第29話 レベル


冒険者ギルドに帰ってきた。


サロンの利用が可能という事だったが、今回も数が多いので倉庫の方が良いかも知れない。


「セイル様、お帰りなさいませ!」


帰ってくるなり、セシルさんから声が掛かった。


今行っている仕事は横の受付の子に引き継いでいるのだろう、話し合っている。


それが終わると直ぐにこちらに来た。


「今日も討伐ですか? そうしましたらサロンの方に行きましょう」


「また数が多いので倉庫の方でお願いできたら」


「数が..多いのですか?」


「はい!」


「......どの位?」


「多分、また100近くあると思います」


「100ですか?」


「はい」


「すいません、ギルマスを呼んできますので、先に倉庫に行って貰えますか?」


「解りました」




来る前に出しておいた方が親切だ。


バグベアーを全部袋から出して置いた。


一応数も数えて置こうかな?


102体だ、まぁそんな物だろう。



暫く待っていると向こうからギルマスとセシルさんが歩いてきた。


「いや、幾らセイルが勇者でも100体となれば大変だ大方、ゴブリンや良くてオークだと思うぞ」


「ギルマス..あれっ!」


「また、バグベアーだと!」




《冷静に話さなければ..》


「セイル、凄いな、またバグベアーを狩ってきたんだな」


「はい、居場所も解るし簡単に倒せて実入りも良いので重宝しています」



《簡単に倒せるだと..》


「そうか、そうか、簡単か! それでそれはどの位の時間で狩ってきたんだ?」


「半日位ですね」


「凄いな」


《1体倒すのに 銀級冒険者が3人でも危ない、1人で倒すなら金級じゃ無いと危ないんだぞ》


「そうでも無いですよ? コツさえ掴めば簡単です」


《勇者だから強い..それだけじゃ説明がつかないな、セイルは15歳だ勇者になって間もない、幾ら勇者でもまだレベルも低いはずだ、天狗になった勇者が冒険者や騎士に倒される話は良く聞いた「しかも今は魔王が居ない」なら勇者でも低い能力の筈だ》


「多分、もうミスリル級の力はあるな! だが1種類の魔物を狩っただけじゃ昇級は出来ない、次は他の物を狩ってきてくれ」


「解りました」


「あとよ..もうセイルはバグベアー禁止だ」


「そんな..」


「セイル、東の森にバグベアーがどれ位居るか知っているか?」


「500位ですか?」


「半年前で250体だ、だがお前が200体も狩っちまったんだもう50体前後しかいねーよ」


「それじゃ、残りを狩ってお仕舞にしますか」


「それじゃ困るんだ、金級の昇級試験にバグベアーの単独討伐やパーティーの銀級昇級に4人以下でバグベアーを倒すという物があるんだ...悪いがこれ以上は辞めてくれ!」



「それじゃ仕方ないですね」


「すまないな! それで今回も査定に時間が掛かるからまた明日の午後にでも来てくれ、それで、セイルはどの位のレベルなんだ?」


「レベルって何でしょうか?」


「お前、レベルも知らないのか?」


「はい」


「レベルって言うのは自分の能力を数値化した物だ、オーブで調べられるぞ」


「それって記録に残るのですか」


「残らない、自分で見えるだけだ..そうだな本来は1回銀貨3枚だが今回は無料にしてやる..後で調べてみると良い..セシル頼んだぞ」


「解りました」



セシルに連れられてオーブの間に来た。


「私は外に出ていますから、そのオーブに手を触れて下さい、そうしたらオーブに今の貴方の能力が浮かび上がります」


「有難うございます」



僕は言われた通りオーブに触れてみた。


出てきた情報は。



セイル


レベル 6


ジョブ 虫の勇者 虫の聖人


ギフト ケインビィの経験 ビィナスホワイトの経験


固有スキル 意思疎通(虫限定)能力コピー(虫限定) 聖剣錬成


スキル ドラゴンビィ イエロースパイダー グリーンアント


HP ????


MP ????


力 ????


耐久力 ????


器用 2200


俊敏 ????


魔力 ????



殆どが解らない、これはきっと「虫の勇者」だからかも知れない。


流石のオーブも「虫」までは網羅していなかったのだろう。


また、力や能力は人間と虫では計算が違うのかも知れない。


バグってしまうのも仕方ない。


まぁ基本情報が解っただけ良しとするしか無いな。


後は、自分の中で自分の能力を把握するしか無いな。





「どうでしたか? セイル様のレベルは?」


「6だったよ」


「レベル6バグベアーがあれ程狩れるのに6ですか?」


「他の人の能力って知る事は出来るんですか?」


「本来は秘匿ですが、元金級冒険者の方と元ミスリルの冒険者たちが公開した物を販売しています 銀貨1枚です」


「その方達はどうして販売しているのですか?」


「もう引退しましたので能力を知られても問題が無いのと、どの位の力が金級やミスリル級で必要になるのか指針を知る為に需要があるので..まぁ本音はお金ですね」


「それじゃ、それを買います」


「用意します」



「能力表」を受取ると僕は冒険者ギルドを後にした。





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