現実と虚構の混ざり合うところ

本作はハーフエッセイとあります。「ラブコメのような、エッセイのような。そんな作品です」とも述べています。

物語は、悲惨な出来事によりどこかが壊れた主人公の視点で進みます。どこか現実から隔たっているのだけれど、起きている現実は現在進行形で悲惨で、悲惨であるが故に遠くから見ているつもりでなければさらに深く壊れそうなほどに。

その構図は、本作を読む読者にも当てはまります。これは事実なのか、創作なのか。物語として美しくまとまった展開の、実のところはどれほどすさんでいたのか。想像すると深みに嵌まります。

軽々しく、理解した、と言うことはできません。小説の読者の立場を踏み越えようとすると引き返せなくなります。それは本作における主人公の恋人のように。

評者は、そう考えたとき、メビウスの輪として全てつながったように思えました。

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