第68話 逃げ出した

今日は、結婚式だ..


教皇が中心になり沢山の司祭やシスターが祝ってくれる。



ドレス姿のユリアは可愛いし、ホーリーは美人だ。


女神像の前で誓いをしキスをした。



無能になって、絶望していた僕が..


二度と抱きしめる事が出来ない、そう思っていたユリアが隣にいる。


そして、勇者のホーリーが僕の妻として反対側にいる。


あの時の僕じゃ考えられない事だ..


いまの僕は凄く幸せだ、世界中が僕たちの結婚を祝福している..


凄く幸せだ..





式が終わり、沢山の王族や貴族が挨拶に来た。


ただの村人だからつい恐縮してしまう..横に居る教皇から「様」等付けない様にと注意を受ける。




ようやく、解放された時は夜だった。



「ユリア、ホーリー、凄く楽しかったね」


「うん、まるで夢みたい」


「本当にそうですね..」





「村人だった僕が世界で一番偉いんだって」


「セイルは凄いよ、私までこんな扱いになっているんだから」


「勇者の私が守って貰えるなんて思いませんでした」





「だけど、此処は僕たちの過ごす場所じゃない? そういう気がしない?」


「私も、そう思うな」


「何考えているか解ります」




「それじゃ逃げちゃおうか?」



「「賛成」」



その日の夜、勇者セイル達は逃げ出した。


収納袋に必要な物を詰め込んで夜逃げ同然に。



「それで、何処に行くの?」


「アイシアに帰らない? ユリアが嫌じゃ無ければ、あの場所から始めないかな? 畑を耕してお金を稼いで、残りの時間はイチャイチャして暮らさない?」



「良いね、それ、私はセイルが傍に居てくれればそれで良い..寧ろそっちの方が楽しそう」


「二人の世界を作らないで下さいよ..私も混ぜて下さい」



三人は全てを捨てて逃げ出した。

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