人の哀れさを笑いに包んで

日本の話芸「落語」は、昔から、現実より離れた物語を面白く語ってきた実績を持ちます。

時には恐ろしい話もあります。しかし噺家が人づてに聞いた話を語る、それもお笑いに包むという構造を設けることで、聴者は直接的な打撃を避けつつ情景の本質を咀嚼できます。

本作はホラーです。軽妙な語りに耳を傾けるうちに、恐ろしい結末に導かれていたことに気づきます。その時には引き返せません。お後がよろしいようで。

でも、どこか憎めないのは、噺家が自虐している、つまり語り手が、自分は人様をとやかく言えるほど偉くないと理解しているからです。断罪しません。まぁ、そんな話もあるでしょうな、痛いところをつつきやしませんと、分別をわきまえて語るからです。

人は、強欲で、そのくせ弱虫で、どうしようもありません。しかし語り手も人の子です。

人のありのままを受け入れる、落語の美点を味わえる一作です。

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