彼方なるハッピーエンド

「見える」人である「ぼく」の自室に現れたのは、不慮の事故で亡くなった若い女性の幽霊。心の残りはないのだが、成仏できない彼女の話を聞いてみると、「ぼく」と意外な繋がりが判明する。
人生の「終わり」から始まる、ハートフルな現代ファンタジー。二人の会話にくすりとしてしまい、深刻な状況もユーモアに包んで読ませてくれます。
人は何をもって、「幸福」とか「満足」とかを決めるのでしょうか。やり残したことよりも、誰かと一緒に笑い合える未来を選ぶというのも、一つのハッピーエンドなのかもしれません。

幽霊と出会った主人公。
見える人だったのです。
なぜ出会うことになったのか。
幽霊に出会いたかったわけではありません。
迷い込んだマンションでところてん式にツルンと来てしまった感じ。

幽霊さんに成仏してもらおうと、
小説デビューしたり、海に行ったり、祭りに行ったりと、
大変な思いをして5年、長いな。
成仏はあきらめてよいのでは、
という感想。

恋愛作品は告白したら終わりなのだろうか？
恋人同士の甘い関係は結婚したら終わりなのだろうか？
ある意味ではそうだ。実際、多くの作品がそのような結末を迎えている。

けれど実際の人生はそうじゃない。
むしろ、そこからが長い道の始まりであり、旅の過程なのだ。

でも、それらを後で振り返った時、一番楽しかったのはどこだと聞かれたら…それはきっとドラマティックの先にある過程なのだろう。
平凡でも幸せであれ。

そんな「当たり前」のありがたさを教えてくれる作品。
素朴なものをしみじみと噛みしめたい貴方へ、おススメです。