瑠璃色たまごはキミのために笑む

本作は二人の登場人物のどちらを中心に見るのかで印象が変わりますが、ここでは男子の方を中心に述べさせていただきます。

少年は何かを思いました。それがなんなのか、彼にはまだ分かっていません。「青春」の青さすらまだ色づいていない想い。結末で彼は自分の想いを知るのです。

少年期の戸惑いをつかみ取った小説です。

よく出会うあの人がいつも口元を覆うあのマスク。
あの下にはどんな表情を浮かべているのだろうか？
昨今はついつい気になってしまう方も多いはず。
ましてや、頑なにマスクを外したがらないとなると、特に。

この作品はそんな気持ちをぎゅっと煮詰めている。
あの人の素顔が気になる少年の、好奇心と純朴さを描き。
それに応えるあの人はマスク姿で妖しく目を細めて、謎を明かさない。

一見すると、どこかほのぼのとしたやり取りをする幼い二人。
だが、その心は確かに揺れ動いていて。
エレベータの音の中に秘められた彼らの情動をぜひ感じ取って下さい。

小学生と年上のお姉さんの話ですが、ネタバレを避けて言うのであれば....意外すぎる結末に余韻が追いつけていない。そして心温まる話。そんな作品です。