ギルバートと仲間たち 06 「青き薔薇」の事を聞く

 ギルバートたちは自慢げに話している男に近づくと、その男を見た。

赤銅色の赤い宝石が嵌った登録証に黄色の線、四級の魔戦士だ!

自分たちよりも四階級も上の組合員なので、ギルバートは恐る恐る話しかけてみた。

 

「あのう?あなたは今、「青き薔薇ブルア・ローゾ」の事をお話しているようですが・・?」

「ええ、そうっすよ」

「私達も一緒に聞きたいのですが、よろしいですか?」

「まあ、それは構わないっすけどねぇ・・・」


その物欲しげな男の態度に、ギルバートが即座に反応する。


「あ、少ないですが、これを酒の肴代に」


そう言ってギルバートが銀貨を1枚差し出す。

するとその男はそれをササッ!と懐にしまって、上機嫌で答える。


「おお!悪いっすねえ、さあどうぞ、何でも聞いてください!」

「ありがとうございます。

あなたは「青き薔薇ブルア・ローゾ」の人たちとお知り合いなのですか?」

「もちろんっすよ!

なんたって「青き薔薇ブルア・ローゾ」は結成前から知ってるっすからね!」

「え?結成前から?」


青き薔薇ブルア・ローゾ」を結成前から知ってる人とは中々貴重な人に出会ったようだとギルバートは思った。


「ええ、そうっすよ。

結成前にホウジョウの兄貴に子分にしてくれって言ったんですけど断られましてねぇ」


その言葉を聞いて、そばにいた一人の男がまぜっかえす。


「おいおい、断られたんじゃなくて、相手にされなかったんだろ?」

「うるさいな」

「え?どういう事です?」


ギルバートの質問に、そばにいた一人の男が笑いながら説明をする。


「こいつ「青き薔薇ブルア・ローゾ」のケット・シーはおろか、団長の飼っていたネズミにすら負けたのさ」


その話にギルバートは驚いた。


「え?ネズミに負けた?」


その言葉に慌てて話していた男が説明をする。


「違うって!ハムハムはネズミじゃなくて、高性能ジャベックっすよ!」

「ジャベック?」


またもや不思議そうに尋ねるギルバートにその男は少々恥ずかしそうに答える。


「いやあ、ホウジョウの兄貴の持っているジャベックに勝てたら仲間にしてやるって言われたんですけどね?

負けちゃったんですよ」

「ネズミ型のジャベックにな」

「うるさいな!ネズミ、ネズミって言うな!

あのジャベックには俺だけじゃなくて、あのブローネ党のガストンだって負けているんだ!

お前たちだって絶対に勝てないぞ!」

「ははっ!俺たちはそんな無謀な事は考えないさ!」

「そうそう!あんないきなり白銀シルバーになる連中の仲間になろうだなんて、そんな無茶な事をしようとするバカはお前さんだけだよ!」


その会話にギルバートも驚いて尋ねる。


「え?ブローネ党って、確かこの町の顔役の?」

「そうです、ブローネ党一の巨漢のガストンすら負けているんです!

それでもそのハムハムは「青き薔薇ブルア・ローゾ」で一番弱いらしいっすけどね!」

「それは凄い!しかし本当にあなたはずいぶんと詳しそうですね?」


そのウォルターの質問に相手は胸をそらして答える。


「もちろんっすよ!

これでも俺は四級組合員の「早耳のロメロ」っすよ!

青き薔薇ブルア・ローゾ」の事なら何でも聞いてくれっす!」

「ええ、確かによく噂は聞くのですが、実際にはどういう人たちなのですか?

団長は13歳の少年だとか聞いたのですが・・・」


そのギルバートの質問にロメロとやらは得意げに話し始める。


「よくぞ聞いてくれましたってんだ!

まずは団長のシノブ・ホウジョウ!

確かに見た目は12・3歳の少年どころか、美少女にしか見えない人です!

ところがどっこい!実際の年齢は15歳だ!

そして若干15歳にも関わらず、すでにレベルは200を超えて魔法学士級の魔法も使える凄い人っすよ!」


その説明ですでにギルバートたちは驚く。


「えっ?15歳でレベル200?」

「そりゃ凄い!俺より二歳も年下じゃないか!」

「少年なのに見た目が美少女?

そりゃうちのデボラと逆だな!」

「うっさいな!締められたいのか?ヨハン!」


驚くギルバートたちを無視して、ロメロの話は続く。


「まだまだ!

副団長のエルフのエレノアさんに至っては、そのシノブ団長の師匠で、正確なレベルは知らないっすけど、500を超えてるらしいっすよ!

この人が「青き薔薇ブルア・ローゾ」最強の人っす!

しかも見た目もあり得ないほどの美女!

その美貌から様々な男たちからも言い寄られているみたいですが、どんな甘言を用いられてもホウジョウ団長のみに仕える信義の人でもあるっす!

青き薔薇ブルア・ローゾ」はこの人が仕切っていると言っても良い位の人っす!」


その説明にギルバートたちはまたもや驚く。


「レベル500だって?

 噂ではレベル300以上の人がいるとは聞いていたが・・・」

「信じられないな!」

「そんなレベルの人がいるのか!」

「ひょえ~」


4人の驚きを尻目にロメロの説明は続く。


「そして白狼族で目にも留まらない動きをする獣人で団長補佐のミルキィさんも、そりゃ強い!」

「へえ?エルフの他に獣人もいるんだ?」

「そして最近「青き薔薇ブルア・ローゾ」の仲間になった、ミルキィさんと同じく団長補佐のシルビアさんも凄いっすよ!

黒く長い髪をたなびかせて戦う眼鏡の美女!

ついこの間まで魔法協会のロナバール本部で受付嬢として働いていた正規の魔道士ですが、この人もロナバールのごろつきどもに悪魔と恐れられているほど強いっす!」

「そんな人まで?」


ロメロの説明にギルバートたちは驚きの連続だ!


「ええ、それにジャベックのガルドとラピーダもそりゃ強い!

二人ともレベル300で、組合の三重水晶階位トリプルクリスタルランクの登録証を持っているのもこの二人だけっす!」

「レベル300?そんなジャベックがいるんですか?」

三重水晶階位トリプルクリスタルランク?話には聞いた事があるが、本当にいるんですね?」

「ええ!そりゃもう、二人ともそれこそドラゴンか本物の悪魔のように強いっすよ!

何でも今の時点ならエレノアさん以外の他の団員たちでは誰も勝てないそうです。

しかも二人ともジャベックなのに、どう見ても人間にしか見えないっす!

団長のシノブさんもそれは頼りにしているっす」

「凄いですね?」


ロメロは調子に乗って話し続ける。


「さらにケット・シーのペロンだ!

組合員にはなってないし、本人は戦闘など大した事は出来ないと言っているが、この四級組合員のロメロさんを倒したんだ!

もちろん只者じゃあない!

しかも剣豪ケット・シーと言われているバロンの薫陶を受けていて、その辺の盗賊なんぞイチコロっすよ!」

「へえ?ケット・シーなのにそんなに剣が使えるんだ?」

「俺なんか、ケット・シーなんて、その辺の猫の大きい奴って感覚しかなかったよ」

「おっと!忘れちゃいけないのがハムハムとムサビーだ!

この連中は団長のシノブ兄貴が作った小型動物ジャベックだが、見た目は小さくて愛嬌があるのに、どっこいこいつらも普通じゃない!

この二匹も身のなりは小さいが強いっすよ~。

何たってペロン同様、この四級組合員のロメロさんを負かせた位ですからね~」

「へえ?」

「確かに誰も彼も強そうですね?」

「まあ、そうっすね。

そして組合に溜まっていたいくつもの案件をほんの数日で全て終わらせてしまったり、戦団ブリガード結成の翌日に上位悪魔のマルコキアスを討伐してしまったりと、話のネタはいくらでもあるっすよ。

もっともその辺の話は実際に「青き薔薇ブルア・ローゾ」の仲間になった事がある人にでも聞いてみるんですね?

正式な団員ではなくても、組合員や魔道士で一緒に仕事をした人は何人かいるっすから」

「え?実際に仲間になった事がある人?

一体それは誰ですか?」

「そうですね・・・何人かいますが、一番詳しくて聞きやすいのはアレクシアさん辺りじゃないですかね?」


青き薔薇ブルア・ローゾの仲間になった人と聞いて、自分たちも知っている意外な人物の名前が出てきて、ギルバートたちはまたもや驚いた。


「アレクシアさん?組合の受付長のアレクシアさんですか?」

「ええ、あの人は昇降機設置の時に仲間になって一緒に働いてましたからね。

それに組合の溜まっている仕事をホウジョウの兄貴に頼んだのも、あの人だと聞いていますからね」

「わかりました、ありがとうございます」


数日後、ギルバートたちは組合に行って「青き薔薇ブルア・ローゾ」の事をアレクシアに聞いてみた。


「アレクシアさん、「青き薔薇ブルア・ローゾ」の事を聞きたいのですが?」

「ああ、「青き薔薇ブルア・ローゾ」ですか?

あの人たちは凄い人ですよ」

「何でもアレクシアさんは一緒に仲間になって働いた事があるとか?」

「ええ、あの頃はまだ「青き薔薇ブルア・ローゾ」を結成する前で、私も昇降機設置のお手伝いをさせていただいたのですが・・・」


そう言ってアレクシアは「青き薔薇ブルア・ローゾ」の事を詳しく話してくれた。

ロメロやアレクシアの話を聞いたギルバートたちは驚いていた。


「まったく「青き薔薇ブルア・ローゾ」っていう戦団ブリガードは凄いな?」

「ああ、聞けば聞くほど凄い人たちだ!」

「5日で組合に溜まっていた案件を全て終わらせてしまったのは凄いな?」

「ゴブリン退治や魔物の巣の撤去を、みんな2時間かそこらで終わってしまうとはな!」

「しかもそれは全部肩慣らしみたいな物だったと聞くしな」

「それに2週間かそこらで昇降機を作ったんだからな!」

「それって今俺たちが使っている、あの迷宮の昇降機だよな?」

「ああ、そうだ。本当に話を聞けば聞くほど凄い人たちのようだ」

「一回本物を見てみたいもんだな?」

「全くだ!一目見てあやかりたいもんだ!」

「全員が紺と金色の制服を着ているし、団長は若い美少女のような少年、副団長が絶世の美女の金髪エルフらしいから、見れば一目でわかるしな」

「そうだな」


いつしかギルバートたちは「青き薔薇ブルア・ローゾ」に憧れて実際に会ってみたいと思うようになっていた。


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