ギルバートと仲間たち 11 謎の少年の行方

 ギルバートたちは無事に七級に昇級し、ミッションをこなしながらもあの少年を探したが、中々あの二人は見つからなかった。


「おかしいなぁ・・・

あれだけ金持ち風な目立つ服を着ているんだから、これだけ探せば見つかりそうな物なのになあ?」

「まあ、同じあの服ではないにしても、二人とも随分と金持ちそうな雰囲気だったからな?

身なりの良い服を着ているのは間違いないだろうしな」

「ああ、組合員ではなかったから魔法協会に出入りしているかもな?」

「そうだな、あれだけ高位の魔法を使えるんだ。

魔法協会にも行っている可能性は高いな」


しかしそれでもあの二人は見つからなかった。

ある時、四人は迷宮のカベーロスの店で買い物をしていたが、ふとギルバートが店主のカベーロスに質問をしてみた。


「そういえばカベーロスさんは情報も売っているんですよね?」

「おお、そうだぜ。情報ってのも重要な商品だからな!」

「では人探しのような事もしていただけるので?」

「人探し?」

「ええ、実は我々は御世話になった人を探しているのですが、その人がどういう人だかわからないのです。

それでその人を探していただけたらと・・・」

「そういう事か?

まあ少々畑違いだが、もちろん、そういう事も引き受けるぜ?

とりあえず、請負料は銀貨3枚だ。

それで話を聞いて、探す場合は別途料金をもらうが、その時点で俺が知っている奴なら、そのまま教えてやるぜ!」

「では、まずは銀貨を3枚」


そう言ってギルバートが銀貨を3枚渡す。


「ほい、確かに受け取ったぜ!

で?探すのはどんな人なんだい?」


カベーロスの質問にギルバートが説明を始める。


「はい、物持ちの良い平人の少年のような冒険者で、組合員ではないようなのですが、レベルはどうやら200を超えているようなのです。

年は見た目が12・3歳で、ちょっと見には少女にも見えます。

そしておそらく17歳程度の狼獣人の美少女を連れていると思います」

「ああん?レベルが200を超えているだぁ?

そんな奴は組合員にも数えるほどしかいねぇし、そんな奴だったら俺も知っているはずだがな・・・

ましてや年が12・3歳なんて、そんな奴がいたかな?

もっとも組合員でないなら俺が知らなくても仕方がないか・・・」

「年齢に確信はありません。

見た目がそれ位に見えるというだけで、実際の年齢は違うかも知れません。

しかし我々にレベル100もあるタロスを気前よく、いくつもくれたのです。

そして非常に可愛らしい狼獣人族らしい御嬢さんを一緒に連れていて、その二人は非常に仲が良さそうでした。

おそらくは恋人同士ではないかと思います」

「狼獣人族で17歳くらいで恋人みたいに仲が良い?

そしてそいつの見た目が12・3歳で、少女にも見える・・・

んん?待てよ?

ひょっとしてその狼獣人の少女は毛並みが白に近くなかったか?」

「そうですね?今思い出すと、かなり白かったような気がします」

「ああ、確かにあの少女は白銀のような毛並みだった」

「そういえば、狼獣人って普通は灰色か、茶色の毛だよな?」

「ああ、あの娘は珍しい色だったな」


そのギルバートたちの説明にうなずきながらカベーロスが考えこむ。


「ふむ、それでレベル100のタロスを持っていたと・・・」

「ええ、持っていただけでなく、我々の前でそのタロスを作り出したので、非常に高いレベルなのは間違いありません。

そのタロスも魔法協会で鑑定して確認してもらったので間違いありません。

そのタロスを作った少年がレベル200を超えているのは確実だそうです」


それを聞いたカベーロスはしばらく考え込んでいたが、その後ですまなそうに話し始める。


「なるほどな・・・兄さんたち、すまんがこの依頼の件はなしだ。

悪いが、この銀貨も返すわ・・・」


そう言いながらカベーロスは一旦受け取った銀貨3枚をギルバートに返す。

驚いたギルバートがカベーロスに尋ねる。


「え?どうしてです?」

「我がカベーロス商店は信用で成り立っているんでな。

この問題は少々その信用に関わりそうなんでね。

引き受けるのはやめておくよ」

「ではカベーロスさんはその人を知っているのですね?」

「残念ながらそいつにも答えられないな。

ある程度見当はついているが、正直まだ確信はないしな。

だが、このままじゃ今度はあんたたちの信用を無くす。

一旦請け負っておきながらそれを反故にするんだからな。

だから少しは無料で情報をやるよ。

こいつはサービスだ。

しかしその前に気になる事がいくつかあるんで聞きたい。

俺の予想を確実にするためにもな。

まず、あんた方は、どうしてその人と知り合ったんだい?」

「それは・・・我々が大食堂デパーチャーで食事をしていると、いきなり話しかけてきたんです」

「いきなり?見ず知らずのあんたたちにかい?

それでそんな高レベルのタロスまでくれたってぇのかい?」

「ええ、そうです。

初めて会ったというのに妙に気さくで、友好的でした。

そう、まるで我々を以前から知っているような感じでした」


そのギルバートの説明にウォルターたちもうなずいて答える。


「そういえばそうだな?」

「ああ、そんな雰囲気はあった」

「そうだね?」


その話を聞いてカベーロスは考え込む。


「ふ~む・・・あんた方は、以前にもその人物に会った事があるんじゃないかい?」


そのカベーロスの質問にギルバートが驚いて答える。


「いいえ?まさか!」

「あんな目立つ人物に会っていたら覚えていますよ!

忘れるはずがない!」

「そうですとも!」


しかしカベーロスは考え込みながら、もう一度質問をする。


「う~ん・・・その人は以前も同じ姿をしていたとは限らない。

全然、別の格好をしていたかも知れん・・・

あんたたちが同じ人間だとはわからないほどにな。

そしておそらく、その時は狼獣人の少女はいなかっただろう・・・

他の人間と一緒にいたか・・・場合によっては一人だったかも知れん・・・

だが背格好と声はあまり変わらないはずだ。

そんな人の見覚えはないかい?」

「いえ、そのような人は・・・」


カベーロスの質問にギルバートは思い当たる節はなかったが、ここでウォルターが恐る恐る話す。


「なあ?実は今言われて気付いたんだが、以前に俺の腕を治療してくれた人と、あの人の背格好は似てないか?」


そのウォルターの説明に他の3人は愕然とする!


「あっ!」

「そう言えば・・・」

「言われてみれば声も似ているかも・・・」

「なんだい?その人は?」


カベーロスの質問にウォルターが答える。


「以前、私が迷宮で腕を切り飛ばされた時に偶然森で会って、その腕を治療してくれた人がいたんです。

しかも無料で」

「無料で?腕を切り飛ばされたのを治したって事は再生魔法か接合魔法だろう?

そりゃずいぶんと高度治療魔法だ。

そんなのが使えるなんて、魔法学士級だぞ?

普通だったら魔法治療所でも金貨3枚かそこらは取るはずだ。

そんな高等治療魔法を無料でやったのかい?」

「ええ、ですから我々も驚きました」

「しかもその上、逆に私に栄養をつけてあげなさいと言って、大銀貨まで下さったのですよ」


それを聞いたカベーロスが半ば呆れながら答える。


「何だって?そりゃとんだお人よしだな?

しかし大体見当がついてきたぞ?」

「そうなのですか?」

「ああ、そんな馬鹿みたいなお人好しには心当たりがある。

俺の推測じゃ、その魔法治療士とタロスをくれた人物は、同一人物かも知れないな」

「ええ?」

「そうなんですか?」


驚く4人にカベーロスはうなずいて答える。


「ああ、その可能性は高いな。

おそらく自分が治療したお前さんの事を気になったんで、次に会った時に話しかけてみたんだろうよ」

「・・・そう言えば、あの少年は我々が魔法を使える事を妙に喜んでいたな?」

「ああ、まるで自分の仲間の事のように・・・」

「俺たちがあの人の忠告通り魔法を覚えたからか?」

「そうかもしれない」


四人は自分たちが恩義ある二人の人間が、実は同一人物だったのかも知れない事実を知って驚く!

そしてギルバートとウォルターがカベーロスに頼み込む。


「教えてください!カベーロスさん!

もしその二人が同一人物なら我々は尚更お礼が言いたい!」

「そうです!我々が今こうしていられるのもその人のおかげなんです!」


しかしカベーロスは首を横に振って答える。


「いや、もしそうならしばらくはその人間には会えないな」

「え?どうしてですか?」

「ん~、実は俺が予想した人物なら、その人物はある理由で3年ばかりここにいないんだ」

「え?」

「おっと!少々しゃべりすぎたようだな!

無料サービスはここまでだ!

これ以上話しちまうと、こっちの信用に関わるんでね?」

「はい、これだけ話していただいただけでもありがたいです!」

「だが、もう一つだけ教えておいてやろう。

おそらくその人は3年経てばここへ戻って来るはずだ。

そうすればおそらくお前さんたちとも会う時があるかも知れない。

その時に礼を言ってやんな!

但し、それまでにお前たちも自分を鍛えておきな!

そうすればその人はかなり喜ぶはずだぜ!」

「はい、わかりました」


ギルバートたちはカベーロスの話を聞き、自分たちを鍛えながら3年間待つ事にした。

そしてその頃にはギルバートたちが捜し求めていた相手は、以前よりはるかに大物になっていたのだった。

しかしそんな事も知る由もなく、ギルバートたちは自分たちを鍛え続けていた。


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