企画入賞レビュー「まさに幸せしみる」


 良い作品は読んでいる最中に「これが入賞だな」と判るものです。
 そして、この作品が正しくそれでした。
 シアワセには賞味期限というものがあってどうやっても永遠には続かないもの。そして幸福な人生を過ごしてい・る家族はきちんとそれを把握しているものなのです。だから……彼らはほんの一瞬であろうと「共に過ごせる時間」を無駄にはしません。それがたとえカップ麺を作る僅かな時間であろうとも。
 たった五分の間に描かれる家族の温かい団欒風景。これこそ日本から失われつつある原風景と言えるでしょう。願わくばこの文化が失われることなく受け継がれて欲しいものです。

 さらに言えば、舞台を冬の雪国に設定したところもまた素晴らしい。
 常夏の南国ではこの独特な温かさは表現しきれないのではないかと思います。
 そうそう、北国って屋外は寒くとも暖房設備がしっかりしているので屋内は暖かいんですよね。寒暖差のギャップがあって、なおのこと熱々の食べ物が美味しく感じられるのです。それも皆で食べればなおのこと。
 日本人なら誰もが共感できる心と胃袋が温まる名作。
 文句なしの入賞です!