クラスメイトの九堂くんの自殺。教室の視線は「ボク」に向かいます。黙祷を促す担任の態度も、どこか引っ掛かるものが。この学級が抱える闇とは。そして、九堂くんの死の真相とは。自殺という二文字で片付けることができない、彼の生きていた時間。痛々しくも目を背けてはいけない現実を、鮮明に描ききっています。何度も読み直したい、読み直さずにはいられない物語をどうぞ。
本作は次のように説明されます。「きっと、彼が死んだ理由はボクだけしか知らない。」つまり主人公は真相を知る唯一の人間であることが明かされた状態で物語が幕を開けます。説明通り、物語は真相を知ることの意味をめぐって展開します。結末は、一つの明確な形を取っているように評者は受け取りました。曖昧ではない確固たるものを残しています。
応援コメントに書いちゃったけど、こっちのほうが良いと思うので、あちらを削除して改めてこっちに。村上春樹のノルウェイの森に、井戸の話があって、そこに落ちないように登場人物たちは生きている。自分がいつか自殺してしまうだろうということを感じながらも、それに抗い、井戸に落ちないように生きている。この小説の自殺した彼にも似たような雰囲気を感じた。自分はいつか死んでしまうだろうという予感を感じ、それをいじめという手段で抗いつづけ、井戸に落ちないようにしている(そして最終的に落ちてしまう)いじめのリアリティもすごいあったし、面白い作品だった。
自殺したクラスメイト。動機は虐められていたからではない。寧ろ虐めていた。主人公はそのクラスメイトから虐めを受けていた。なぜ虐められている主人公ではなく、虐めているクラスメイトが自殺したのか。遺書はない。だからわからない。理由を知るのはただ一人、主人公のみ。謎を解くためには、主人公が受けて来た虐めを追体験する必要がある。この謎を解明するか。見て見ぬふりをするか。それはお任せします。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(136文字)
暑い夏の陽射しのなか、土を掘り返しながら思い出すあの日々の裏側に隠れたほんとうの想い。ぐらっと揺れて、掘り返す土の匂いにむせ返りそうになる瞬間を感じて欲しいです。
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