ポリーナ・パーシモン 17 ポリーナの弟子入り

 ユーリウスの屋敷に着いたポリーナとヴェルダは立派な部屋に通された。

そこでヴェルダとポリーナは説明をした。

高祖父がクロンハイム家の執事だった、アルマンであった事、そのアルマンが亡くなり、自分にヴェルダが託された事、デニケンとシャルルの事、遺言により自分がヴェルダを連れて来た事だ。


「なるほど・・・わかりました」


一通りの話を聞くとユーリウスはうなずいた。


「信じていただけるでしょうか?」

「ええ、もちろん信じますよ。

よく私に知らせてくれました。

ポリーナさん、感謝します」


その言葉を聞いてポリーナは一安心した。

少なくともここへ来た事は無駄ではなかったのだ。


「それで私はこれからどうすれば良いでしょうか?

このヴェルダはそのシャルルさんという方の持ち物ですので、お返しをした方が良いかと思うのですが・・・」

「そうですね・・・ポリーナさん、その事も含めてこの話を話して相談したい人々がいるので、もう一度この話をその人たちの前でしていただけますか?」

「え?それは構いませんが、大丈夫なのでしょうか?

高祖父アルマンはこの件に関しては、ユーリウスさん以外の人は信用するなと言っておりますが?」


恐る恐る聞くポリーナにユーリウスが笑って答える。


「大丈夫です。

その方々は私の師匠とそのお弟子さんたちですから、問題はありませんよ。

私一人ではわからない事も、その方たちに相談すれば、何か良い考えが浮かぶかも知れません。

それにあなたはこの手紙に寄れば、師を探しているのですね?」

「はい、高祖父は良い師を探して師事しなさいと言い残しております。

私も出来ればそうしたいので、どうかユーリウスさんが私を導いていただけるのであれば、お願いをしたいです」


そのポリーナの言葉にユーリウスは再び微笑んで答える。


「その件に関してもあなたはとても運が良いかも知れませんよ?

何しろ今から会わせる方は私の師匠ですからね。

私など足元にも及ばない方です。

この方に師事する事が叶えば、あなたはとても伸びるでしょう」

「え?ユーリウスさんのお師匠様?」


高祖父にユーリウスは伝説のゴーレム魔道士とまで言われている魔道士だと聞いている。

その師匠とは一体どんな人物なのだろうか?


「ええ、そうです」

「そんな御方に私ごときが弟子入りできるのでしょうか?」

「確かに正直それは難しいかも知れません。

おそらくその方に弟子入りを希望すれば、その理由を聞かれるでしょう。

ポリーナさんはその事をきちんと話してください。

そうすれば大丈夫なはずです」

「はい、わかりました」


こうしてポリーナはユーリウスの師とその一行、すなわちエレノアとその主人である、シノブ・ホウジョウたちと巡り会う事になったのだった。


この集団と出会ってポリーナは驚いた!

確かにこの人たちは凄い!

ちょっと話している間にどんどん話が進んで行き、あっという間に今後の計画が出来た。

ユーリウスさんが相談したいと言っていた意味がよくわかった。


全員で相談した結果、シャルルという人物に話してみる事になった。

ポリーナは自分の高祖父が仕えていたという人物に興味を持っていたので、どんな人物だろうと思った。

そして実際にシノブが連れて来たシャルルを見たポリーナは驚いた。

柔らかそうな金髪、気品があって、優しそうな物腰・・・まるで御伽噺の王子様が抜け出てきたような人物だ。


(うわあ・・・なんて素敵な人なんだろう・・・)


ポリーナは一目でこの少年が気にいってしまっていた。

そしてこれから自分が話す事をこの少年がどう考えるか気になった。


(この人は自分の話を信じてくれるだろうか?)


この少年には自分の話を信じて欲しい。

ポリーナはそう思って話し始めたが、相手がしっかりと高祖父を覚えている上に、好意的だった事で嬉しくなってしまった。

ポリーナはその少年にユーリウスたちに話したのと同じ事を話した。

但し、ヴェルダの秘密の部分はぼかして、デニケンがシャルルの父を殺した可能性がある事、シャルルが18歳になったら秘密がわかるという部分だけをだ。

話を全て聞き終わったシャルルはうなずきながら答える。


「・・・なるほど・・・」

「いかがでしょうか?

正直に言って、今の話の証拠は何もありません。

それでも私の話を信じていただけるでしょうか?」


ポリーナが恐る恐る聞くと、シャルルは腕を組んでうなずいて答える。


「・・ええ、信じますよ。

僕も以前から不審に思っていた事があるのですが、それと辻褄も合いますしね」

「不審な事?」


その返事を聞いてポリーナはホッとした。

この少年に自分の話を信じてもらえた!

自分の行動は無駄ではなかったのだ!

そう考えるとポリーナは嬉しくなった。


そこからの話の進み方は早かった。

あれよあれよと言う間にシャルルはこのシノブという少年の家で修行をする事になったようだ。

しかもいきなりメディシナーの最高評議長の副官などという人まで現れて、その人まで協力する事になった。

全くこの人たちはなんと言う人たちだろう!

ポリーナは驚いた。


特にこのエレノア・グリーンリーフという人の素性には驚いた!

何とメディシナーの最高評議長の師匠で、メディシナーでも最高権威を持った人物らしい。

確かに伝説の魔道士とも言われるユーリウスさんの師匠なのは、もっともな事だとポリーナも思った。

このような人物に師になってもらえるなら間違いない!

そう考えたポリーナは決心をして話しかけた。


「あの、私も一つお願いをしてよろしいでしょうか?」

「はい、何でしょう?」


ユーリウスさんの問いにポリーナが答える。


「私もシャルルさんと一緒に鍛えていただきたいのです」

「え?それはシャルルと一緒にうちに来るって事?」


シノブに聞かれたのでポリーナはうなずいて答える。


「はい、私も訳あって自分を鍛えたいんです!

今、皆さんの話を聞いてエレノア先生は凄い人だと伺いました。

そんな方に鍛えていただける機会なんて二度とないと思います!

滞在中の生活費や訓練費は何とか出せると思いますし、下働きでも何でもしますので、どうかお願いします!」


そう言って、ポリーナは深々と頭を下げる。


「いや、そんな滞在費や訓練費なんて別にいらないけどさ、

どうだろう?エレノア?」

「そうですね・・・ポリーナさん?

伺いたいのですが、あなたは何故自分を鍛えたいのですか?」


エレノアの疑問にポリーナさんは勢いよく答える。


「はい、それは亡くなった高祖父とある約束をしているからです!」

「高祖父?アルマンさんですか?」


シノブの質問にポリーナが答える。


「はい、その通りです!」

「一体、何の約束をしていたの?」

「それは「ゴブリンキラー」になる事です!」


ポリーナの意外な答えに一同が驚いたようだ。

そしてポリーナが高祖父であるアルマン・パーシモンの事と今までの事を話すと、エレノアも納得する。


「事情はわかりました。

それならば私が鍛えても構いませんが、本当に大丈夫ですか?

ゴブリンウイザードやゴブリンキングを倒すほどの力量となると、それは大変な事ですよ?」

「はい、大丈夫です!

覚悟は出来ています!」

「ではシャルルと一緒に鍛えましょう」


こうしてポリーナもシャルルと一緒にエレノアに鍛えられることとなった。




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