男爵仮面の日常 04
ジャスティスの性能は満足のいく物だった。
これ以降、私は常に自分の相棒としてジャスティスをそばに置き、行動を共にした。
グレイモン伯爵もジャスティスの性能に感心する。
「うむ、全くこのジャベックの性能は凄いな?」
「ああ、父には感謝しかない」
私もグレイモン伯爵の言葉にうなずく。
私は心を入れ替えたグレイモン伯爵やバロンと共に精進し、全てはうまくいっていた。
しかしその日常は突然壊れた。
ある日、親友のナスカが殺害されたのだった。
その日、私は久しぶりに親友であるナスカ・ゴロブとの友誼を温める予定だった。
バロン、ジャスティスと共にナスカと待ち合わせした場所に着いたその瞬間だった。
「やあ、ナスカ・・・」
にこやかに挨拶を交わそうとした私の目の前で、突然ナスカはドア越しに何者かに襲われた!
「ぐあぁ~!」
「ナスカ!」
私とバロンは即座にナスカに近寄るが、すでにナスカは虫の息だった。
「だんしゃくか・・・」
それが最後の言葉だった。
私やバロンが治療魔法をかける間もなく、ナスカ・ゴロブは息を引き取った。
「ナスカァ~~ッ!!」
私が親友の名を叫ぶと、まるでその死を確認したかのようにドアの向こう側から笑い声が聞こえる。
「ハッハッハッハ・・・・」
その笑い声を聞いた私がジャスティスに命令する。
「ジャスティスッ!
あの扉の向こうにいる者を捕まえろっ!」
私の命令により、ジャスティスは急いでドアの向こう側へ突撃し、相手を探すが、すでにナスカを襲った何者かはいなくなった後だった。
「おのれ!許さん!
必ずやこの報いはくれてやるぞ!」
私はナスカの仇を取る事を決意し、旅立つ事にした。
それからの数週間はジャスティスやバロンと共に迷宮で特訓をし、レベルを上げて
組合員として特級まで上げておけば、各地で色々と便宜が図れるからだ。
バロンも責任を感じて私と旅立つ事となった。
「良いのか?バロン?
この件に関しては決してバロンに責任などないのだぞ?」
「いや、ナスカは私にとっても友人だったニャ。
その仇は私も一緒に討つニャ」
「さようか・・・」
私は身辺を整理し、旧知の友人たちに挨拶をして旅立った。
そしてナスカ殺しの手がかりを得てある町に立ち寄った時だった。
「ふむ、この町はずいぶんと寂れているように見えるが・・・」
「そうだニャ」
我々がその町に宿を取ると、その宿の主人が我々に忠告をする。
「旅の方ですか?
悪い事は言いません。
この町からは早く出て行った方が良いですよ?」
「ほう?それは何故だね」
「いえ、とにかくこの町に長居するのはお勧めしません」
「ふむ、長居するかどうかは私の用事次第だな?」
「用事?」
「うむ、実は私はある事のためにこのケット・シーのバロンと共にある人物を追っているのだ。
その人物に関してここにいるオニカーンという物が関係していると聞いていてね?」
「オニカーン!」
「そうだ?何か知っているのかね?」
「いえ・・・」
そこへ突然どやどやと何者かがやってくる。
「旅の兄さんかい?
余計な事には首を突っ込まず、とっととこの町から出ていきな?」
「いや、この町には少々用事があるんでな?」
「とっとと出て行かないとこんな目に合うぜ?」
そういうとその男は男爵仮面の目の前にあるコップを見事に居合切りで切って見せる。
その技に男爵仮面も感心する。
「これは凄い!見事な物だな!」
「ふふっ・・・どうだ?」
「だがこの程度ではアースフィアでは二番目以下だな?」
「何だと?俺より腕の立つ奴がいるってのか?」
「ああ、少なくともお前の目の前に一人な」
「ではやってみろ!」
「うむ」
そう言われて刀を渡された男爵仮面は見事に目の前にあるコップを十字切にして見せる。
「なっ!これは!」
そして男爵仮面はその男に尋ねる。
「答えろ!2月2日、ナスカ・ゴロブという男を殺したのは貴様か!」
「知らん!知らん!」
「貴様だな!」
「俺じゃない!俺はその頃、ノーザンシティにいた」
「ナスカ、やはりこいつではなかった」
次の町やその次の町でも結果は同じだった。
「2月2日、ナスカ・ゴロブという男を殺したのは貴様か!」
「知らん!そんな事は知らん!」
「貴様だな!」
「知らん!俺じゃない!」
「では誰だ!」
「知らん!俺はその頃、メディシナーで温泉に入っていた!」
「ナスカ、やはりこいつではなかった」
「2月2日、ナスカ・ゴロブという男を殺したのは貴様か!」
「知らん!知らん!」
「貴様だな!」
「俺じゃない!俺はその頃、ロナバールでペロンの幸せプリンを食べていた!」
「ナスカ、やはりこいつではなかったよ・・・」
そして私はある知り合いから有力な手掛かりを掴んだ。
「ノーザンシティのデニケン?」
「ああ、あいつは最近急激に動きを活発にしている」
「ぬう・・・そういえばナスカも奴を調べていた・・」
「おそらくナスカの事に関しても奴が何かしら絡んでいると思うぞ?」
「わかった」
そして私はバロンたちと共にノーザンシティへと向かった。
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