第16話 【閑話】 女神の話、無能は..



「女神イシュタ様..久方ぶりに人間界に無能が生まれました」


「だけど今回もきっと殺されてしまうのでしょうね」


「恐らくはそうでしょう、無能には社会が厳しいですから、ですが何故イシュタ様は無能が気になるのですか?」


「私は一度、話してみたいのよ成長した素晴らしい無能と、まぁ叶わぬ夢だけど..」


「そこまで言われる無能とは何者なのでしょうか?」


「良いわ、教えてあげる..新しい神は知らないと思うから..無能とはね完璧な人間の事を言うの!」


「完璧な人間?」


「そうよ、完璧な人間なのよ..何で神がジョブをあげるかは解るわよね?」


「神無しでは生きられない弱い人間を助ける為と聞いておりますが」


「それじゃ、もし神なんて要らない凄い人間が居たらどうかしら?」


「そんな人間いる訳ありません」


「そうね普通は..でも居たらどう」


「ジョブなんてあげる必要は無いでしょうね」



「そうよ..ジョブをあげる必要の無い人間が無能なのよ」



「本当ですか?では、その成長した無能は勇者より強いのでしょうか?」


「弱いわ」


「聖女より回復魔法が使えるのですか?」


「使えない」


「攻撃魔法」


「使えない」


「それでは無力では無いですか?」



「無能のただ一つの武器は知能よ」


「ただ、頭が良いだけでは恐れる必要は無いのではないですか?」



「そうかしら、創造神が使う「破壊の雷」なんか比べ物にならない位の武器を作れたら? 空の神なんか一瞬で抜き去る飛行物を作れたら?」


「そんな夢物語あるわけありません」



聞いた話は夢物語だった。


空を飛ぶ鉄の塊..一瞬で小国を滅ぼす武器...どれもこれも信じられない物だった。



「神々が滅ぼされていく..」


「安心なさい..これは別世界の話、この世界じゃない..しかも一人の無能じゃこんな事は起きない..万単位で無ければね..それも長い年月を掛けての話よ」



「安心しました」



「だけど、無能にスキルは要らないわ、恐ろしく頭が良いんだから、何もあげなくても自分でどうにかしちゃうから」


「どうにかする?」


「そうよ、敵わないと思ったら工夫する..今ある銃という武器あるでしょう?」


「あります」


「あれは勇者を倒す為に無能が考えたのよ..勇者には敵わず殺されたけどね..今あるのはそれを模して後世の人が作った」


「あんな武器をですか」


「薬草や回復薬あるじゃない? 教会で祈れば治るし、ヒーラーが杖を使えば治るのになんで必要なのかしら?」


「確かに不思議です」


「魔法が使えない無能が考えたのよ...生きる為に」


「確かに、そんな頭がいいならそれ自体が「無能」という名のジョブですね」



「その通りだわ..これは人の神では禁忌だから出来ないけど、そんな無能にジョブを与えたらどうなるのかしら?」


「そんな物騒な事を」


「面白いと思わない? どれ程強い人間になるのか?」


「どうなるのでしょうか?」



「知識の神ペトロによるとね...」


「(ゴクリ)」



「多分、農夫とか街人みたいな低いジョブでも、最上級ジョブの勇者が負けるって言っていたわ..もし、剣士レベルを与えたら軍神でも危ないって」



「神に並ぶのですか?」


「2回戦えばの話..初見じゃ意味は無いわ..流石の無能も研究しなければ意味無いからね..まぁその前に人の神の全てが無能に絶対にジョブはあげないから、もしもの話だわ」


「そうですね..安心しました」




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