第22話 【閑話】 虫の女神の衰退
私の名前は神虫、一応は虫の女神をしている。
だが、虫の女神と言われてこそはいるが私を信仰している虫は少ない。
その理由は虫の多くが「邪神」を信仰する事を覚えてしまったからだ。
私のあげる、ジョブは強力ではありません。
例えば、ケインビィが持っていた「勇者」であっても山犬にすら負けるでしょう。
所が魔族が信仰する邪神が彼らに与える物は強力です。
ただの芋虫が、邪神を信仰する事によってジャインアントキャタピーに進化しました。
僅か6㎝の芋虫が1.5mの大きさを手に入れたのです。
その凄さが解ると思います。
その大きさになれば、山犬はおろか、猪や熊に対抗できるのです。
私を信仰してくれる虫には、ジョブは必ず与えていますが、そのショボさから今現在は信仰する者は殆どおりません。
心から私を信仰する者は、ケインビィとビィナスホワイトが最後かも知れません。
私に祈り、私が勇者と聖女にした者が王国ごと潰されたんですから、更に信仰が無くなるのも無理はありません。
やはり、虫は小さいからどの様なジョブやスキルを与えても大きな者には勝てないのです。
邪神が彼らに与えたようにジョブではなく「巨大化」を与えなければいけなかったのです。
私はセイルさん、貴方に謝らなくてはいけないのかも知れない。
貴方には「勇者」のジョブの他に実は罪ぼろしを兼ねて「聖女(人)」のジョブも与えました。
それでも恐らく貴方が思っている「人の女神」が与えるジョブより遙かに低いと思うのです。
ビィナスホワイトの聖女の力があれば、鍛え上げれば、胴体が切断されようが、潰されようが、手足が無くなろうが一瞬で治す事が出来ます。
ですが、所詮は虫なので大きさの暴力には勝てないのです。
ケインビィの勇者の能力があれば、鍛え上げて行けば能力が500倍まで向上します。
ですが、僅か50gの虫がその力を手に入れても25キロの物が投げ飛ばせるだけです。
ケインビィ程に勇者のジョブを使いこなせても山犬と戦うのが限界で恐らく猪にも勝てないでしょう。
本当に自分が嫌になりました。
「巨大化」を与えられない時点で私は虫の女神失格です。
どうやっても強くしてあげられない。
だから、私は貴方にお詫びの意味で幾つかのスキルもあげました。
虫の魔物に遭った時に命乞いが出来るように「虫との意思疎通」
弱いジョブの貴方が少しでも生き残れるように「他の虫の能力を身につける事が出来る能力」
そして、ケインビィとビィナスホワイトの知識です。
「聖女ビィナスホワイト..今迄良く仕えてくれました」
「偉大なる女神様..私は最後の友人にお礼をしたいのです」
「お礼ですか?」
「はい、結局国は滅んでしまいましたが、私の国の同盟者でした..彼にはジョブがありません、授けて頂けないでしょうか?」
「人の子よ..私は人の神では無い..それでもジョブが欲しいのでしょうか?」
「はい、どのようなジョブでも構いません..頂けるなら何でもします」
「解りました..だが私は人の子にジョブを授けた事はありません..何が起きるかは解りません..覚悟はありますか」
「はい」
「ならば、ケインビィ..貴方のジョブをそちらに..如何でしょうか?」
「構わないぜ...どうせ..」
「解りました..ならケインビィの「勇者」のジョブを貴方に授けましょう」
セイル、貴方は「勇者」というジョブを聞いて喜んでいましたね?
ですが、私が与えたジョブは本当にクズなのです。
「女神様、貴方のお名前は?」
「神虫と申します..」
貴方が凄く私に感謝してくれた事が解りました。
ですが、私が与えたジョブは恐らく貴方の期待通りではありません。
私を最後まで信仰してくれた者の願いに、この程度の事しかしてあげられない私を許して欲しい。
私はこれから天界に帰り、この世界に関わる事を辞めます。
信者も救えない無能の女神なんて意味がありません。
だから、私がジョブをあげるのは貴方が最後です。
こんな弱い力では生き抜くのは辛いでしょう..それでも、それでもです。
貴方には強く生きて欲しいのです。
神虫
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