企画入賞レビュー「時代と共に変わるもの」

「緑のたぬき」や「赤いきつね」が発売された当時のライフスタイルを再現させることに成功している。それがこの作品一番の魅力です。
 時は1980年。まだコンビニすらろくになく、スーパーは正月三が日は閉まってしまい、年末に食べ物を買い逃すとそれっきりで何も手に入らず迂闊な家庭が食糧危機に陥るという……今では信じがたい話ですが確かにそんな頃があったそうなのです。
 その時代、大晦日のテレビで見るのは紅白歌合戦の一択。笑ってはいけない? まだやっていません。平成から令和の時代を経て日本人の生活習慣も大分変わってきました。コンビニが日本中に建ち、スーパーやレストランは二日から営業しているのが当たり前。なるほど確かに……便利にはなりました。しかし、従業員からすれば年末年始も休めず働きづめということ。もしかすると、便利と豊かさとは違うのではないだろうか? 正月は家族や親せきとコタツを囲み、楽しく過ごすのが幸福の在り方なのではないだろうか?
 そんなことを感じさせてくれる力作です。

 時代は流れ2021年、今年の大晦日には「笑ってはいけない」が放送されないそうです。紅白の顔触れも気が付けばまったく知らない人たちばかり。時代は確かに移り変わっているのです。これから訪れる未来が見せかけの便利さだけでなく、心の豊かさを伴うものであって欲しい。これを読んで私は切にそう思うのです。
 生まれる以前の時代であろうと、レトロと文化の移り変わりを疑似体験できます。
 懐かしい方も、知らない方も是非一読を!