ギルバートと仲間たち 15 伯爵仮面との修行

 翌日、魔法協会で待ち合わせると、6人はあの伯爵仮面たちと一緒に迷宮へ行く事になった。

特にギルバートたち4人は昨夜から興奮してあまり眠ってないほどだった。


「しかし俺たちがあの伯爵仮面様と知り合いになれるとはな?」

「ああ、願ってもない幸運だ!」

「確かあの人って本当に伯爵様なんだろ?」

「うん、そう聞いている」


興奮して話す4人に残りの二人も色々と尋ねる。


「へえ?あの人はそんなに凄い人なんだ?」

「確かに格好も凄かったけど・・・」

「うん、まあ組合や魔法協会の有名人は結構派手な格好の人がいるからな」

「それにしても昨日の賞金はどうする?

結局プロフェッショナルで食事をしたって、金貨1枚分も使ってないぞ?」

「まあ、残りも有り難く貰っておこうじゃないか?」

「そうだな?」

「とにかく広場に急ごう!

伯爵仮面様を待たせる訳にはいかないぞ!」

「もちろんだ!」


一行が魔法協会の広場で待っていると、ほどなく伯爵仮面たちがやってくる。


「やあ、諸君、少々待たせてしまったかな?」

「いいえ!そんな事はありません!」

「うむ、ではこれから迷宮へ向かうが、南西の迷宮で良いかな?」

「はい、お任せします!」

「では行くぞ、4号、頼む」

「はっ、お任せください」


ラピーダこと伯爵仮面4号がそう言うと、全員の体がふわりと浮き上がる。


「これは!」

「航空輸送魔法?」

「ああ、4号の航空輸送魔法で迷宮まで向かう。

いつもならば盗賊の警戒なども兼ねて歩いていくのだがな。

今回は君たちを鍛えるのが目的だし、これならばすぐだ」


初めて空を飛んだ一行は驚く。


「ははっ、こりゃすげーや!」


南西の迷宮に着いた伯爵仮面が話し始める。


「ふむ・・・しかし全員で9人か・・・一つのパーティとしては少々人数が多いな?

ここは2つに分けるか?」

「2つに?大丈夫ですか?」

「うむ、君たちも知っての通り、4号はレベル300だからな。

一人でも君たちを守るには十分だ。

君たちの方も二つに分かれてくれ」

「はい、わかりました」


そう言って相談の結果、ギルバートとヨハン、ハンナの組と、ウォルターとデボラ、アンナの組に分かれる事になった。


「では4号がギルバート君たちを、私と2号がウォルター君たちを連れて行く事にしよう」

「何階に行きますか?」

「ま、ここは九階層だろうな」

「え?九階?」

「大丈夫なのですか?」

「ああ、任せてくれ」


九階はグリフォンの巣窟と聞いている。

それは今のギルバートたちでは間違っても勝てない相手だ。

ギルバートたちは1回キャサリンにひどい目に会っているだけに警戒心が大きかった。

ギルバートたちは伯爵仮面を信用しながらも不安な気持ちで九階層へと向かった。


 九階層についたラピーダが12体のタロスを出す。

そのタロスの説明を伯爵仮面がしてくれる。


「このタロスは上級タロスでレベルが200ある。

それを護衛として双方の組に6体出してあるので君たちは安全だ。

安心してくれたまえ」

「レベル200?」

「そんな凄いタロスをこんなにたくさん俺たちの護衛に?」

「ありがとうございます!」


すっかり安心したギルバート達が礼を述べる。

さらに4羽の鷹型タロスを出す。


「こちらの鷹型タロスは攻撃用だ。

これを双方の組に2羽ずつ配置し、飛んでいるグリフォンを地上に落とす。

後は残りのタロスが止めをさすので、君たちは見学しているだけで良い。

それを今後の参考にしたまえ。

 では始めるとするか」

「はい、お願いします」


2組に分かれたギルバートたちはそれぞれラピーダと伯爵仮面につき従い、グリフォンを倒す。

戦闘タロスたちがレベルが150もあるグリフォンを倒すので、一緒にいるギルバートたちは見る見る間にレベルが上がり、たったの1日で全員のレベルが50を超えてしまった。


「ありがとうございます!伯爵仮面様!」

「うむ、では明日も続けよう」

「はい、よろしくお願いします!」


翌日になって同じ事を繰り返したために、ギルバートたち4人はレベル63に、双子はレベル61にまでなった。


「本当にありがとうございました!」

「うむ、では後は君たちで精進したまえ。

2年半もすればシノブたちも帰って来る。

その時に鍛え上げた君たちを彼らに見せてあげたまえ」

「はい!本当にありがとうございました!」


 伯爵仮面たちによって鍛えられたギルバートたちは、今やレベルだけならば、四級を超えて三級に迫る勢いだった。


「凄いな!俺たちは1年も経たないうちにレベル60越えか?」

「こんなレベルになるのなんて何年も先だと思っていたよ!」

「全くだな!」

「私たちなんて半年も経ってないよ!」

「ああ、これも全て「あの人」のおかげだな!」

「うん、「あの人」のおかげで伯爵仮面様にも知り合えた訳だしな」

「伯爵仮面様も噂に違わず、いい人だったな?」

「ああ、全くだ!あの人が昔悪人だったなんて信じられないな?」

「でも伯爵仮面様本人が俺たちに話したし、本当の事なんだろう?

そして青き薔薇ブルア・ローゾの団長と副団長のおかげで改心出来たって」

「しかし本当に「あの人」は青き薔薇ブルア・ローゾの団長なのだろうか?」

「うん、伯爵仮面様の話からすると、少なくともタロスをくれた二人組は団長のホウジョウ様と団長補佐のミルキィ様で間違いはなさそうだな?」

「ああ、ボロネッソ先生やカベーロスさんの反応からしても間違いないだろうな?」

「それでこれからどうする?まずは等級を上げるか?」

「そうだな、試しに一つ位は上げておいてみるか?

レベルだけなら今の俺たちは四級相当だ。

六級程度にはなっても罰は当たるまい」

「そうだな・・・しかしレベルが上がったと言っても、俺たちはおんぶに抱っこで上がっただけで、まだ全然組合員としての経験自体が足りない。

これで等級を上げても果たしてその実力通りかどうか怪しい。

いや、間違いなくその実力はないだろう。

だから六級になったら、まずしばらくの間は様々なミッションをやって組合員としての経験を上げよう!」

「そうだな?何しろ俺たちは組合員になってから迷宮でしか稼いでないからな?」

「単に金欠でそれ以外の仕事を引き受けようがなかっただけだろ!」

「あの青き薔薇ブルア・ローゾですら登録して最初のうちは、他の人たちが嫌がるミッションをやって経験を積んだらしいからな」

「賛成だよ!訓練所の教官も『この訓練所を出ていきなりレベル30になったからと言って決して奢らないように!例えレベルが高くとも良い経験を積まなければただのレベルが高いだけの愚か者になってしまう』って言ってたからね!」

「そうそう!だから色んな経験を積んだ方が良いよ!」

「よし、ではとりあえず自分たちに改めて気合を入れるために六級には昇級してみよう!

それから1ヶ月は様々なミッションをこなして経験を積む事にしよう!

そしてある程度貯金をしたら当初の予定通り、魔法学校に通おう!」

「「「「「 賛成! 」」」」」


 こうしてギルバートたちは六級に昇級したのだった。

それからの一行は様々なミッションに挑戦して経験をしていった。

そしてついに自信がついてきた6人はミノタウロスに挑戦し、全員がミノタウロスを簡単に倒す事が出来るようにさえなったのだった!


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