キャラクターというものはやはり作品の魅力に直結している。そう判らせてくれる良作でした。恋人に裏切られた過去を持ち、そのせいですっかり女性不審になってしまった主人公。これだけ書くと有り触れた設定に思えるかもしれませんが、この主人公はイジケすぎず、暗すぎず、憎まれ口こそ叩くものの、そこにさえユーモアが感じられて親しみが持てる存在に仕上がっていました。
親しみが持てる性格ということは、それだけ読者も共感を抱きやすいということ。わかる判ると肩を叩いてやりたくなるような親しみ易さは、なかなか狙って作れるものではありません。
それに対するは、一見クール系美人なのに興信所を使って主人公の勤め先を調べ上げるヤベェ女。これでは更に女性不審をこじらせそうにも思えますが、話してみると知的にこちらをやりこめてくる「リケジョ」
ミステリアスな女性は魅力的だとは言いますが、こちらはそれだけに留まらず行動の一つ一つから情熱をにじませている所も長所だと感じました。
そんな二人の行く末、気にならないわけがない!
エントロピーの法則を交えて語られる理系の恋愛。されど恋というもの、人の心というものは理詰めだけで語られるものではありません。古傷を乗り越えて、最後に人を動かすのはやはり理屈を超えた魂の熱量なのです。
親しみの持てる二人だからこそ、力を貸してくれる人がいるのも納得の展開。
なるほど、恋愛に苦しむ人は数多くいれど、そこから新しい幸せに踏み出せる人は性格からして違うものだと感じました。
コミカルで気軽に読める大人の恋愛小説、そういったものが好きな方は是非!