看取る人が居るということ

生涯に偉大な仕事を成し遂げた人も、最期を看取る人に恵まれるとは限りません。史実においては、たとえば、物理学の相対性理論を提唱したアルバート・アインシュタインは、晩年はアメリカに移住していたにも関わらず末期の一言を郷里のドイツ語でつぶやいたために、周囲にドイツ語を聞き取れる人間がおらず最後の言葉が永遠に失われました。世の中に取り返しのつかないことはあります。

本作においては、戦場看護師が、かつて英雄と呼ばれた男性の末期を世話することになります。

英雄と呼ばれても、おとぎ話のようにはいきません。

それでも、その英雄の末期には看取る人が居ました。いろいろあった男性の人生において、そこだけは、小さな幸せとして残ったのではないか。読んだ私はそう思い噛み締める次第です。

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