ポリーナ・パーシモン 06 ゴブリンウイザード討伐
翌日となって、いよいよゴブリンウイザードの討伐をする事となった。
討伐隊の面々はアルマンとポリーナとそのジャベックたち、そしてエルネスト支部長と30人ほどの組合員たちだった。
全員がまずは組合支部前に集合し、お互いに挨拶をする。
「おはようございます、アルマンさん、ポリーナさん」
「うむ、支部長、おはようございます」
「おはようございます」
アルマンが挨拶を返すと、エルネスト支部長が集まった組合員たちに大声で叫ぶ。
「皆の者!この御方こそが、かの高名なゴブリンキラーことアルマン・パーシモンさんと、その玄孫のポリーナ・パーシモンさんだ!
本日のゴブリンウイザード討伐はこのゴブリンキラーさんと一緒だ!
気合を入れてかかれ!」
「「「「おおおお~~~~っ!!!!!」」」」」
支部長の檄に組合員たちも雄たけびを上げて応える。
「では討伐に参りましょうか?」
「うむ、では支部長殿、指揮をお願いいたしますぞ」
そのアルマンの言葉にエルネストが驚いたように叫ぶ。
「何をおっしゃいますか!
私のような若輩者がとんでもない!
今回はもちろんアルマンさんに一切の指揮をお任せいたします。
ここに集まっている者も全員そのつもりです。
今日集まった者たちは、全員このミッションの志願者で、ゴブリンキラーの指揮下に入って戦いたいという者たちだけを集めました」
支部長の言葉に集まっていた組合員たちも一斉にうなずく。
その支部長の言葉にアルマンも驚く。
「何?しかし私は
等級から言っても、支部長と言う地位から言っても、あなたが指揮を執るのが妥当だと思いますが?」
「もちろん普通の時でしたらそうでしょうし、私もそういたします。
しかし今回の相手はゴブリン、それもゴブリンウイザードです。
今回の討伐隊の人員でそれを倒した事があるのはあなただけです。
ましてやゴブリンキラーとまで異名をとるあなたの指揮下に入るのは当然です。
どうか我々を指揮してゴブリンを討伐してください」
そう言ってエルネスト支部長が頭を下げると、他の組合員たちも頭を下げる。
「本当に他の皆さんもそれでよろしいのですかな?」
アルマンが尋ねると一同がうなずいて返事をする。
「もちろんです!あのゴブリンキラーさんと御一緒させていただいて、その指揮下で働くなど光栄の至りです!」
「ええ、私も喜んで指揮下に入らせていただきます」
「私もです!」
他の人間たちも同様にうなずく。
どうやらゴブリンキラーことアルマン・パーシモンの名前は世に轟いているらしく、この場に集まった者たちは目を輝かせて返事をする。
その雰囲気に少々たじろいだアルマンではあったが、気を取り直して集まった者たちに話し始める。
「うむ、まあ・・では私が指揮を執らせていただくという事で出発するか」
「はい、よろしくお願いいたします」
一同は昨日アルマンが言った通りに大量の松明を用意して、攻城用の盾も荷車に積んで出発した。
一行が目的の森に到着すると、エルネストが説明をする。
「この森の奥に古城があって、そこに潜んでいるようです」
「なるほど・・・」
それは典型的なゴブリンの巣窟だった。
ゴブリンは基本的に光りを嫌い、山の洞窟や捨てられた古城などに住み着く。
そこを根拠地にして勢力を伸ばし、周囲の人間の里を襲って拡大していくのだ。
やがて森が切れると草原が広がり、そこには確かに大き目の古城が建っていた。
そこで一同は止まり、アルマンが指示を下す。
「では定石通りに行くとしますかな。
まずはここからもう少し城に寄った場所を今回の討伐隊の本部として、わしかエルネスト支部長が常にそこにいて指揮を執る事にいたします。
この中に魔道士の方は何人いますかな?」
アルマンが聞くと5人ほど手が上がる。
「ではその中に魔法学士以上の方は?」
今度は誰も手を上げない。
どうやら魔法学士はいないようだ。
「ではその5人の方はすぐに飛び立ち、この古城の偵察をして来てくだされ。
そして入口の数と歩哨が何人いるかを確認して来てくだされ」
魔道士たちはうなずくとすぐさま飛び上がり、偵察に出る。
その間に討伐隊を8つの班に分けて、それぞれの小隊長を決めた。
そして城の入口から弓矢や魔法がギリギリ届かない程度の距離まで移動をした。
そこで偵察隊が戻ってくるまでの間、アルマンがゴブリン討伐作戦の説明をする。
偵察隊が戻って来て、出入り口は東西南北に一つずつ、歩哨は全くいないとの報告だった。
そしてその魔道士たちをさらに各班へと振り分けた。
「ではこちら側の入口を正面として、反対側を西口、北側を北口、南側を南口としましょう。
1・2班はこのままの位置に、3・4班は北側に、5・6班は西側、7・8班は南に作戦通りに移動してくだされ」
アルマンとポリーナ、ラッシュ、ロカージョは正面に配置され、ヴェルダは反対側の西門に、マギーラは北門にそれぞれ配置された。
各班には最低でも一人の魔法念話が出来る者が配置され、それぞれの連携を取る。
全員が位置に着くとアルマンが行動を開始する。
「では行きますぞ!」
アルマンの言葉で討伐隊本部にいた者たちが持ってきた松明に一斉に火を着ける。
荒布を巻き、その布に油を通常の松明以上に染み込ませてあるので、普通の松明以上にその松明は燃え盛る。
松明に火をつけると同時に、アルマンとヴェルダが呪文を唱えて戦闘タロスを作り出す。
その数、およそ500体だ。
ヴェルダはレベル170、アルマンもレベルは145なので、二人とも魔力量は15万以上もあり、その気になれば1千体以上のタロスを作れるが、お互いに五百体ほどを出してそれぞれ正面と裏の西門から突入させる。
その戦闘タロスは全てタロス生成魔法限界値のレベル100であり、短剣を数本装備していた。
またそのタロスの両肩には松明を差し込む穴があり、その両肩の穴に用意された激しく燃え盛る松明を差して古城へと突入して行った。
さらにマギーラは北門で同様にタロスを300体ほど発生させて同じく松明を装備させて突入させると、すぐさま航空魔法で南に移動して、そちらでも同様にタロスを生成して突入させた。
マギーラもレベルは130なので、これらの戦闘タロスもレベル90には達している。
これで東西南北のすべての入口から戦闘タロスを突入させた事になる。
しかもその総数は1600体という大部隊となった。
すぐさま古城の中では叫び声が上がり、戦闘状態になった事がわかる。
アルマンたちの作った対ゴブリン用戦闘タロスは防御は全く考えず、両手に持った短剣でゴブリンたちを片端から切り倒して行く。
事前調査で近隣の町や村からは人質が取られていないのは確認済みなので、遠慮なくゴブリンを倒す事に専念できる。
タロスを出し終わったマギーラは上空待機をして、古城の2階や3階から逃げ出そうとする者を片端から魔法で攻撃していた。
時たま戦闘タロスの防衛網を突破して外に出てくるゴブリンたちは外で待ち構えている組合員たちに片端から倒される。
「よっしゃ~!お前ら!一匹も逃すなよ!」
「おお~!」
エルネストの指示に各方面の組合員たちが応える。
「ふむ、相手がソーサラーやドルイド程度ならばこれで終わりなのだがな」
しかしどうやら中に入ったタロスたちは次々にやられているらしい。
どうやら中にはただのゴブリン以外にも色々と潜んでいそうだった。
やがて自分の出したタロスの半数ほどが倒された事を感じたアルマンは、今度は通常の剣と盾を装備した戦闘タロスを100体と、槍を装備したタロスを100体作り出して古城へと突入させる。
反対側の西門ではヴェルダも同じように剣と盾のタロスと槍装備のタロスを突入させる。
これは大型のホブゴブリンやゴブリンチーフ、ゴブリンキャプテンに対応するためだった。
剣を装備したタロスで戦わせ、その背後から槍タロスに連携攻撃をさせる布陣だ。
こうして東西の門から戦闘タロスで圧迫すると、北と南の門から対ゴブリン戦闘タロスを倒しながら出てきた者がいる。
それはゴブリンドルイドとゴブリンソーサラーだった。
北門から出てきたゴブリンドルイドはゴブリン型の戦闘タロスを出し、組合員たちを襲ってくる。
しかし出入り口で事を構えて待っていた組合員たちはここぞとばかりに応戦する。
「来たぞ~!全員、油断するな!」
組合員たちがゴブリンタロスと応戦し、北口担当魔道士も戦闘タロスを出して迎撃をする。
上空監視していたマギーラも飛んできて戦闘タロスを生成し、組合員と共にゴブリンドルイドを迎撃する。
南門から出てきたのはゴブリンソーサラーだった。
ゴブリンソーサラーは城から出てくると、いきなり中位火炎呪文を待機していた組合員たちに撃ってきた。
いくつもの火炎呪文が組合員を襲う。
「退避~!退避~!
盾隊!前へ!」
南門受け持ちの小隊長が命令し、入口に待機していた剣士たちが下がり、持ってきた攻城用の盾を装備した連中が前へ出る。
盾でゴブリンソーサラーの魔法攻撃を防いでいる間に、後方に配置されていた魔道士と魔法士の部隊が攻撃に出る。
魔道士と魔法士に集中魔法攻撃されたゴブリンソーサラーはひとたまりもなく倒された。
こうして各門から出てきた魔法ゴブリンたちは組合員たちに迎撃され倒された。
一通り敵の戦力が削がれた事を確認したアルマンがいよいよ古城に潜入する。
「さて、残りはウイザードとその護衛隊程度でしょう。
そろそろ我らも突入しますかな」
「承知しました」
エルネストがうなずくとアルマンが指示を出す。
「では支部長殿、ここはお願いします。
出てきたゴブリンは一匹残らず掃討してくだされ」
「お任せください」
「よし、ではロカージョよ、先頭に立て!
それからわしが入り、最後はラッシュじゃ」
「大御爺様、私も連れて行ってください!」
「しかしのう・・・」
渋るアルマンにポリーナが頼み込む。
「お願いします!大御爺様の戦い方をお側で見たいのです」
「・・・わかった、ではわしとラッシュの間に入れ。
ラッシュ、ポリーナを頼んだぞ」
「はい、お任せください」
「ではロカージョ、進め」
アルマンの言葉と共に、岩石ジャベックのロカージョが無言で通路を進んでいく。
その後をアルマンとポリーナが歩いていく。
その二人の周辺には護衛に何体かの戦闘タロスを作り、最後にラッシュが周囲を警戒しながら古城の中へと進んで行った。
同じ頃、反対側の入口からもヴェルダが古城の中へと入って行った。
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