何が凄いって作者さまの料理に関する知識が作品内でも遺憾なく発揮されている所です。食材は火の通し方次第で触感も味もまったく違ってくるもの。その点をきちんと把握した上で「無理難題やトラブルを料理の腕でもって解決する」というグルメ漫画の王道というべき展開を用いているのだから、これで面白くならないはずがない!
ファンタジーでありながら飛行場のレストランが舞台というチョイスも実にお洒落でセンスにあふれています。リアリティのある異世界は、読者がその光景を容易に想像でき、そこへ行ってみたいと思える素敵な場所のこと。その点でこの作品は花丸合格です。
また食に関するトラブルは、大抵が回りにとっては他愛もなく些細な問題に思えるものです。大袈裟ともいえるお客様のリアクションを笑い飛ばしたりせず、それをくみ取って真摯な対応ができること。それこそが一流の接客と言えるでしょう。
王国のお客様が最初に訪れる空港なのだから、精いっぱいのおもてなしをしたい。そんな優しさと思いやりが作中の随所に気配りとなって表現されていました。
料理が好き、もしくは泣ける家族ドラマが大好きという方におススメです。
今回の企画に集まった作品中、最も料理に対して真摯に取り組んでおり、不純物の混入を一切許さなかったこの作品こそが入賞でしょう。