第51話 【第三章スタート】 勇者再生①

ホーリーを連れて家に帰ってきた。


緊張する...これならマモンを前にした方がまだましだ。


「結構良い場所に住んでいるのね?」


「結構、討伐頑張ったからね..」




《どう説明しようか...》




「どうかしたのかしら? 何故すぐに入らないの?」


「ちょっと待って! 腹を括るから」


僕は何回か深呼吸をすると恐る恐るドアを開けた。



「お帰りなさいセイル!」


「ただいま」


ユリアと目が合った。



「あの、セイル...その人がホーリーさん?」


「そうだよ」



ユリアはホーリーをじっくり見ると..


「駄目だよ、セイル、ちゃんと気を付けてあげないと」



「えっ」


「女の子をそんな恰好で歩かせちゃ可哀想だよ?」





何が何だか解らない。


てっきり二人で暮らすと思っていたのに彼女持ち? なにこれ?


「どういう事かしら?」


「そんなに驚かないでも良いよ..約束した通りだよ、僕は君の体を治す、その代わり君は僕が居ない間ユリアを守る..それだけだよ」


「そうね、そう言えばそういう約束だったわ」





二人きりで生活できる訳じゃ無かったわ..そう言えば


「もし、僕がその体を治したら、大切な者を守る為に力を貸してくれるかな?」


「本気なの?」


うん、そういう約束だった。


「所で、その子はどんな訳ありなの? 勇者の力が必要な程、何かに狙われているの?」



「私は只のお針子だよ..はははっ誰にも狙われていないよ..そうだちょっと女の子の話をするからセイルは席を外してくれる?」


「それじゃ、丁度良いから夜まで出かけてくる」


「そう..いってらっしゃい」


「行ってきます」



私は、セイルが凄く私に対して心配性な事を話した。


その理由も含んで。


「そうか、村でそんな事があったのね、だけどもう何も問題は無い筈よね?」


「そうなんだけど、それが元で凄く心配性になっちゃったのよ」


「だけど、それじゃ私は体を治して貰う対価に何をすれば良いのかしら?」


「そうね、もし体が治ったら、家事でも手伝って遊んでいれば良いんじゃない?」


「それで良いの?」



「その前に..その体大丈夫なのかな?」


「大丈夫じゃない..多分、私は殆ど寝たきり状態に近い..少し歩けるけど、見ての通り、下の事すら不自由なんだ」


「見ても良い!」


「どうぞ」


見ても気持ち悪いだけだ..だけどお世話になるんだ..見せない訳にいかないな。


ユリアが見た物は足は正しい方向からずれていて、腰も変な方向に曲がり、胸も片側が潰れている..生きているのが不思議な状態の体だった。


しかも、それに全身に傷があり、所々肉がえぐり取られていた。


「どう?驚いたでしょう」


「お風呂はは入れる?」


「傷に沁みるし..体が熱を持っているから無理だと思う..ごめんね、騙したみたいで..だけどもう自分一人じゃ生きられないの..だから私は貴方を守るなんて出来ないと思うわ...ううん、騙したの、ごめんなさい」


「多分、セイルはその位、知っていたと思うよ!私もセイルも人見知りで、結構寂しがりやだから、もう一人位仲間が居てもいいと思う」


「そう..ごめんね」


「良いって、治らなければ治らないで友達になってくれれば良いわ..まずは女の子なんだから綺麗にしなくちゃね」



お湯を沸かして体を拭いてくれた。


下の方まで全部..多分こんな世話なんて家族じゃ無くちゃしてくれない。


まぁ孤児だった私はその辺りは想像だけど...暖かい。



綺麗なお湯が汚い土色になると入れ替えて何回も拭いてくれた。


髪もぬれタオルで蒸すようにして拭き上げてくれた..凄く気持ちが良い。


服も自分の着ている物から貸してくれて..


「えっと、それは何?」


「オムツだよ...流石に垂れ流しはね..」


「そうね..ごめんなさい」


「良いって」



「あのさぁ...そう言えば、セイルて名前..聞いた事があるんだけど..」


「そりゃあると思うよ..勇者だもん」


《勇者、あのマモンを追い払っていうあの勇者の名前だ》


「そうだったんだ、勇者だったんだ..私とは違うね」


「そうでも無いよ..最初二人で逃げようかな? なんて言ってたんだから」


「そうなの?」


「うん、金級になってなければ逃げていたよ」


《怖くない、そういう訳じゃ無かったんだ》


「それでも凄いよ」



正直、最初見た時に「冴えない子」そう思ったわ..


だけど、この子真面目に天使だ。


もし、奇跡が起こって体が治ったら、約束は守るわ。


ちゃんと守ってあげる..本当に守ってあげたい、この子は本当にそう思える人だから




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