智は以て非を飾るに足る。大人になってそれなりに智を身につけても、非を飾るのではなく治すことは難しい。幼いころと大差のない誤魔化しや意地の張り合いは、大人の皆様ならば容易に想起できることでしょう。けれどその火花と軋みは、空中に消えるのではなく、弱い者へと降りかかる。それが本当に幼い子へと降りかかれば、立派な大人のやる事と、受け入れて甘んじるほかになく。地べたに落ちた柿の実に憤懣をぶつける姿は、この悲劇の哀しい縮図にも思えます。
本作は短編ながら特異な構成をしています。最後まで読み終えたとき、誰が主役なのかという観点で振り返ると、定石を外した構成をしていることにお気づきになると思います。しかしながら主題は奇をてらうことなく極めて真摯。読み終えたとき、主役をそっと見守りたくなることでしょう。定石を外すも破綻させず、王道の主題をまとめ上げた一編です。