第35話 【閑話】 辛くて嬉しい仕事


ギルドに寄ると目の周りに凄い隈を作った、セシルさんが声を掛けてきた。


「セイル様、査定が済んでおりますのでサロンの方にお願いします」


よれよれと歩く姿が少し痛々しい。



「今回の査定金額ですが金貨1920枚になります」


「そうですか? それなら金貨5枚だけ頂いて残りは口座に入れて置いて下さい」


102体の討伐報酬が金貨1530枚に素材の買取が390枚、買取が1体金貨5枚計算になってないのは切り刻んでしまった為だ。


「畏まりました」


「それで、セシルさん、今日もまた狩ってきたのですが....」


「もしかして、また倉庫でしょうか?」


「はい、宜しくお願い致します」



お金が入るのは凄く嬉しいのですが..また帰れそうもないですね。



倉庫についてセイル様が収納袋から素材を取り出すと..


「うぷっ..」


流石の私も思わず吐き気を催す位に凄かった..としか言えません。


吐かなかった自分を褒めて欲しい位です。


だって..これは素材と言うより魔物とはいえ惨殺死体です。


首だけのゴブリンに首を跳ねられたオーク、オークって体だけ見ると太った人間に見えたりします。


そして、極めつけはオーガです、腸がはみ出ていたり、胴体から切断されています。


これは...騎士団が大規模討伐した後、まさにその状態です。



「ああ明日までにはまた査定しておきますので明日の午後に来て下さい」



セイルさんをどうにか笑顔で送り出しました。


流石にこれは誰かに手伝って貰いたい..ギルマスの部屋に相談にいきました。


「あの、セイル様がまた大量に素材を持ち込まれたのですが..」


「そうか、どれ見て見るか!」


ギルマスは一緒に倉庫に見に来てくれました。


「凄いなこれは、まるで一人で騎士団や小型のクランに匹敵するな..勇者とは凄いもんだ...頑張れよ」



「あの誰かに手伝って貰う訳にはいかないのでしょうか?」


「誰が手伝うかよ..お前は馬鹿か?」


「あのギルマス?」


「あのよ..一回お前が貰う報酬は金貨3枚なんだぞ! これはギルド職員の2か月分の収入だ、それがここ暫く毎日のようにお前に入ってきているんだ、正直皆が羨ましがっている」


「そうですね」


「今日で3回目、金貨9枚、このペースで行くなら2か月もしたらちょっとした家が帝都に買えてしまう...そんな恵まれた仕事をしている奴に誰が手を貸すんだ? なぁSランクパーティーの専属の収入所じゃ無いんだぜ? 1人で頑張るしか無いな、正直言えば俺だって羨ましい」


「そうですか..今日も帰れそうにないですね」


「仮眠室やシャワーがあるから良いだろう..まぁ、本当に無理だったら、専属を手放して「持ち回り」にすれば良いんじゃないか? そうしたら皆が手を貸してくれるぜ? それじゃ頑張れよ」


言われて見ればそうですよね..1日で2か月分の収入が入るのですから当たり前ですね。


金貨がたった1日で貰える仕事、羨ましいに決まっていますね。


その収入を得ている、私を手伝ってくれる人なんて居る訳が無いですね。


だけど...私このままじゃ一生家に帰れないんじゃないかな?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る