ませるホラー」作品です。 導入部はどことなく幼稚な語り手の言動にウンザリさせられるかもしれません。しかし、それこそが作者さまの仕掛けです。話が進むにつれて口調…続きを読む

妖怪の伝承や自然崇拝の神話、そうしたものがいったいどこから生まれいずるのか。創作の本質というべきものをこの物語は教えてくれました。 孤独を愛する世捨て人は、必然的に風景を眺める時…続きを読む

タブレットでアニメを鑑賞しながら「作中の舞台となった場所」を訪れる。しかも、季節や時間までも作中の設定に合わせて。 それがVRA！ 没入感という言葉もありますが、恐らくこれは作者…続きを読む

これまで読んだ全カクヨム作品の中で、最も価値のある文章だと感じました。 何故ならこれは、多くの人がタダ浪費するだけの日々が、本当は人生においてどのような意味を持っているのか……それ…続きを読む

序盤から掴みが素晴らしく、中盤を読み進める頃にはもう「今回の入賞これだな」と確信できる力作でした。 就職や大学進学の為に地元の離島を離れ「本土」へと旅立っていく若者たち。 それを見…続きを読む

これは実に面白い試みです。 ワンワードでこの作品を表現するなら「びっくり箱」でしょうか。 一見すると何でもない、どこにでもありそうな凡庸さを語っておきながらそれは単に上部だけ。羊…続きを読む

やなせたかし先生の名言にこんなものがあります。 正義とは何か？　そう問われたら私は迷わずこう答えるだろう。 お腹を空かせた子にアンパンを配ることです…と。 人は誰しも、何歳にな…続きを読む

介護の現場で責任者を務めながらも家では二児のシングルマザー。 肩書きをうかがっただけで頭が下がるような激務に身を投じる母のお話です。 いくら「母は強し」と言っても人がこなせる仕事に…続きを読む

　本当にカッコいい。生き方は不器用で見た目も今一つなんだけど……家族を想いどこまでも誠と愛を貫くその姿勢は、今の時代だと考えられないほど貴重で美しいものです。 　突然再婚した母。家…続きを読む

　良い作品は読んでいる最中に「これが入賞だな」と判るものです。 　そして、この作品が正しくそれでした。 　シアワセには賞味期限というものがあってどうやっても永遠には続かないもの。…続きを読む

　日常系の作品が何を楽しむものであるか「わかっている」人の作品です。 　時期は大晦日、忙しく働きづめの一年を終えてようやく一息つける至福の時。そんな時にルームメイトが「年越しそば…続きを読む

「緑のたぬき」や「赤いきつね」が発売された当時のライフスタイルを再現させることに成功している。それがこの作品一番の魅力です。 　時は１９８０年。まだコンビニすらろくになく、スーパー…続きを読む

人は誰しも悩みを抱えているもの。 しかし大抵の場合その悩みは心の底へ封印され、一人で抱えながら孤独に生きていく事となります。でも、それじゃあ何も始まらないし、解決はしません。 まず…続きを読む

キノコ・タケノコ論争にも似た「赤いきつねか緑のたぬきか」で二分された世界のおはなしです。ネット上の遊びならばともかく、現実で東西・南北を分けてしまうとそこには戦争の悲劇という奴が生…続きを読む

崩壊目前の世界で生き抜かんとする親子の物語です。 そう、幸福というものはその当時には「あって当たり前」のものであり、本人には判らないものなんですよね。丁寧に描かれる過ぎ去った幸せの…続きを読む

不老不死を得て気ままに暮らす婆様と飼い猫のほのぼの物語です。 なんといっても可愛いのが人語を喋れない猫のブランコがタブレットを使って人間と筆談するところ。ぷにぷにの肉球で一生懸命入…続きを読む

今回集まった作品の中で筆者が最も動物愛を感じた作品。 普段から猫たちと接し観察している方でないと、とてもこうは書けません。 駐車場で群れなす猫たちが、ノンビリまったりと独特な雰囲気…続きを読む

読んでいて心が震えました。 魔法王国の水族館という極めて特殊な環境下で育まれる、クジラと少年の美しき絆の物語。 尋常でない発想のスケールとそれを活かす作者さまの高い筆致技量。私もこ…続きを読む