第5話 滅びの国の聖女と勇者...

目を覚ますとお城の中に居た。


此処は何処なのかな..お城?



「私のお城にようこそ」


見た事も無い美しい女性が居た。


周りには騎士の様な男たちが沢山いた。


その中にひときわ体格の良いイケメンが居た。



解らない、何故僕は城に居るんだ..



「不思議そうな顔をしていますね..最後のお客様に貴方を選んだのです」


「お客様?」


「はい、私はこの王国の女王にして聖女のビィナスホワイト」


「俺はこの国の勇者ケインビィだ」




「僕の名前はセイルです..あの僕の様な者が王城に招待して貰って良かったのでしょうか?」



「構いませんわ..貴方はわが国の..そう同盟者です..さぁ楽しみましょう」



しかし、この城は男ばっかりだな..女王以外女は居ない。


何をするのかと思いきや..ただご馳走を食べているだけだ。



美味しいご飯を共に食べ、ただ話すだけ、だがそれが凄く楽しい。


1人ボッチだからだ。


このまま楽しい時間が止まってくれればそう思った。



勇者ケインビィは勇ましく..イケメンだ。


ビィナスホワイトは..凄く綺麗で話してて楽しい。



騎士が剣の舞を見せてくれたりした。


全員が勇ましく僕とは違う..彼らは無能とは縁が無い者なんだろうな..



時間は止まらない、楽しい時間は過ぎていく..


「そろそろお開きのようですね..終わりの時間です」



これはきっと夢だ..目が覚めたらまた無能の生活が始まる。



「そうだ、セイル様は何か欲しい物がありますか?」


「宝石でも何でも構わんよ..そうだこの聖剣をやろうか」



これは夢..なら貰える筈だ。



「ジョブが欲しい」



「な..セイル様はジョブが無いのですか」


「マジかよ..」



「はい..」



「人の神は酷い事をしやがる..俺たちの神とは違う」


「なら、女神に問うてみましょう..」




「聖女ビィナスホワイト..今迄良く仕えてくれました」



「偉大なる女神様..私は最後の友人にお礼をしたいのです」


「お礼ですか?」


「はい、結局国は滅んでしまいましたが、私の国の同盟者でした..彼にはジョブがありません、授けて頂けないでしょうか?」



「人の子よ..私は人の神では無い..それでもジョブが欲しいのでしょうか?」



「はい、どのようなジョブでも構いません..頂けるなら何でもします」



「解りました..だが私は人の子にジョブを授けた事はありません..何が起きるかは解りません..覚悟はありますか」


「はい」


「ならば、ケインビィ..貴方のジョブをそちらに..如何でしょうか?」


「構わないぜ...どうせ..」



「解りました..ならケインビィの「勇者」のジョブを貴方に授けましょう」



頭が痛い...



夢に違いない...だけど、聞きたい..


「女神様、貴方のお名前は?」


「神虫と申します..」


この女神様も僕の夢..ケインビィもビィナスホワイトも夢。


だけど、人の女神は僕を救ってくれなかった..だが神虫様は僕を救ってくれた..


なら、夢の女神でも構わない..僕は...彼女を信仰する。




目が覚めた..沢山のドラゴンビィが死んでいた..大きな巣も全部壊されていた。


そのドラゴンビィの中に大きな個体があった..女王蜂だ。


そしてそれに寄り添うように..同じく大きな個体の蜂が居た。



多分、彼らのお陰で見れた夢だ..せめて、弔ってあげたかった。


手で穴を掘った..可笑しい、簡単に掘れてしまった。


まるで手がスコップにでもなったみたいだ。



全てのドラゴンビィを埋めて弔いの意味を込めて手を合わせた。



(夢でも嬉しかった..)



僕の持っているズタ袋から紙が落ちた..


僕の無能の証し..何も書いて無い紙。


もう要らない..そう思い拾った。



嘘だろう..



何も書いてなかった筈の紙に



インセクトブレイブ



「虫の勇者」と書かれていた。


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