夕暮れ時の揺れるバスの車内。
主人公の「あたし」の隣で、高校に入って三度目の失恋を嘆く想い人。
他愛のない女子高生の会話の裏で、主人公はひっそりと彼女の膝に自分の膝を触れ合わせながら、底知れぬほど深く重い愛情を抱いています。
いつか彼女が報われない恋にボロボロに傷つき、最後に自分のところへ「堕ちてきて」くれる日を静かに待ち望む、息が詰まるほどの偏愛を描いたショートストーリーです。
日常の何気ないワンシーンを切り取りながら、内に秘められた「狂気スレスレの純愛」を鮮やかに描き出す圧倒的な筆力に魅了されます!
昨夜泣きはらしてムダ毛の処理を忘れた彼女の肌の「ちくりとした感触」や、窓に透ける青白い横顔を「額縁に閉じ込めたい」と願う独白など、五感に訴えかけるような美しくも危うい情景描写が秀逸です。
表向きは良き友人を演じつつ、泥濘のような愛を静かに煮詰めていく主人公の姿に、背筋がゾクゾクすると同時にたまらなく惹き込まれます。
濃密で仄暗い感情の渦に呑み込まれたい、極上の百合・心理描写を求める方に激推ししたい掌編です。