概要
その写真とまったく同じ絵葉書が、なぜかお土産屋さんで売っていた。
衝動買いして買った絵葉書を、いろんな人に向けて書いてみた。
差出人はわたし、受取人は……。
『今、悲しんでいる人』
『今、怒っている人』
『今、逃げようとしている人』
『今、ため息が止まらない人』
たくさんの人に向けて書いた葉書。でも、それらすべては宛先がないようなもの。しかしどういうわけか、自分宛てにその葉書への返事が来る。どうして——?
【この作品が作られた経緯】
私は以前、Tシャツ作りに没頭していたときがあります。(今もまだやってますが)
しかしながら私は絵を描くのが超下手くそなので、トレースばかりをしておりました。ある日私は、友人である森嶋あまみ
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!中世の街並みに思いを馳せ、心温まる言の葉をコーヒーとともに味わって
タイトルにある「ブルージュ」とは、「北のヴェネツィア」や「水の都」などの異名を持つベルギーの古都だ。中世の面影を今もなお残すブルージュのとある土産屋で、「わたし」が絵葉書を大人買いするところからストーリーが展開される。
『Moi』——自身で書いた絵葉書が、巡り巡って思わぬところで……。
パソコンが普及した昨今だからこそ、手書きで心のこもった、そして、その人自身の言葉で綴られた手紙に対し、人は無意識に温かみを感じるのかもしれない。
たとえその字が拙くとも、そこに紡がれた言葉が短いものであっても……。
作中に紡がれる言葉のひとつひとつが、心地良く感じられる。
ブルージュの風景に思いを馳せ、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ただただ、白く、静寂に。
まるで短編のアニメ映画を観ているような気持ちでした。
と書くと、詩一さんは怒りますか? 怒らないですよね? ○○分後になんとかポイントがくるので……と、いつもみたいに蘊蓄を紹介してくれますよね?
ぼくは小説を読んでいて、たまに「アニメ映画みたいな作品」に出会うことがあります。アニメかアニメじゃないか、その違いはなんやねん? というところですが、ぼくはここに明確な応えを準備しています。それは、音、です。
本作は二つのパートから成り立っています。一つは前半のベルギー編。そしてもう一つは後半の日本編です。いずれのパートも、とにかく静かなのです。音がないのです。音がないくせに「アニメ映画」ってやん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!こんな素敵な話になると誰が想像しただろう
きっかけは詩一さんの「イラストにできるような写真はありませんか?」の一言でした。
その後の展開は皆さんもご存知の通りなのですが、絵葉書の住所に心が躍ってしまったのは言うまでもなく。
たったの一言で想像力が膨らんでいく経験は、この時久しぶりに感じたものでした。
そして今見てもやっぱりこのユニークさが詩一さんなのだと思うのです。
私は「書こうよ」と提案しただけ、それをこれだけの作品に仕上げたのはやはり彼の成せる技です。
主人公は心を抉られるような辛い出来事を経験しながら、それでも日常を生きていかなくてはならず、自分で納得のできる心の落とし所を求めていたのではないかと思うのです。
その答…続きを読む - ★★★ Excellent!!!助けてくれるのではない。背中を押してくれるのだ
主人公の女性が旅行先で感じた何かが、未来の本人に重なる。
今の積み重ねは未来じゃないという彼女。
でも、時々、過去からの贈り物を見つけて慈しんでも良いんじゃないだろうか。
骨董品屋という場所の景色には、いろんな人のそんな想いが詰まっている気がします。
上のひとこと紹介は最近読んだEdyさんの小説に出てくる一節を模したものです(Edyさんレビューから飛んできたので敬意を込めて)。
結局、自分を助けてくれる言葉って自分で自分にかけてやるしかないのかもしれないなぁと改めて考えさせられる。
その一方、背中を押してくれる人ってのは少しずつ身の回りにいて、親かもしれないし子かもしれないし、SNSで…続きを読む