やなせたかし先生の名言にこんなものがあります。
正義とは何か? そう問われたら私は迷わずこう答えるだろう。
お腹を空かせた子にアンパンを配ることです…と。
人は誰しも、何歳になっても、心の中に子どもの弱さを宿しているものです。
その弱さは社会への不安や恐怖、はたまた己の無力さに気付かされた時に目を覚まし、人目を気にする余裕すら吹き飛ばして立派な大人を泣かせてしまうものです。
そんな時、差し伸べられた手がどれほど温かく、有難いものか。
一方で空腹は心の弱さと通じているもので、お腹が満たされてこそ希望もあふれてくるもの。では人々に希望を与えるものとは? そう、赤いきつねですね。
今は無力な子どもであってもいずれは成長し、次なる正義と社会の担い手となるかもしれません。そういう意味でも「情けは人の為ならず」という格言は正しいのです。
無関心で冷たい現代社会においてたった一つの励ましと力添えがどんなに有難いことか。
時にそれは誰かの人生を決定づけるかもしれないのです。
社会が優しさを見せてくれた時こそ、若人は社会の為に頑張ろうと思えるのです。
優しさの意味について考えさせてくれる名作。
短いながらも細かい心理描写や情景描写が良い味を出しています。
厳しい冬の時代、心温まりたい貴方へおススメです!
この季節、寒さがより自分を追い詰めて来るような、そんな感覚を持つ人は多いのではないかと思います。
思うように上手くいかない、評価がついてこない、乗り越えられていない自分自身に幻滅してしまう…学生時代も社会人になってもそんな日は時折やってきたりもして。
心を疲弊させるのも人ならば、癒すのも人であったりする。
態度だったり言葉だったり物質だったり。人から人に与えられるぬくもり。
それは、お節介だったかもしれない。でもそれを素直に受け取れば心にぽっとあかりが灯る。
主人公が抱えるそれは、心に灯った暖かさの色なのかもしれないと、情景が目の前に流れゆく見事な筆致で、読者の心も温める作品でした。