わたしは赤いきつねがきらいだ

作者 北溜

79

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★★★ Excellent!!!

 本当にカッコいい。生き方は不器用で見た目も今一つなんだけど……家族を想いどこまでも誠と愛を貫くその姿勢は、今の時代だと考えられないほど貴重で美しいものです。
 突然再婚した母。家にやってきた新しいお父さん。母の不在時に二人っきりとなる娘と父。
 つい先日まで赤の他人だったのだから当然仲良くやれるはずもなく。
 どんなに努力しても、不器用でイケてなければ受け入れてもらえない。それが現実です。

 でも、このお父さんはそこで諦めなかった。
 不貞腐れなかった。なぜなら自分はお父さんであり、相手は家族なのだから。

 娘の拒絶すらも受け入れ、それが我が家なのだと語れる強さ。
 どんなに嫌われても好かれる努力を止めない揺るがぬ信念。
 これぞまさにお父さんの理想というべき姿と言えるでしょう!

 本当の愛というものは痛みを伴うもので、綺麗ごとだけで全てが片付くわけではありません。良い所も悪い所も全てを受け入れて、時に喧嘩したり反発したり、そうやって思い出というのは築かれていくものですよね。
 この作品の凄い所は「好き」ではなく「嫌い」で愛を語っている所です。
 人間関係の酸いも甘いも嚙み分けていないとなかなかこうは出来ません。
 これぞ人情物の妙技。
 本当の愛とは何か? 家族の絆とは何か?
 知りたい方は是非!

★★★ Excellent!!!

心を鍛えるには一人ではできない。必ず誰かが向き合っていないと、強く優しい心のあり様は形成されないものだと思う。そして、向き合う相手が変わった時、当事者同士の第一印象がその後の人生を大きく変えていくこととなる。

作中の主人公は、何事も新しいものを素直に受け入れることに抵抗を抱いてしまう微妙なお年頃。ましてや、その変化が想像を超えたものであったら尚更のこと。とことん突っぱねることのできない立場なのがポイントで、この変化をどう受け入れて自分の人生の糧とするかがカギとなっている。一歩間違えれば、積み上げてきたものが一気に崩れかねない状況と環境の中、主人公とその家族は奇妙なルーティンで崩れそうな部分を少しずつ整えていった。そこに登場したアイテムが「赤いきつね」である。

赤いきつねが嫌いだと言い張る主人公。
その理由は「哀」や「愛」を越えた「慈愛」にある。是非とも、しっかりと出汁の効いた「滋味」を堪能していただきたい☆

★★★ Excellent!!!

私って本当にバカだと思うときが、よくある。
それは大事な書類を家に忘れたとき。
それは休日を一日寝て過ごしたとき。
それは昔日の稚拙さを回想したとき。

後悔は無限だけど時間は有限。
繰り返し思い出す失敗も、いつか終わるときがくる。
それは私であっても、他の誰かであっても。

私って本当にバカだと思うときが、よくある。
それは生きてるってことに他ならない。

★★★ Excellent!!!

小説というものはエッセイや、ルポタージュとは違います。あくまで、それは作者の創作物であり、フィクションの域を出ません。
しかし、その空想に心が動かされる瞬間があります。
それは、物語上にいるはずのキャラクターが人間になる瞬間です。
その感情こそが物語を動かして、読者の心を揺り動かす時ではないでしょうか。
誰かを想い、想われ、秘めた感情が静かな文体とともに語られていきます。
短編ですのでネタバレは伏せて、キャッチコピーの状態のまま読みすすめて下さい。
筆力、構成ともに高く、最後のタイトル回収含めて心に何かを残すはずです。