第64話 教皇襲来..結婚へのカウントダウン
ドアを開けた。
何となく気配を感じたから開けたのにそこに居たのは...
イシュタ教の教皇ヨハネス3世様だった。
思わず、目を疑った。
村人として生きていたら恐らく生涯会えない人だ。
会えて声を掛けて貰える事は生涯自慢になる、お年寄りはそれだけで死んでも良いなんて人も居る。
「教皇様で間違いないですよね? 良く似た別人という事は無いですよね?」
「はい、私は教皇ヨハネス3世です..ですが様は不要です..貴方様は銀嶺の勇者様の生まれ変わり、女神に最もお近い人なのです」
「ですが、僕には過去の記憶はありません、別人では無いでしょうか?」
「神託がおりましたから間違いはありません」
少しお待ちください..
「はい、お待ちしております」
僕はユリアを起こして直ぐに着替えて貰い、簡単に掃除をした。
お茶の用意をして教皇様とお付きの人に入って貰った。
「お待たせしてすみません」
「お茶の準備をされていたのですか?」
「普段僕が飲んでいる物で申し訳ないですが」
「有難うございます」
勇者といっても僕は元はただの村民、やはりこういうお偉い人と話すのは緊張する。
「村では本当に申し訳ございませんでしたね...私がもう少し目を光らせていればあの様な思いをさせずすみました」
「いや、もう済んだ事です、村の方々も謝ってくれたのでもう何も思っていません」
「許されたのですか..流石心がお広いのですね..」
この瞬間にアイシスの村民の運命は変わった。
村は既に無くなってしまったが、アイシスの村民の実質破門に近い扱いはこの日教皇の名の元に解かれた。
「そんな事は無いですよ、怒りに任せて殺してしまった者もいます」
「それは当たり前の事です、気になさる必要はありません..それはそうと何かお困りの事は御座いませんか?」
「特にありません、そう言えばこの間、信者のマルコーさんに凄く美味しいステーキを頂きました」
「そうですか! マルコーもきっと喜ぶでしょう、そう言えば、そろそろ結婚を考えている、その様に信者から聞きましたが本当でございますか?」
そう言えば、そう言う相談もしていたな。
「はい、生活も落ち着いてきたので考えています」
「なら、その結婚は私に行わせては貰えないでしょうか?」
そう言えば、ユリアに結婚の話はしていなかったな.顔を赤くして驚いている。
此処まで話してしまったら続けた方が良いだろう。
「ですが教皇様が式を執り行うのは王族のみで貴族ですら無理だと聞いた事があります」
「セイル様は勇者様の生まれ変わりなのです、王族より遙か上の存在! そんな事気になさる必要はございません」
「それならお願いします」
「それで、元異教の勇者ホーリーはどうしますか? イルタの国やゾラン教も体が回復したから又アプローチがあるかも知れません」
「あの、私の意見を言っても宜しいでしょうか?」
口を挟まず黙って聴いていたユリアが入ってきた。
「構いませんよ! 貴方は勇者様の妻になるのですから私より立場は上なのですよ..ヨハネスと呼びつけでも教皇と呼びつけでも構わないのです」
ユリアがアワアワしている、あっ元に戻った。
「ホーリーの気持ち次第ですが、第二夫人とか側室とかは可能なのでしょうか?」
「勇者様は何人でも妃を娶る事が出来ます..セイル様にも適用ですので可能でございます」
「セイルどうかな? 多分これからもきっとホーリーさんも一緒だし、結婚してしまえばもうイルタの国やゾラン教も手を出せないんじゃないかな?」
「僕はユリアが構わないなら良いけど、ホーリーの気持ちもあるからな..」
「それなら問題は無いのでは無いですか? ホーリー殿ならそこで顔を真っ赤にされていますよ」
「ホーリーはどうかな? それで良いの?」
「本当に宜しいんですか? ずうっとお二人と一緒に居て宜しいんですか?」
「「勿論」」
「それじゃお願いします」
「その場合はホーリー殿にもイシュタ教に入って貰う事になりますが宜しいですか?」
「構いません」
「それでは、セイル様、ユリア様、ホーリー様の結婚は私、ヨハネス3世が僭越ながら行わせて頂きます」
「「「宜しくお願い致します」」」
「はい、お引き受けしました..日程はまた時間のある時にでもお話しましょう」
「はい」
教皇ヨハネス3世は笑顔で帰って行った。
だけど、僕は虫の勇者なんだけど大丈夫なのかな?
しかも、僕が銀嶺の勇者の生まれ変わり..一体何なのかな?
今度、詳しく聴いてみよう。
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