本作は、読み始めると極めて面白いのでページを進める手が止まりませんが、読み始める前に深呼吸することをお勧めします。極めて複雑な構造をしているため、全貌を理解するのに熟考を要しますから。
怪異と怪談、かと思えば金融商品知識と都心に広がる夜の街の華やかさ。血縁があれば師弟関係もあり。この一作に投入された設定を「効率的」に使えば、何本の小説を書けるのか……
ホラーも、コメディも、両方あり。本作のジャンルは何か。それに悩むのが嬉しい希有な小説です。
そうして語られる物語は、幾本もの因果の糸が、離れることなく別の場所で関係を持ち、一体を保っています。
しかし「絡み」(しがらみ)と「結び」は違います。結んであれば保ちたいですが、絡んでいれば将来には解きたいものです。
さて本作で、因果の糸の繋がりは、どちらでしょう?
「絡み」か「結び」か。その差違が本作にて一貫して語られます。
結果としてどちらに倒れたのかは、ここでは語りません。
しかし幸いなのは、主人公が「結び」を目指したこと。達成するために破天荒な行動を続けて周囲を牽引します。そんな主人公が出張っていることで読者は心強く物語を読み進められます。
いやあ、稀なものを見られます。真に「奇談」です。
筋金入りのタフなビジネスマンが怪異の土地へ挑むという一風変わったホラー小説。
軽妙な語り調子は、どこか詩的であり好き嫌いはあるかもしれませんが、実にこの物語の雰囲気にはまっています。
粗野で冷徹に見える主人公も、それだけではない。意外な人情の篤さを見せながら、これまた魅力的な仲間たちと事件に挑む様は、まさにハードボイルド。
先日、大円団を迎えた物語ですが、主人公の活躍は終わりません。
北海道の地を舞台にした次作も始まっています。
ホラー、ビジネス、ハードボイルド。
贅沢盛りでありながら流れるように読めるこの物語を、是非お楽しみください。
素晴らしい業績をあげているのに、異動先は『忌み地』。
それでも口座の鬼『スーパースター』セールスマンは、いつものオーラを放ちながら、ノリノリでやってきました。
世にも奇怪な土地で、不気味な噂や、起こる恐ろしい怪奇現象。
びびる同僚たち。
それでも『スーパースター』は、まず業績を上げる事を考えます。
たとえ相手が幽霊であっても、です。ひぇぇぇ。
どこであろうが、ずかずか踏み込んでいく『スーパースター』は呪われるのか、それとも逆に、幽霊のほうが『スーパースター』の金づるになるのか。
ドキドキしながら読んでくださいねっ。