ポリーナ・パーシモン 30 フレイジオの迎え

 ポリーナが魔法治療士として第三無料診療所で修行をしていると、ある日の仕事が終わった後で、突然見た事がない、ある眼鏡をかけた黒髪の少年に話しかけられた。


「やあ、久しぶり!ポリーナ!」


最初、その黒髪の少年を見たポリーナは驚いたが、その聞き覚えのある声に反応した。


「え?ひょっとしてシャルルさんですか?」

「ああ、でもこの姿でいる時はフレイジオで通す事にしたんだ。

ポリーナもそうしてよ」

「はい、わかりました」


シャルルは追っ手から正体を隠すために、フレイジオと名前を変えて普段はフードを被って姿を隠していたが、どうやら髪の色を変えて眼鏡をかける事でその代わりにしたようだ。


「実は今度ボクとシノブたちがマジェストンの魔法学校へ行く事になってね。

それでポリーナも一緒に行かないかと思って誘いに来たんだよ」

「え?そうなのですか?」

「うん、この姿も制服を着るのに顔は隠せないから工夫したのさ。

で、どうだい?一緒に来ないか?

ミルキィも君と同じ中等学校なので、一緒に行きたがっているよ」

「え?そうなのですか?

はい、私もアルマン大御爺様に必ず魔道士になるようにと言われています。

それにミルキィさんが一緒に学校へ行くなら心強いです!

是非一緒に行かせてください!」

「良かった、じゃあ一緒に行こう」


こうしてポリーナもシャルルたちと一緒にマジェストンの魔法学校へと行く事となった。

メディシナー侯爵家ではポリーナのために壮行会が開かれた。


「頑張ってね?ポリーナさん?」

「おう!シノブたちにもよろしくな!」

「はい、今までありがとうございました。皆さん」

「ははっ、なぁに世話になったのはこっちさ」


オーベルの言葉にクレイグもうなずく。


「そうですね?彼女一人でゴブリンアールとマルコキアスを倒したのですから」


それを聞いたフレイジオが驚く。


「えっ?そんな事が?」

「そうさ、フレイジオ君、彼女は本当に凄いよ」


そう言ってオーベルがポリーナのゴブリンアール退治とマルコキアス退治を説明する。

それを聞いたフレイジオは素直に感心する。


「確かにそれは凄いですね」

「ああ、彼女は自分では話さないだろうから、君からグリーンリーフ先生やシノブ君たちに伝えてやってくれ」

「ええ、わかりましたオーベルさん」


そして無事に壮行会も終わり、ポリーナはロナバールへ向かう事となった。


「では行ってきます!」

「ああ、頑張れよ!」

「しっかりね?ポリーナさん!」

「はい、皆さん、本当にお世話になりました」


ポリーナはフレイジオと共に航空魔法でロナバールへと向かった。

その途中でパーシモン村へと寄る事にした。


「フレイジオさん、村の人たちに学校へ行く事を伝えておきたいので、私の村へ寄らせてください」

「ああ、もちろん構わないよ」


ポリーナがパーシモン村へ帰ってジャベックたちに自分の留守中の事を指示すると、村人たちに報告をする。


「そんな訳で皆さん、私は3年ほどマジェストンへ行って参ります。

何か緊急の用事があればマギーラか、ラッシュに言ってください。

マジェストンの私の所に知らせるように言ってありますから」

「ああ、わかったよ。でも、ポリーナ?」

「はい、何でしょう?」

「そっちの若い兄さんは誰なんだい?」

「ああ、メディシナーで、もう婿さんを捕まえてきたのかい?」


その村人たちの言葉に慌ててポリーナが説明をする。


「ちちち、違います!

この人はシャ・・・いえ、フレイジオさんと言って・・・その・・・たまたま知り合った人です!」


シャルルの素性を言う訳にはいかないので、ポリーナがしどろもどろに説明をする。

それを村人たちは逆に怪しく感じた様子だ。


「たまたまねぇ・・・?」

「たまたまでわざわざこんな田舎の村まで付き合うかねぇ?」

「怪しいねぇ?」

「まあ、いいさね」


ニヤニヤとする村の女連中にポリーナが慌てて説明をする。


「と、とにかく、私はマジェストンへ行って参ります!」

「ああ、元気でな!」

「立派な魔道士になって帰って来るんだぞ!」

「何だったらその兄さんと一緒にな!」

「だから違いますってば!」


こうして村人たちに誤解を受けながらもポリーナはフレイジオ、ヴェルダたちと一緒にロナバールヘと向かった。

もっともこの誤解は数年後には誤解ではなくなり、村人たちは自分たちの推理力を自慢する事になるのだった。



 ロナバールでシノブたちと合流したポリーナはそのままマジェストンへと行く事となった。

行く途中の大型魔法飛行船リンドバーグの中で、ミルキィやアンジュと寝る前の一時に女子バナに花が咲いた。


「それにしても相変わらずシノブさんは凄いですね?

こんな魔法飛行艇を作ってしまうなんて・・」

「ええ、住み心地も良いし、下手な宿に泊まるよりもよほど快適ですよ」

「そうですね」

「それにしてもポリーナさんは凄いですね?

あのマルコキアスを単独で倒すとは・・・」

「ええ、御主人様でさえ、シルビアさんとミルキィさんと一緒に倒したというのに一人で倒すとは凄いです!」

「ええ、でも全然実感はないんです。

ミルキィさんこそ凄いですよ」

「そんな事はありません、私なんて一時的にとはいえ、マルコキアスに操られてしまって恥ずかしい位です・・・」


恥じ入るミルキィをポリーナは慰める。


「それは仕方がないですよ。

私なんて怖くてマルコキアスの勢力範囲内になんて全然入らなかったんですから」

「私も決してマルコキアスには操られない覚悟で接近したのですが、実際には・・・」


うなだれるミルキィにアンジュが少々興奮して興味深げに尋ねる。


「でもその時にシルビアさんと御主人様の奪い合いをしたんでしょ?」

「そうなのですが・・・」

「え?そうなのですか?」


驚くポリーナにアンジュがニヤニヤと嬉しそうに説明をする。


「ええ、それは熾烈な御主人様の奪い合いになったそうですよ」


そのアンジュの言葉にミルキィが慌てふためいて話をそらす。


「そそそ、そんな・・・!ポリーナさんこそどうなんです?」

「え?私ですか?

もちろんシノブさんにはエレノア先生同様に感謝していますが・・・」

「違いますよ!フレイジオさんの方ですよ!」


そのアンジュの言葉にポリーナは激しく動揺する。


「フフフフレイジオさんですか?

そ、その、とても素敵なお友達ですががが・・・」


その反応を見て、アンジュがうなずいて話す。


「ああ、これはもう決定ですね?」

「そうですね」


そう言ってミルキィもうなずく。


「え?な?何が決定なのですか?」

「まあ、私としてはこれ以上ライバルが増えないので助かりますが・・・

それにフレイジオさんも素敵な人ですからね」

「そうですね。私もそう思います」

「な、何の事ですか?」


必至になってとぼけようとするポリーナをニヤニヤと笑いながらアンジュが話す。


「まあまあ、ポリーナさんも素直になって・・・」

「そうですよ」

「ミルキィさんっ!アンジュさんっ!」


こうして女子の部屋の夜は更けていくのであった・・・

そして翌日にはマジェストンへ到着し、ポリーナはシノブたちと共にエレノアの屋敷で学生生活を送る事になった。

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