ギルバートと仲間たち 13 ウォルターの双子の妹たち
数日後、二人を迎えにいったウォルターたちは無事に戻って来た。
久しぶりに再会した6人が喜び合う。
「やあ、アンナにハンナ!久しぶりだな!」
「ギルバート!久しぶり~」
「ヨハンも!」
「道中はどうだった!」
「楽しかったよ~」
「うん、兄さんとデボラが色々と話してくれて面白かった!」
「ところで早速だが、二人には重要な事を確認してほしいんだ」
「うん、兄さんから聞いているよ」
「私たちの魔法の才能の事でしょ?」
「ああ、その通りだ」
まずは大銀貨一枚を払って、二人を十級として組合に仮登録をする。
仮登録と言えど、組合員となれば様々な特典が利用可能だ。
そのうちの一つが組合魔法訓練所のお試し魔法教育だ。
まだ魔法を知らない組合員で魔法の素養がある者ならば、何でも一つ初級魔法を銀貨三枚と言う格安で教えてくれる。
二人を連れて魔法訓練所へ行くと、全員が喜んだ事に二人には魔法の素養があった。
ウォルターほどではないが、魔法士程度にはなれると保証されたのだ。
ウォルターが喜んで二人に尋ねる。
「やった!では何を覚える?」
「う~ん・・・正直、私だってわからないよ」
「私も!兄さんたちが決めてよいよ」
そう言われてウォルターが考え込む。
「そうだな・・・では回復系がもう一人位は欲しいな?」
「そうだな」
ギルバートがそれに賛成する。
するとアンナが手を挙げて答える。
「は~い!それじゃそれは私が覚えるよ!」
「もう一人は電撃が欲しいかな?」
「そうだな?」
今度はハンナがやる気になる。
「はいはーい!じゃあそれは私が覚えるよ!」
「ああ、頼む」
魔法訓練所へ行くと、たまたま二人の講師もボロネッソだった。
「あら?二人はウォルターさんの妹さんなの?」
「「そうで~す!」」
「ならお兄さんたちに負けないようにしっかりと覚えていってね?」
「「は~い!」」
四人の時と違い、生活はギルバートたちが支える事が出来たので、二人は魔法の修行に専念できた。
こうして二人はそれぞれ1週間ほどで
そこで四人は初めて二人を迷宮へ連れて行ってみた。
「うう~迷宮か~魔物がたくさん出るかと思うと怖いよ~」
「大丈夫かな~」
「安心しろ!俺たちがついているからな!」
「そうそう、なんたって俺たちは全員レベル40を超えているんだからな!」
そして迷宮へ入って何匹かの魔物たちと遭遇すると、次第に双子も戦いに慣れてきた。
ハンナが決意したようにみんなに話す。
「次に魔物が出てきたら、私、
「私も剣で戦う!」
アンナもそう話す。
「ああ、ではやってみろ」
「うん」
「わかった」
そうしてしばらく歩くと大サソリが2匹出てきた。
すかさずハンナが叫ぶ。
「
その魔法で一匹の大サソリは息絶える。
「たあ~っ!」
アンナも果敢に大サソリに襲い掛かるが、まだレベルが13ほどのアンナでは固い大サソリを一撃では倒せない。
「うん、さすがにまだ二人に剣で大サソリの相手は難しいかな?」
そう言って兄のウォルターが軽く一撃を振うと、大サソリは四散する。
それを見たアンナが称賛する。
「うわあ~!兄さん凄い!」
「ま、一応レベル43だからな。
お前たちだって真面目に訓練を1ヶ月もすれば、これ位にはなるさ」
「そうなんだ?」
「ああ、そうだな」
度胸をつけるためにも、二人を試しに迷宮へ連れて行って経験をさせた所で、いよいよ二人を訓練所へ入所させる事となった。
「さて、それではいよいよ二人には初等訓練所へ行ってもらうとするか?」
「そうだな、そうすれば1ヶ月後には二人も七級だ」
その兄たちの話を聞いて、二人も少々不安になる。
「でも・・本当にいいの?私たちだけそんな贅沢をさせてもらって?」
「そうだよ!兄さんたちは一番下の十級から始めて、半年以上も頑張っていたんでしょ?
それが私たち二人は初等訓練所に入れてもらって、しかもその間の生活の面倒も見てもらうなんて・・・」
その二人をギルバートが力づける。
「大丈夫さ!
それにここで凄い人に初心者には親切にしろと教わったからな!」
「うん、それはここに来る途中で兄さんから聞いた」
「レベル200を超える凄い人なんでしょ?」
「そうさ、俺たちだってその人がいなけりゃ、まだこんなレベルにはなってないし、お前たちを迎えに行くのだってもっと遅くなっていた」
デボラとヨハンも一緒にうなずいて話す。
「そうそう、だから気にしなくともいいんだよ」
「ああ、一ヶ月経ったら俺たちと一緒にビシバシ迷宮へ行って稼いでもらうからな!」
「うん、わかった!」
「私たちも頑張るよ!」
「ああ、ただ初等訓練所では色々な勧誘も多いらしいから気をつけろよ?」
「勧誘?」
「ああ、何しろこれから魔物狩人や迷宮探索者として働くつもりの連中がわんさといる訳だからな?
卒業した時に一緒に仲間になる奴をお互いに探しあうらしい。
そういう連中が目ぼしい生徒を勧誘するのさ」
「そうなんだ?」
「ああ、二人は女だし魔法も使えるから、必ずあちこちから勧誘されるだろうが、ちゃんと断れよ?」
「何て断ればいいんだろう?」
「どう断ればいいか、私達にはよくわからないよ」
「そうだな?卒業したら兄弟たちと一緒に働くと決まっていると言えば大抵の奴はあきらめるだろう」
「そっか!」
「確かにそれがいいね!」
「ああ、逆にもしそれでもしつこく言い寄ってくる奴がいたらそいつは要注意だ。
お前たちを仲間にする以外の目的の可能性もある」
「え?仲間にする以外の目的って?」
「最悪なのは仲間にしてからどこかに奴隷として売り飛ばすってやつだな」
「えっ!そんな事があるの?」
「ああ、噂によると、特に女の生徒がそういうのに引っかかるらしい」
「こっわ!注意しようね!ハンナ!」
「そうだね?」
「あまりしつこい奴らがいたら俺たちに言え。
そいつに問いただしてやる」
「ああ、それがいい」
「はは・・・頼りにしているよ、兄さん」
「うんうん」
こうして一ヶ月の間、二人は初等訓練所へ通い、ギルバートたちは迷宮で稼ぎ続けた。
すでにレベル40を超えたギルバートたち4人にとっては、ミノタウロスやかつてあれほど手こずったキラードールさえも敵ではなかった。
1ヶ月が経ち、初等訓練所を卒業した二人はレベル30となり、いきなり七級組合員となった。
「凄いな?本当に一ヶ月でレベル30になって、七級の組合員か!」
「しかも最初から二人とも魔戦士だぜ!」
「ああ、俺たちが九級や十級でヒーハー言っていたのがバカみたいだな!」
「全くこいつはすげーや!」
双子の二人も嬉しそうに話す。
「これもみんなのおかげだよ!」
「そうそう!感謝、感謝!」
「この1ヶ月訓練所の方はどうだった?」
「そうだね?楽しかったけど、やっぱり最初に言われた通り、勧誘が凄かったよ!」
「そうそう!やっぱり女の子は珍しくて、ちやほやされてね?」
「うん、女子は全部で5人いたけど、魔法が使えるのは私達二人だけだったからね。
勧誘が凄かったよ!」
「そうか?」
「アンナは
「ああ、回復魔法系の魔法使いは少ないし、女だとなおさらだろうな」
「うん、でも卒業したら兄さんと一緒に働くし、兄さんはレベル40を超えていて、どんな魔物でもタロスをたくさん呼び出して、ボッコボコにするんだって説明したら、みんな諦めたよ!」
「ははは、なるほどな!」
さすがに兄がタロス魔法使いの妹に手を出そうとする者はいなかったようだ。
「まあ、まずはこの六人で迷宮へ行ってみるか!」
六人態勢となったギルバートたちは稼ぎが良かった。
元々兄弟や幼なじみでお互いの感覚がわかっている上に、双子は初等訓練所で魔物に対する攻撃や連携の仕方などもしっかりと学んでいたので、魔物退治も楽だった。
そして六人の組み合わせも全員がそこそこの剣士の上に、
一週間ほど訓練した結果、六人の連携は想像以上に良くなった。
しかしそんな時、ギルバートたちはついに初めて盗賊たちに遭ってしまった!
迷宮へ行く途中の森の中で隠れていた盗賊たちに囲まれてしまったのだ!
「へっへっへ!よう!兄ちゃんたち!
ちょいと金を置いて行ってもらおうか!」
「貴様ら!盗賊か!」
「へっ!わかっているじゃねえか?」
「オラ!10対6だ!
おめえらに勝ち目はないぜ!
大人しく降参しな!」
「ああ、大人しくしてりゃ痛い目にはあわさないぜ?」
「特に女にはな?」
「ひっひっひ・・・むしろ気持ちいい思いをさせてやるぜ?」
「おい!男ども!なんならその女二人をおいてけば、お前たちは見逃してやってもいいぞ?」
その言葉にデボラが反応する。
「女二人だと?」
「ああ、その双子を置いてけば、お前たちは見逃してやるって言ってるんだよ!
兄ちゃん!」
その一言でデボラが切れる。
「俺は女だぁ~っ!
その一言で戦いが始まる。
ギルバートが叫ぶ。
「行くぞ!みんな!」
「ああ、わかっている!」
「
「
盗賊は10人いたが、魔法を使えるギルバートたちは圧倒的に優勢だった。
「つ、強い!こいつら強いですぜ!御頭!」
「ヒヨッコどもの強さじゃねぇ!」
「頭!こいつら!魔法まで使いやがりますぜ!」
「しかも
「くっ!こいつら全員ガキだし、森まで
さらにここでウォルターが戦闘タロスを出す。
レベル28の打撃タロスだ!
「げぇっ!あいつはゴーレムまで出しやがった!」
「ちきしょう!ここまで来て引きさがれるか!
こうなったら・・・!」
そう言うと盗賊の頭は突進し、唯一攻撃魔法を使っていない女のアンナを捕まえる!
「きゃあ!」
アンナを捕まえた盗賊頭が刃物をチラつかせてギルバート達に叫ぶ。
「オラァ!こいつの命が惜しければ全員武器を捨てな!」
「くうっ」
「卑怯な!」
「何とでも言え!」
「やったぜ!頭!」
「これで俺たちの勝ちだ!」
その時だった!
森の中で、どこからか声が響いた。
「この卑怯者どもめ!恥を知れ!」
その声とともに、影のような物が一行を横切り、気づいた時には盗賊の手からアンナは助けられていた。
そしてどこからか、スーツ姿の貴族然とした長身の男、夜会ドレスを着ているような派手な女性が現れた!
二人とも顔には派手な金色の仮面をつけていた。
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