第26話 ギルドにて

ギルドに来た。



何だか注目されている気がする。



《あの新人がバグベアーを連続狩った奴か?》


《線が細くて綺麗..どこかの騎士の家系の人かな》





「何だか凄く注目されているね!」


「ここ暫くバグベアーを狩っていたからじゃないかな?」


「確かに大物を狩ってればそうなるね!」


多分、それもあるけどセイルの外見も絡んでいると思うな。



受付に並ぼうとしたら、受付嬢が声を掛けてきた。


「セイル様は並ばないで大丈夫です! 奥でギルマスがお待ちですのでそのままお入り下さい!」


《あれが勇者様、やっぱり他の冒険者とは違うわね...だけどコブツキなのよね..はぁー》



カウンターから奥に入った..あれ、なんでセイル様なんだ。


まぁ良いか?



「よく来たなセイル! まずは報酬を渡そう、と言いたいが現金は流石に無いんだ、ギルドの口座扱いで良いか?」


「構いません、元から預けるつもりでしたから」


「流石に帝都のギルドでも金貨3199枚は厳しいからな!まぁバグベアーの素材は商会が買ってくれるから儲かるんだがお金が貰えるまで時間が掛かるんだ」


「追加でこの金貨18枚も預かって貰えますか?」


「勿論構わないぞ、一応スズメの涙だが年間1%の利子がつくからなこの位の金額を預けるとまぁ遊んで暮らせるな」


「それじゃ、僕とユリアの共同名義にして貰う事は可能ですか?」


「勿論、パーティーの共有財産として置けば大丈夫だぞ」


「それじゃ、それでお願い致します」



「あの..セイル、さっきから金貨3000枚とか何の事かな?」


「ユリア、昨日セイルはバグベアーを106体狩ってきたからそのお金だ」


「流石セイル、勇者..あっごめん」


「ユリア、セイルが勇者だって事はギルドの職員は全員知っている」


「知っているんですか?」


「まぁな..セイルも銅級、次は銀級だからそれなりに調査もする、だが安心して欲しいこの事は貴族も含んで口外する事は無い」


「それは助かるけど良いのでしょうか?」



「お針子と勇者、そして勇者の特権が殆ど無い帝国..そこから考えるなら訳ありしか考えられないな! 大方駆け落ちでもしてきたんだろう?」


「そんな所です」


「安心しろ! 此処帝国は勇者の特権は少ない、その代わり勇者の義務も無い、自由に生きて良いんだぜ! そして強ければ尊敬される!それだけの国だ、頑張れば只の街人でも貴族になれる国、それが帝国だ!」


「それは素晴らしい国ですね」


「まぁな..話は変わるが、セイルお前の実力なら本来はミスリル級だ、だがお前は1種類しか魔物を倒してない..だから今回は昇級は無しだ」



「帝国だと階級に関係なく仕事が受けられるから別に昇級しないでも構いませんよ」



「まぁ確かにそうなんだが、上に成れば沢山の特典があるんだぞ」


「その代わり義務もあるんでしょう?」


「まぁな」



「僕は2人で面白可笑しく暮らせれば良いんだ...危ない思いする位なら銅級で充分です」



「あのよ..バグベアーをあそこ迄、狩れる奴が危険な事なんかザラにはねぇよ」


「そりゃ安心ですね」



「そんな奴が危ないなんて事になったら全員が死んでしまうさ」



そりゃそうだ、僕も虫の勇者になる前ならバグベアーにあったら死しか無かった。


「セイル、俺はお前をセイル様とは呼ばない、勇者だからといって特別扱いしないで普通の冒険者として扱う..その代わり義務を果たせとも言わない..それがお前にとって過ごしやすいんじゃねぇか?」



「確かにその通りです」


「それじゃ、セイル頑張れよ!」


「はい」




「良い人だったね!」


「まさか勇者ってバレていると思わなかった」


「それでも普通に扱ってくれるって..だけどセイルはそれで良かったの?」


「うん、僕は何時も言うけど、ユリアと楽しく暮らせればそれで良い」


「だけど、勇者になれば何でも欲しい物が手に入るんだよ!」


「僕の欲しい物はユリアしか持ってないからな..」


「もう答えが解っているよ..私自身は確かに私しかもって無いもんね!」


「そうだよ、僕の欲しい物はユリアしか持って無いんだから他の誰からも貰えないんだよ」


《そんな物とっくに全部あげちゃっているんだけど》


「それじゃ、これからも沢山、沢山あげるからね」


「うん、楽しみにしている..特に今晩は凄く楽しみだ」


「あっ..そうだね..あれ着なくちゃいけないんだ」


「そうだよ」


「セイルも男の子だったんだね..」


「まさか幻滅した?」


「してないよ..セイルだもん」



結局、ギルドで時間が掛かったからもう夕方になっていた。


ギルマスから、ミノタウルスのステーキが絶品だって聞いたので帰りに二人して食べた。


初めて食べたミノタウルスのステーキは頬が落ちるほど美味かった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る