村乃枯草

評者はとある著名精神科医のTwitterで読みました。俳句を題材とした漫画に次の台詞が出てくるとのこと。「俳句を詠んでいれば、世の中が狂っていても生きていけます」。その台詞を著名精…続きを読む

これは一体何が起きたのでしょう。 物語の語り部にも何が起きたのか判りません。しかし語りに耳を傾けるにつけ、判らぬと判り、きっと判ってはならぬと判るのです。 これが夢であればいい…続きを読む

本作品群は詩としては朴訥です。しかし若い時分の戸惑いと真摯に向き合っています。 高く固い壁にぶつかり、真綿で首を絞められ窒息し、それでも先に進もうとします。きっと嘘偽りではないで…続きを読む

本作は、日本の昔話の二次創作を集める自主企画イベントへの応募作として記されました。しかし作者は博識な人。まず昔話の選択が並みではありません。どんな昔話を選んだのかは読後にネットで検…続きを読む

朝が訪れたとき、それは現実にあったことなのか、朧気に思えてくることでしょう。 夢だった。それですむかもしれません。 でも他方にとってはこの上なく生々しくて。 これは大人のため…続きを読む

本作は二人の登場人物のどちらを中心に見るのかで印象が変わりますが、ここでは男子の方を中心に述べさせていただきます。 少年は何かを思いました。それがなんなのか、彼にはまだ分かってい…続きを読む

この小説の主人公である四人の少女は、若くしてこの世を去り、作中で言う「裏世界」、俗に言えば死後の世界に来ました。その死後の世界は、生前に聞き及んでいたいかなる宗教の教えとも違ってい…続きを読む

作者自身が紹介文で同様のことを書いているので、ネタバレの範疇ではないでしょう。 題名にある片恋少女は踏み出します。恋は秘めていては不完全燃焼。行動に移すことが大切です。さて結末は…続きを読む

決意、と書くと単純ですが、心の内には重いものがあります。 作中にて描写されてますが、スノーボードハーフパイプは競技そのものが狂気の沙汰。やろうと思った人間の気が知れません。 そ…続きを読む

大変に失礼なレビューを書かせていただきます。 本作は大変に毒を含んでいます。扱いを間違えると当たるかもしれません。 それは本作の主題が毒であるからです。毒と呼ばれるものは身体に…続きを読む

評者も既に四十代半ばを過ぎていますが、大学のSF研のOB会で創設メンバである長老が言いました。「若いヤツに言うんだ。俺らの二十一世紀は良かったぞ、と」 いや、まだ夢見ていただけの…続きを読む

本作の構成は、良いのか悪いのか。 事前知識なしで第一話を読んだとき、正直に言って、これから何が起きるのか分からないところがあります。やめようかな……と思わなくもありません。 し…続きを読む

冒頭から語られるのは一つの国に伝わる伝承。 それは、重厚で、屋上屋を架していて、何故にこれほど複雑になったのか理解に苦しむ側面があります。 しかし作中の人間たちは、その伝承の中…続きを読む

本作の楽しみは俺TUEEEを存分に活かした爽快感(ビシッ!!)。 伝説の男がやりたい放題。モンスター狩りも、ガールズハンティングも。 社会的な正しさって、美味しいんですか？　そ…続きを読む

本作はかなり特殊な構成をしています。理由を考えたとき『第1回「G’sこえけん」音声化短編コンテスト 』に参加していることが目に留まりました。 なるほど。この設定と構成だと声優の演…続きを読む

あえて言います。この小説の魅力は、女の子。 物語の進行と共に、新たな女の子が登場します。彼女らは、いずれも個性豊かで、魅力的。目移りしそうな状況で、どの子を選んでも構わない。そん…続きを読む

本作の存在意義は、題名通り、ファーストコンタクトではなくセカンドコンタクトを舞台に据えたことです。皆様が感じるように、これは珍しいです。 既にファーストコンタクトを終えているので…続きを読む

企画「5分で読書」に応募された本作はミステリー仕立て。 前提である、5分で読める短さに収めた上で、きちんと謎の提示と解決を見せます。そして読後感は爽快。 気楽に読んで、失敗なく…続きを読む

本作を読み始めた人は、最初に、今まで見たことがない風景描写に揺さぶられるでしょう。 本来の意味が薄れた「ファンタジー」や、気楽にいける「異世界」ではなく、一面の、砂、砂、砂…… …続きを読む

これは、「邂逅」という言葉はなんだか気恥ずかしい、「すれ違い」の物語。 たまたま見かけただけ。でも忘れられない。末永く一緒にいる訳ではない。でも繋がりが切れるのでもない。 すれ…続きを読む

世間では、猫は可愛いけれども気ままで、働き手としては例えば犬に劣るとか言われたりして。 でも本作の猫ちゃんは健気です。きちんと働きます。 可愛くて殊勝な猫ちゃん。あなたもきっと…続きを読む

評者は、この評が時機を逸したことをお詫び申し上げます。本作は2022年4月9日の更新をもって一旦店じまいとなり、店じまいの後で評を書いたからです。 寒くなると恋しくなる料理は人そ…続きを読む

本作はヒロイン・ヒーロー（女性が先でなければなりません）が活躍する物語です。 概要には「獣鬼兵」の文字もありますが、それが何かは本編をご覧願います。主人公は美少女から美女に代わる…続きを読む

本作は、異世界転移物語とも言えますが、転移する向きが現在の流行とは逆で、異世界から現世に勇者がやって参ります。 転移した勇者には見慣れないものばかりですし、何より迎え入れた男性は…続きを読む

題名は「ドライフラワー」。しかし題名からは全く想像できない描写で始まります。 果たしてその結末は…… とても締まりがいい話です。きちんと締める小説にとって書きすぎず短く収めるこ…続きを読む

鏡を二枚向かい合わせにすると同じものが無数に映る。皆が子どもの頃に驚嘆を持ってみた現象です。 この短編小説は、あわせ鏡を設定に用い、あわせ鏡が持つ構造をまさに「写し取った」脚本を…続きを読む

本作は一行詩、つまり本当に一行で作品として完結している詩が三十編並びます。 いずれも私達が日頃使う言葉とは違い、屈折していて、言葉同士が繋がっているとしたら間に何が置かれているの…続きを読む

本作は短編ながら特異な構成をしています。最後まで読み終えたとき、誰が主役なのかという観点で振り返ると、定石を外した構成をしていることにお気づきになると思います。 しかしながら主題…続きを読む

本作の主人公、ツバサは自分に誓いを立てます。その内容は作者によるキャッチコピーをご覧願います。その願いは叶わないかに思えますが…… 幼い頃だって、大人たちの様子はきちんと見えてい…続きを読む

よく、全てをさらけ出して、と言われますが、そんなこと言われてもねえ。 人間なんて、若いうちは特に経験不足ですし、才能をもらえる人は一握りですし、努力だって続きませんし、大したもの…続きを読む

本作を読み終えたとき、複雑な気持ちになります。 本作の題名は「私はドラゴンになりたい」。一人の女性が夢を見ていることを示して本作は始まります。そして、結末は……。 夢が見ること…続きを読む

小説は、現実から隔たった設定を持っているからといって、主題が、情感が、現実と隔たっているとは限りません。 本作は、紹介文からして突飛で、読み進めるとさらに現実離れしていきます。 …続きを読む

本作は「万人向け」とタグを打たれていますが、序盤が重いです。何なのかは触れませんが、重いです。それは心してください。 それでも、その重さを乗り越えて、物語は淡々と進みます。しかし…続きを読む

「隣の席の魔法少女。」という物騒なタイトルを掲げる本作。出だしはどこにでもある学校の日常ですが、途中からの展開は……。 作中の設定に触れると全てネタバレになるので何も言えません。…続きを読む

お笑いやギャグはくだらない。そう思われがちです。ですが、真正面から言えないことを、直接の批判をかわすマントを身につけたお笑いが言ってのけることもあります。かつて王様が身近に道化を置…続きを読む

評者は2022年1月30日現在46歳のおじさんです。 おじさん世代には、現実世界を風刺、しかも強烈な皮肉をあからさまにする小説も特別扱いされず書店の棚に並んでいた記憶があります。…続きを読む

切れのいい文章。真摯な情感。テンポの良いエピソードの連なり。 ピースが鮮やかにはまっていく快感。 評者は、この作品の評には「完成度」という言葉を使いたいです。無駄がない小説です…続きを読む

本作は次のように説明されます。「きっと、彼が死んだ理由はボクだけしか知らない。」 つまり主人公は真相を知る唯一の人間であることが明かされた状態で物語が幕を開けます。 説明通り、…続きを読む

本作は日本語版と銘打たれています。原語が何であるのかは、明かされていません。 最後まで読み終えたとき、実態を理解するには、視点をずらす、あるいは回す必要があります。 出来るでし…続きを読む

本来なら、私は本作を評する資格がありません。読み終えたとき、幻術につままれたようで、何が真実だったのか分からなくなりました。 しかし、他の評者が語るところと合わせれば、真実が分か…続きを読む

本作の冒頭は主人公の現況を説明します。語り口が三人称でよかったです。一人称で語られたら、どれほど陰惨になったことか。 主人公の現況は、言わば、生ける屍。 そんな主人公が、生き返…続きを読む

本作を読んだ人の多くは、筆者は社会と折り合いがついていない、と受け止めるでしょう。 評者は、筆者は社会と折り合いをつけている、と考えています。 本作の特異性を評者なりに説明する…続きを読む

小説という表現形式は、孤独な魂の行く末を数多く描いてきました。ハッピーエンドもバッドエンドも、現実には見られない結末までを数多く描いてきました。 本作は、その歴史に連なる一作です…続きを読む

本作はハーフエッセイとあります。「ラブコメのような、エッセイのような。そんな作品です」とも述べています。 物語は、悲惨な出来事によりどこかが壊れた主人公の視点で進みます。どこか現…続きを読む

本作においては『あやかし』が魑魅魍魎の『怪』ではなく人間の『綾貸師(あやかし)』。そこに何故『綾』『貸』の字を当てるのか。 本編を読めば、特殊設定がキャラの心中を的確に表現してい…続きを読む

本作の、作者によるキャッチコピーは「死神は優しいのです」。 短い本作は、始終、読者は裏切られるのではないかという緊張感をはらんだまま進みます。そして終幕に既存の概念を裏切ります。…続きを読む

本作は自己愛性パーソナリティ障害を患った筆者が人生を振り返るエッセイです。 これは希有です。なぜか。 自己愛性パーソナリティ障害の病理、ナルシシズムに侵された人間が、真っ先に失…続きを読む

読者は、結末まで読み、題名を読み返したとき、ああっ、と心中で声を漏らすでしょう。それについては、評者はこれ以上語りません。 この短編小説の主眼は、結末に至る過程にあります。一つ一…続きを読む

生涯に偉大な仕事を成し遂げた人も、最期を看取る人に恵まれるとは限りません。史実においては、たとえば、物理学の相対性理論を提唱したアルバート・アインシュタインは、晩年はアメリカに移住…続きを読む

初恋。皆様は、それにどういう印象を、そして想い出を抱くでしょうか。 甘酸っぱい。けれども、初恋は叶わない、とか、いろいろ言われます。 本作は、初恋を、奇をてらうでもなく、願望充…続きを読む