第25話 デート..帝都で洋服を買った。


ユリアを連れて街に出た。


最初から僕は躓いていた。


ご飯を食べた後なのに、パンケーキという物を扱うお店に入った。


凄く柔らかい、パンケーキにトロトロのハチミツシロップにクリームが載ってくる。


これなら朝食が要らなかった。


だけどユリアは..すごく美味しそうに食べている。


「凄い、凄いよ! セイルこれ凄く甘くて美味しいよ!」


村じゃ砂糖を使ったお菓子ですら滅多に食べられない。


揚げパンに砂糖をまぶした物が普通は最高の物、偶に王都のお土産で神官や村長がお菓子をくれるのを除けばそんな物だ。


「うん、凄く美味しいね!」


こんな高級な物、村人じゃまず食べられないだろう。


二人で美味しく食べていると嫌な視線を感じた。


敵意では無い。


だけど、明かに嫌な視線だ。


目を併せると直ぐに目を反らす。


自分達が何か可笑しいのかな? そう考えて自分とユリアを見た。


ユリアも僕を見ているが、少し元気が無い。



そうか、解った。


服だ..よく考えて見たら僕らの服は村から着ていた物だ。


どう見ても質素で、周りから浮いている。



《最初に僕が気が付くべきだった》


折角の楽しい一日が最初から躓いた。



ユリアを連れてお店を出た。


ユリアが少し元気が無い気がする。


多分、服装に気が付かず食べていたのが恥ずかしかったのかも知れない。


僕はこういう所が凄く疎い。


自分に関して言うなら気にならないし、ユリアに関しては何を着ていても可愛いと思ってしまう。


だけど、此処は村じゃ無くて帝都だ、気を使うべきだった。



「まぁどんな服を着ていてもユリアが一番かわいいよ」


そう言うと急に明るい顔になった。


「セイルがそう思ってくれるならそれで良いや」



お金の受け取りにはまだ時間がある。


少しぶらつくのも良いかも知れない。



服か..しかし、凄いな村と違って色々な服を着ている人がいる。


「セイル..」


あの子の服なんてパンツが丸見えだし、あっちは胸が見えそうだ。


「セイル!」


あれなんて、殆ど下着、あれなんか裸に近いんじゃないかな?


「セイルってば!」


「痛っ!」


僕はユリアに足を踏まれていた。


「やっと気が付いた! 本当に信じられないよ、そんなに大きな胸やお尻が好きなのかな? じっと見たりして!」


「そんな事無いよ..ユリアより可愛い子なんて居ないよ」


「嘘! 私が話しかけても気が付かない位、女の子見てたじゃない? まぁセイルも男の子だから解らなくないけどさぁ、2人の時は辞めてよ」


「そんな事してないよ」


「嘘ばっかり、別に怒ってないから良いんだけど..」


と言いながら、ユリアは「私怒ってます」そうとしか見えない。


「本当に女の子なんて見てないから」


「まだ言うんだ、もう良いよ」


「信じてくれないの?」


「鼻の下伸ばしたセイルなんて信じられない!」



どうやら、ユリアのコンプレックスに触れてしまったみたいだ。


ユリアは胸が小さくお尻が小さい。


僕は大きな胸より本当にユリア位の大きさが好みなのに、大きな胸を見たりすると機嫌がちょっと悪くなる。



「だったら、嘘じゃないって証明出来たら、何かしてくれる?」


「良いよ? そうしたら、セイルの言う事なんでも一つ聞いてあげる!」


「絶対だからね!」


「良いよ!」



本当にユリアは学習しないな..これで何時も痛い目に遭っているのに。


僕はユリアの手を引っ張って洋服屋さんに来た。


「洋服屋さんがどうかしたの?」


「良いからさぁ」


王都あたりだと特注品が多いが、帝都だと大量生産品を置いているお店もある..実際にこうして触って見たり着たりしながら買えるお店も市民層には人気がある。


「ここに来たかったの?」


「うん、さっき見てたのは女の子のじゃなくて洋服だよ! 僕は余り服とか解らないから見ていたんだ!」


「そうか、服、洋服ね、あはははっそうか、ごめんねセイルまた誤解しちゃった」


「うん、良いよだけど約束は約束だからね! 一つ言う事はきいて貰うからね?」



「お手柔らかにお願いします!」


「だーめ! それはそうと洋服を買おうよ」


「だけど、私もずうっと村に居たからどんなの着れば良いのか解らないよ?」


二人で見ていたけど、どれを買えば良いのか解らない。


あっちで此方を睨んでいるお姉さんに声を掛けた。



「あの、すいません、服が欲しいんですが選んで頂けますか?」


「それは構いませんが、新品の服は高級品ですよ? 古着の方が良いと思いますが!」


《貴方達の様な田舎者に買えるような服は此処にあるわけ無いでしょう》


「そうですか..一人金貨1枚ずつの予算じゃ足りないですか?」


「金貨...充分足りますよ、嫌だなそんな予算頂けるなら充分すぎますよ、お嬢さんのは私が見るとして..おーいジョージこっちのお客様を見ておくれ、予算は金貨1枚で数着お願い」


「金貨1枚..解りました。腕によりを掛けて選ばせて頂きます!」




「うわぁ、セイル本当に王子様みたい!」


「そういうユリアも可愛いよ」



「当店の服は帝都では人気がありまして、貴族の方でも普段着に着る方もいらっしゃいます..これなら貴族の居住区を歩いても恥ずかしくありません」



「助かったよ、ありがとう」


「どういたしまして!」


「ついでに、服の追加もお願いしして良い?」


「他にもお求めですか? 喜んで!」


「それじゃ耳を貸して下さい..」


「はい、お嬢様の採寸は済んでいますから、大丈夫です..ご予算は、えっ同じく金貨1枚解りました用意します!」




「あの、セイル..何を買うの?」


「見てのお楽しみ」



「準備できました..これで如何でしょうか?」



凄いとしか言えない服だった。



パンツが絶対に見えるミニスカートのワンピース。


スケスケの生地で下着が丸見えの服。


胸元が大きく開いて胸が見えてしまうシャツ。


他にも下着があるけど..透けてしまってこんなの着たら大切な所が丸見えだよね。


しかも、可笑しな事に一番隠さなくていけない場所に穴が開いている。


もしくは凄く隠す面積が小さくて下着の意味がないような気がする。



「あの、セイルこれは何かな?」


「ほらっさっき、言う事一つきいて貰える約束をしたじゃない? 家にいる時だけで良いから..着て」



「セイル流石にこれは恥ずかしいよ?」


「だけど、約束したよね?」


「だけど、だけどね..これは流石に..ね!」


「さっき信じて貰えなくて悲しかったな..」


「はぁーっ解ったよ、約束しちゃったから仕方ないね..うん着てあげるよ!」



「ありがとう..それじゃ今夜から宜しく」


「うん..本当に恥ずかしいけど良いよ..約束だもんね..」



《セイルは本当に私が恥ずかしがるの見るの好きだよね..セイルがこの仕草が好きだから恥ずかしそうにしているけど..本当は違うんだよね..セイルがして欲しいなら、外は流石に嫌だけど「家では裸で過ごして」って言われても出来るよ..まぁ恥じらっている私を見るのが好きなセイルには内緒だけどね》


僕たちは金貨3枚を払うとギルドへと向かった。


洋服は今着替えた物を除き家に送って貰った。




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