第65話 【閑話】 虫らしく

余りにも、邪神側からの訴えが多かったので儂自身が直接調べる事になった。


まぁ創造神だから仕方ないの


見れば見る程..惚れ惚れする人物じゃな、銀嶺の勇者の生まれ変わりというのはうなづける。


そして、戦う姿は..あの様な加護を授けるような神は記憶していない..


だが、あの戦い方は..虫じゃ..虫に神は居たのかのう..記憶にない..だが、考えて見れば居ない訳は無い。


しかし、何故、虫の神が人間に加護を与えたのか解らぬ..下界を幾ら見渡しても虫の神はおらんし..何処にいるのじゃ。



見つからぬわけじゃ..虫の神、神虫は天界に帰ってきておった。


虫の姿になり生きていた、これではなかなか見つからぬ筈じゃ。



「お主は神虫じゃな?」


「創造神様..私のような下級な神、文字通り虫に何か御用でしょうか?」


「其方は、もしや人間に勇者の能力を与えたのではないか?」



「与えました...私を信仰する者は殆ど居なくなり、あの世界にはドラゴンビィーの2匹の虫が最後の信者だったのです..そして、その二人の最後をみとってくれた少年に私は二人の能力と僅かなスキルを与えたのです」



「それでお主は何故、天界にいるのじゃ..」


「私の信者はおりません..だからこれからは天界で細々と虫らしく生きようと思っての事です」



何とも不憫じゃな..



「お主が勇者のジョブを与えた少年だが..立派に育っておるよ..規格外と言われるマモンも倒し、恐らくあの世界で歴代で片手に収まる程の強い勇者になったのじゃ」



「私の与えた能力でそこ迄成られたのですね」


「見て見るかね?」



遠見の鏡で創造神はセイルを見せた。


「立派になって..あのマモンにも勝ったなんて..本当に凄いわ..幸せそうね、本当に良かった..加護を与えて本当に良かった」


「それでどうじゃ、もう一度下界と関わり女神らしく過ごしてはどうじゃ、何なら虫以外の神に変えても..」


「もう結構です..私はこれからも虫らしく天界で暮らします..女神として最後に彼のような人物にジョブを与えられて良かった..最後の最後で邪神に勝てる者を作れた...これで満足です」


「そうか..決意は変わらぬのだな」


「はい」


「それなら一つお願いをして良いかの?」


「なんなりと」


「能力やその他はそのままじゃが...「虫の勇者」の表記を「勇者」に変えて構わぬか?」


「確かに人の世で「虫」とついていたら生きづらいですよね、私には出来ませんでした..お願いします」


「あい解った...そうじゃな、強い勇者を作った、そのお礼としてイシュタの森を其方の地としてあげよう」


「あそこはイシュタ様の森ですが..」


「良い、イシュタは其方のお陰で助かっているのじゃ....森の一つ位譲っても良い筈じゃ、虫とはいえ女神なのじゃ土地位は持っても良い筈じゃあそこは花の蜜も上質だし、樹液も上質じゃ虫の其方には住みよいだろう」



「有難うございます」


「良いのじゃ、これ位させて貰わなければの」



神虫は、イシュタの森を貰い、未来永劫虫として幸せに暮らしましたとさ。



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