ポリーナ・パーシモン 27 料理団選抜

 メディシナーの派遣料理団の募集で集まった魔法士たちは500人以上だった。

中には魔道士や魔法学士までいた。

さすがにメディシナー侯爵家直々の募集と見えて、これを機会にとメディシナーだけでなく、噂を聞いた近隣の町や村からも相当数の魔法使いたちが集まったようだ。

その応募書類の山を見て、レオンハルトたちがうなる。


「いや~こりゃ中々集まったね?」

「ええ、思ったよりも多かったですね」

「この中から人員を絞り込むのは中々大変そうですね」


そう言うのは、すでにこれから選抜される派遣料理団の代表に決まったクレイン・パターソンだ。

彼はドロシーやマーガレットの弟で、高等魔法学校を卒業してからちょうどまだ何もしていなかったので、代表に選ばれたのだった。

彼は姉のマーガレットに似て、料理好きなのも大きな理由だった。

もっとも本人もガレノス三高弟たるエレノア直下の部下になれると聞いて大喜びだった。


「な~に、まずは最初に篩い落としをして100人以下にすりゃいいさ」

「それは良いけど、どうやってそれをやるんだい?レオン」

「任せろ!オーベル!俺には秘策がある!」

「秘策?なんですそれは?」


弟に問いただすレオニーにレオンハルトが得意げに答える。


「名づけて『三高弟エレノア様心服落とし』だ!」

「なんだい?そりゃ?」

「いかにグリーンリーフ先生を尊敬しているかを試す試験さ。

それに受かった物だけが本審査に残る事が出来る!」

「流石ですわ!レオンハルト様!素晴らしい案ですわ!」


レオン恋しのマーガレットは手放しでレオンを褒めちぎる。

しかしそれを聞いたオーベルは少々引き気味に尋ねる。


「・・・で?試験はいいが、どういう方法でやるんだい?」

「まずは全員をうちの庭に集めて俺が出す問題に答えさせて、ある程度人数が絞られるまでそれを繰り返す!」

「その問題の答えをレオンが判断して通過を決めるわけ?」

「いや、審査は俺を除いたグリーンリーフ先生の直弟子たちで判断してもらう」

「え?グリーンリーフ先生の直弟子と言っても、今メディシナーにいるのはレオンを除いたら、私と曾御爺様と・・・」


レオニーがそう言うと、その後をマーガレットが引き継ぐ。


「後はポリーナさんがいますよ?」

「そうね・・・後は・・・」


ここでオーベルがここぞとばかりに名乗りでる。


「はっはっは、もちろんそれはこのボクさ!

何と言ってもこの間はグリーンリーフ先生に1対1で教わってきたんだからね!

もちろんボクも審査に・・・ゴフッ!」


オーベルが最後まで言い終わらないうちにドロシーの渾身の蹴りが腹に入り、その場にオーベルがくの字になって倒れる。

床に転がったオーベルにドロシーが冷たく言い放つ。


「あんたは私やクレインたちと一緒に進行係よっ!」

「ひどいなぁ・・・ドロシーちゃん?

俺だってグリーンリーフ先生の直弟子の一人なんだぜ?」


ぼやきながら立ち上がったオーベルに、再びドロシーの蹴りが容赦なく入る!


「ぐほっ!!」

「ええ、ええ、そうでしょうとも!

弟子でもない私は先生からサイン本すらいただけないんですからねっ!」


それを聞いたレオンが魔法念話でオーベルに話しかける。


《おい、オーベル!お前、まだあの事を恨まれてるぞ?》

《ははっ、どうやらこれはサイン本をもらって来ないと一生言われそうだねぇ》


しかし長年の勘でその二人の魔法念話を察したドロシーがキッ!と問い詰める。


「そこっ!

何を話しているかッ!」

「な、何だよ!ドロシーちゃん」

「俺たちは何も・・・」

「魔法念話で話しても同じですッ!レオンハルト様!」

「うっ・・・」


 こうして派遣料理団選抜は始まった!

メディシナー侯爵家の庭に集った500人以上にも及ぶ参加者たちに、のりの良いレオンハルトが話しかける。


「みんな~ロナバールに行きたいか~!」

「「「「「「 おお~っ! 」」」」」」

「エレノア様は最高か~?」

「「「「「「 おお~っ! 」」」」」」

「よ~し!じゃあ選抜を始めるぞ!」

「「「「「「 おお~っ! 」」」」」」

「第一問!メディシナーでの最高権威はエレノア・グリーンリーフ様である!

○か×か~っ!」


すぐさま参加者たちが走り始める。

ほとんどの者が○に行ったようだが、×へ行った者もちらほらといる。


「答えは○だ~!」


そのレオンハルトの答えに×へ行った参加者たちが騒ぐ。


「ええ~?」

「そうなの?」

「そんな!1番はガレノス様じゃ・・・」


しかし、そんな不正解者にパラケルスが猛り狂う。


「お前たち!こんな簡単な問題すら解けないで申し込みをするとは論外だ!

おしおきだべ~!」


そう言ってパラケルスが軽く広範囲電撃を×の参加者たちに放つ。


「あぎゃ~~っ!!」

「ひいぃ~~っ」


それを見てレオニーが驚き、ポリーナが引きつる。


「曾御爺様、落ち着いてください!」

「むう、しかしな・・・」

「そのための選抜試験なのですから・・・」

「うむ、わしも少々大人げなかったようだ」


審査員たちが落ち着いたところで審査が続く。


「では第2問!メディシナー独立戦争の時にもっとも活躍したのはエレノア・グリーンリーフ様である!

○か×か~っ!」


今度は全員が○へ走り、誰も×へは移動しない。

全員が正解だ。

その状況を見てレオニーがレオンに抗議する。


「レオン!これでは審査にならないじゃない!」

「すまん!姉さん、次からはもう少し考えてから問題を出す」

「しっかりしなさいよ!」


こうしてロナバールに派遣する料理団が選ばれていったのだった。

そして最終的に残った30数人ほどの内、まずは21人が先発としてロナバールへ旅立ったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る