第38話 マモン襲来①

その日は朝から様子がおかしかった。


何故だか、門番も緊張している気がした。


「どうかしたのですか?」


「セイルには話しておいても良いかもな、剛腕のマモンが帝都に向ってきている..そういう噂があるんだ!」


「あの、魔族四天王のマモン..何故ですか?」


「剛腕のマモンは強い奴と常に戦いたがっている、ここ帝都は強い者が尊敬される、だからかも知れない」


「帝都には詳しくないのですが、戦って勝てますかね?」


剛腕のマモンは知っている。


子供の頃、悪い事をすると「マモンが来るよ」と良く大人が言っていた。


躾に使う程怖い、存在なのだ。



「帝王様が英雄クラスと言われるが、もう全盛期を越えている、流石にマモンの相手は無理だな、手練れの騎士でもまず無理だろう」


「それじゃ、誰も敵わないですね」


「....お前が居るじゃないか?」


「僕ですか?」


「勇者だろう?」


「無理です、無理です..それこそ、昔の勇者ケインみたいに殺されて吊るされちゃいます」


「冗談だ、いかに勇者のジョブがあっても15才じゃな、解っているさ..流石にそんな子供に期待はしてないよ」



剛腕のマモンか、恐ろしいな、帝都に来たら...逃げよう。



「それで、何時マモンは来るか検討はつきますか?」


「さぁ、そこまではまだ解らない、まだ向かってきている、それだけで来るかどうかも解らないんだ」


「来るとしても、直ぐでは無さそうですね」


「流石に今日、明日では無いだろう」


「安心しました」





保険の為に幾つかまた新しい虫の力を身に着けた方が、良いかも知れない。



もしマモンが来たら、そう考えたらユリアの事を考えると、今日は遠くまで行かない方が良いだろう。


街道沿いの一番近い森を今日の狩場にした。


この辺りじゃ小物が少数しか居ないけど仕方ない。


片っ端からゴブリンを狩りながら..虫を探した。


虫探しが7割で討伐が3割。


やはり、僕は虫に嫌われているのだろう!


1種類の虫しか見つからなかった。



見つけた虫は「アーマードシールドインセクト」だった。


特に挨拶とかはしていない、ただ様子を見てその能力を貰った。


その後見つかったが、恐らく僕の姿の中に彼らの特徴が混ざったからか、普通に挨拶して去っていった。



ユリアが心配だからそのまま帝都に戻った。



ギルドに帰ると、セシルさんが死んだような目でこちらを見て走ってきた。


「セイル様、査定が済んでおります」


そのままサロンに行った。


「ゴブリンが80で1体辺り銅貨5枚ですので金貨4枚 オークが40体で1体当たり銀貨2枚ですので金貨8枚 オーガが1体辺り金貨7枚で20体で金貨140枚 合計で金貨152枚 それに素材の買取でオークの肉が銀貨3枚×40で金貨12枚 オーガの角が金貨3枚で20体で金貨60枚 総合計金貨224枚になります」


「やっぱりバグベアー程実入りは良く無いのですね」


「バグベアーは狂暴ですから...オーガ―より数段上になります、本来はその間に幾つかの魔物が居ますが、この辺りには居ませんね、今日はこの後ギルマスから説明がありますから、暫くお待ちください」


「解りました、ですがその前に今日の分の買取をお願い致します」


「また、倉庫でしょうか?」


「いえ、今日は不穏な話を聞いていたので、近くの森に居ました、だから少ないです」


僕は収納袋から素材を取り出した。


ゴブリン..40で金貨2枚..


「あっ、この位なら簡単に査定させて頂きます..素材の買取は無いので金貨2枚ですね..お金のご用意とギルマスを呼んできます」


「はい」



「お待たせしました、まずは報酬の金貨2枚を受取って下さい」


「はい、確かに」



「おめでとう、セイルこれで金級に昇級だ、ミスリル級以上の者は帝都には居ないで点々としている者が多い..街に居ついている冒険者としては最高峰だ」


「金級だとどんな特典があるのですか?」


「貴族エリアの土地の購入権がある位だな、まぁ家を借りる時のお前の拘りから言えば良い特典じゃないかな?」


「他には?」


「本来なら、依頼の特典があるが此処帝国では誰でも自由に階級に関係なく受ける事が出来る、だから無い..だが他の国に行った時には必要となる」


「それで義務もあるんでしょう!」


「ギルドや王族からのお願いがあるな」


「それは断れるのですか?」


「....実質無理だ」


「すみません、昇級を断っては駄目でしょうか?」


「何を言っているんだ、特別昇級だぞ! しかも帝王様にまで話は上がっているんだ、断れないな」


「何故、帝王様まで話が」


「この国の帝王様は強い男が好きだ、だから強い冒険者の話は把握している」


「まさかと思いますが マモンに僕をぶつける気じゃ無いでしょうね?」



目が泳いだな..



「それは無い、お前一人で相手が勤まるとは思えない、大丈夫だ」



1人で..何か引っかかる。



「もしかしてマモンが来る事は確定したのですか?」


「すまない、確定した、だが大丈夫だ..帝王がミスリル級の冒険者や勇者のジョブ持ち数人に、依頼を出した、セイルは貴族エリアの門を守ってくれれば良い」


「何だか、騙された様な気がするな」


「時期が時期だ、そう思われても仕方ない、だが俺はお前が本当に金級に相応しいと思ったから推薦した、そして他の者も相応しいと思ったから決まった、それだけだ」



「解りました、その代わりもしマモンが来たらユリアの貴族エリアへの避難、その条件を飲んで頂けるなら..飲みましょう」


「解った、俺はこれでも爵位持ちだ、もしその時がきたら、家の屋敷へのユリアの避難を約束しよう、臨時の貴族エリアの通行証も出そう..これで良いか?」


「解りました、受けさせて頂きます」


「なあに、大丈夫だ、もしマモンが来ても、お前の前で方がつく..お前の所まで行くときはこの国の終わりだ」



「それなら..」



いきなりサロンのドアが開かれた、このサロンは「特別扱い」..話の途中でドアが開かれる事は無い。



「ギルマス、大変だ、マモンがマモンが現れました」



ギルマスやセシルの顔色が変わった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る