第23話 夢と消えた高額歩合


さぁ頑張ろう、死ぬ気で頑張ろう!


だって、どう考えても私の貰える報酬はとんでもない金額になる。


収納限界まで詰め込まれたバグベアーは106体も入っていた。


そして状態は胸に一突き、この状態を完璧と言わないなら何を完璧と言えば良いんだ、そんな状態だった。


106×30枚=3180 金貨3180枚、それに担いできた1体腕が無いので 15枚+4枚=19枚。


合計3199枚。


凄いなんて物じゃない、聖魔戦争の時ならいざ知らず平常時であれば間違いなくこのギルドでソロ歴代1位だ。


下手すれば、全ギルド1位かも知れない。


笑いが止まらない。


このうち、約金貨160枚が私の取り分、それが今月の給料と共に貰える。


しかも、これが私がセイルくん、じゃなかったセイル様の担当を続けるだけで貰えてしまう。


家が買える金額が手に入る。


しかも、これが今回だけでなくこれからも続くんだ..セイル様様だわ。


ここまでの成果をあげているんだから、サロンの使用申請をして、お茶とお菓子も用意しないと。



サロンとは上級冒険者が使える個室である、商談や寛ぐ場所として自由に使える。



《銅級とはいえ、此処までの成果を上げているんだから多分通るでしょう》



そして、その場所で食べるお菓子やお茶は担当の専属受付が用意するのが通例。



徹夜で査定を済まして、申請書を出して私は今茶葉を購入してクッキー屋に並んでいる。


此処のクッキーは評判が良く行列が出来ている。



流石に疲れた..時間は、まだ10時30分だ。


仮眠室で仮眠をとろう..



目が覚めた..時間は11時30分そろそろ起きて身だしなみを整えないと。



「あのよ、セシル、本当にすまない」


「ギルマス!いったいどうしたんですか? 急に謝るなんて、何があったんですか?」


「いや、セイルの専属の話だが、すまないがお前への歩合の支払いが1回金貨3枚になる」


「どういう事ですか? 納得がいきません」


「すまないがどうしようも無いんだ」


「何故ですか? 可笑しいです、誰かのやっかみですか?」



「それなんだが、凄い成果をあげているから少し身元を調べたんだ、次は銀級だからな」


「まさか犯罪者だったんですか?」


「いや違う、一度しか使われなかったが、セイルのジョブ証明がこの国に入る時に使われた」


「それで?」


「勇者だった」


「勇者?」


「門番が確認したそうだ」


「それなら優先的に査定しないといけないじゃないですか?」


「勿論そうだ、だが勇者を担当した者の歩合の支払いは金貨3枚と決まっているんだ」


「何故ですか?」


「良いか? 過去の勇者が手に入れた物を考えて見ろ、光のオーブに虹の雫、賢者の石だぞ勿論勇者は無報酬、だがお金に変えたら一番安い虹の雫で恐らく金貨にして30億枚以上の価値がある、光のオーブ等下手すれば国より価値があるんだ5%なんて払ったらギルドや国が破たんしてしまう」


「そうですか..それなら仕方ありませんね」


「一応、ギルドの職員全員にはセイルのジョブは伝えてあるが、良いか絶対に気が付かない振りしているんだぞ!」


「何故ですか?」


「これも聞いた話だが、恋人のジョブはただのお針子だそうだ..多分駆け落ちしてきたんじゃないか? そう言う事らしい」


「そうですか」


「それじゃ無ければ、勇者支援の少ない帝国に等来ないだろう、良いか? 勇者が帝国のギルドに居てくれる、こんなチャンスは二度とない、絶対に気づかれるなよ!」



こうして、私の高額報酬と家の夢は一日で終わりました。


だけど、金貨3枚って金貨60枚相当の査定をしているのと同じなのだから、文句は言えませんね。


「徹夜で査定したんだから今日は帰って寝て良いぞ! お金の引き渡しは俺がやってやる」


「それじゃ、お願いしますね」


流石につかれたな..今日は帰ったらすぐに寝よう。




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