第19話 帝都のギルドと住まい

帝都には夜に着いた。


本来は夜には門が閉ざされ入れない。


門番が外に居た。


「遅かったな残念だけどもう門は閉めた後なんだ明日出直してきてくれ!」


僕は此処でジョブの認定証を出した。


幾ら帝国が実力主義で勇者の威光が弱いとは言えこの位は利くだろう。


「勇者なんですか!」


「一応はですよ..まだ15歳の認定受けたばかりですから、貴方にも負ける位弱いかも知れませんが」


「帝国は王国や他の国と違い、さほど勇者でも優遇されません..良く来ましたね」


「まぁ訳ありで」


門番はユリアをチラっと見た。


(勇者とお針子..もしかして駆け落ちか..)


「帝国は実力主義です..勇者だろうが特典は少ない、だが実力があればのしあがるのも簡単だ..頑張れよ」


門番は微笑みながらジョブ認定証を見せてくれた..そこには農夫と書いてある。


「農夫なのですか?」


「そうだ、この国では頑張れば農夫でも門番に成れるんだ..色々あるだろうが頑張れよ」


「はい、ユリア入れてくれるって」


「ありがとう門番さん」



「どういたしまして!サンダルサン帝国、帝都アドオンにようこそ!」



その日は、そのまま屋台でパンと果汁水を買って食べ、そのまま近くの宿屋に泊まった。


しかし、流石帝都だ、部屋の中にはシャワーも付いていたし、ベットもふかふかだった。


色々な人が泊るのだろう、使い方は解りやすい様に絵と文字で書いてある。


これなら、文字が解らない人でも苦労しない。


まぁユリアも僕も文字は読めるから関係ない。



「これからは2人きりだね、セイル」


「そうだね、毎日が楽しくなると良いね!」


「私はセイルが居るだけで幸せだもん」


「それは僕も一緒だよ」


僕の事で頭が一杯な女の子がいるのに楽しくない訳がない。


朝になった。


「「お世話になりました」」


偶々運が良かったのかも知れないが飛び込みで泊めてくれた宿屋の主人にお礼を言ってチェックアウトした。



今日の予定はまずギルドに行って登録をする。


その後、住む所を真剣に探す。


その二つだ。




ギルドに着きギルドの大きな扉を開いて中に入った


ヒソヒソ声が聞こえて来たが、特に絡まれるような事は起きなかった。


二人で、受付に向かった


「冒険者ギルドへようこそ! 本日はご依頼ですか?それとも登録でしょうか?」


「登録をお願いします。」


「登録には1人銅貨1枚掛かりますが宜しいでしょうか?」


僕は銅貨2枚を渡した。



「所でご説明は必要ですか?」



登録に来る人間の中には冒険者を目指して「お手伝い」をしている人間も多い。


そういう人間に説明は不要だ。


「何も解らないので細かくお願い致します」


「畏まりました」


説明内容は、


冒険者の階級は 上からオリハルコン級、ミスリル級、金級、銀級、銅級、鉄級、石級にわかれている。


そして、案外上に行くのは難しく、銀級まで上がれば一流と言われていて、この街には金級以上の冒険者は居ない。


殆どが、最高で銅級までだそうだ。


級を上げる方法は依頼をこなすか、大きな功績を上げるしか方法はない。


銀級以上になるとテストがあるそうだ。


ギルドは冒険者同士の揉め事には関わらない。


もし、揉めてしまったら自分で解決する事。


素材の買取はお金だけでなくポイントも付くので率先してやる方が良いらしい。


死んでしまった、冒険者のプレートを見つけて持ってくれば、そのプレートに応じたお金が貰える。


そんな感じだった。



「此処までが世界共通のルールです。」


「何か地方ルールみたいな物があるのですか?」


「はい、此処、帝都では強い人間を皇帝が好みます、その為、殆どの依頼には制限がありません」


「それはどういう事ですか?」


「掲示板に張り出されている依頼には横に推奨される級が書いてあります..例えば、そうですね、オーガの討伐は推奨が金級です」


「はい、そう書かれています」


「王国を含む殆ど各国では金級以下の級では受けれません、ですが此処帝国では石級でも受けられます」


「それはどういう事でしょうか?」


「皇帝曰く、帝国は本当の男を欲している、強いジョブではなく、真に強い男で無ければ尊敬しない..そこから来ています」


「つまりは?」


「命すら自己責任、真の男なら勝ち取れ..そういう事らしいです、まぁ皇帝は男と言っていますが女にも適応されます」


これは僕にとっては都合が良い..



「横の彼女は何か聞きたい事はありますか?」


「特にありません」



「後は大丈夫? 問題無いならこちらの書類にサインをお願いします、パーティを組むならパーティー名もお願いしますね」



「名前かどうしようか?」


「私が決めても良いの?」


「僕は苦手だから、ユリアは良いのある?」


「エターナルラブ..なんてどうかな?」


「エターナルラブ、永遠の愛か? 僕らにお似合いだね」


「うん」


「すいません、エターナルラブでお願い致します」



(見ているこっちが恥ずかしくなるわね)




「エターナルラブですね、それで登録します、リーダーはセイルと、それでは、冒険者証が出来たから渡します。 初めてだから石級からスタートです。頑張って下さいね!」



「「はい」」



「所でこの辺に何処か住むのに良い場所はありますか?」


「はいギルドでは住居の斡旋もしていますよ、ご希望はありますか?」



「そうですね、治安が良くて管理人が住んで居るような安全な場所が希望です、シャワーかお風呂が付いて居ればさらに良いです」


「大丈夫ですか? そんな良い場所高いですよ」


「セイル、普通の所で良いよ、無理しないで」


「いや、ユリアに何かあったら困るから、安全な場所は譲れないよ」


「そっ、それなら仕方ないか..な」



(そんな話にされたら文句なんか言えないじゃない)



「あの、いちゃつくのは後にしてくれませんか? その条件で良いんですね? 本当に高いですからね?」




紹介された物件に二人で歩いてきた。


成程..冒険者ギルドのすぐ傍で三軒先が衛兵の詰め所..最高じゃないか。


しかも、管理人もいる。


「すいません、ギルドからの紹介で見に来ました、見学させて下さい」



「君達が入居希望者なのかな? 此処は一番安い部屋で月に銀貨8枚からだけど大丈夫?」


「セイル、私達にはやっぱり場違いだよ」


「ユリア、さっきも同じ事言ったけど、ユリアの安全は一番譲れないんだ、僕にとってはそれが一番大事だから」


「だけど、凄く高いよ」


「お金は気にしなくて良いよ、僕が頑張るから、僕は二度とユリアを失いたくない」



私は何処にでもいる女の子なのに..普通の場所だってきっと襲われない...


本当に心配性だよ..だけどこれじゃ文句言えないよ...



「セイルに任せるわ」



「安全なら保証するよ! 此処より安全な場所は上級貴族様のお屋敷レベルじゃないと無い、管理人の私は元金級冒険者だし、此処には非常ボタンも設置している、私で対処出来ないなら直ぐに衛兵が呼べる、見ての通りすぐそこだ!」


「それじゃ部屋を見せて下さい!」


「解った! しかし、奥さんも幸せ者だね、こんな妻想いの冒険者なんてなかなか居ないよ、冒険者なんてガサツな男ばっかりだ」


「いえ、まだ結婚はしていないんです」


「これから、生活が安定したらするつもりです」



「そうかい、そうかい..じゃぁ頑張んな、あと此処は賃貸以外にも分譲している部屋もあるから頑張って稼いで買っておくれ、それじゃ見ておくれ!」



月に銀貨8枚の部屋から金貨2枚の部屋まであった。


だが、どの部屋も素晴らしくシャワー所かお風呂があった。


金額の違いは広さの差だった、僕は別に広さなんかどうでも良い、一番小さい部屋でも2部屋+キッチンがあるんだからこれで良いだろう。


「ユリアは気に入った部屋はあった?」


「私はセイルと余り離れるのは嫌だから狭い部屋で充分だよ!」


「それなら、銀貨8枚の部屋で充分か..すいませんこの銀貨8枚の部屋でお願いします」



「本当に? このレベルの部屋は普通は銀級冒険者~銅級冒険者が借りる部屋なんだけど」


「はい、明日から頑張ります」


「そうかい? 頑張ってね」


前金で3か月分のお金を払い二人で買い物に出かけた。


ベットを二つ買おうとしたらユリアに一つで良いと言われ大き目のベットを一つ買った。


その他、必要な物を家具から一式買って部屋に戻った。


明日には寝具も届くが今日は毛布しかない。



「セイル、明日から頑張ろうね!」


「えっ何を?」


「一緒に冒険するんだよね?」


「冒険するのは僕だけだよ..ユリアは美味しいご飯を作って家を守ってくれれば良いんだ」


「だってさっきパーティーを組んだじゃない?」


「ギルドはお金を預かってくれたり、もし何か問題が起きた場合は家族より先にパーティーメンバーに連絡がくるらしいから登録したんだ」


「そうなの?」


「うん、それじゃ私は何をすれば良いのかな? 私だってセイルの為に何かしたいよ..それじゃ私お荷物みたい」


「それじゃ、奥さんの仕事宜しく」


「おおおお奥さんの仕事?..なななな」


「さっき言ったじゃない? 生活が安定したら結婚するって話..だからそのつもりで此処を守ってくれれば良いんだよ」


「そういうことね?」


「うん、田舎と違って都会じゃ旦那が働いて奥さんが家事をするのが普通らしいから..そっちを頑張ってね」


「そうね、私は料理も得意だしそうさせて貰おうかな!」



ユリアはこうでもしないと体壊しちゃうから、本当は凄く不器用だもんね。



「うん、頑張ってね未来の奥さん」



今日は2人で毛布に包まって眠った。


明日には家具や生活に必要な物が届くこれはユリアに任せて僕は依頼を受けよう。


都会は何でもお金が掛かる。


貰ったお金の1/3が無くなってしまった、僕が頑張るしかない。


「頑張ってね未来の旦那様」


二人で顔を赤くしながら何もない部屋で毛布に包まって寝た。



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