脱げ落ちるスカート
翌日、特になにも気にせずに教室へ向かうと、なにやら教室内がザワザワしていた。
「あら、おはよう」
「お、おはようございます!」
どうして桜橋先輩が俺の教室に⁉︎
「お茶しましょ?」
「な、なんか怒ってます?」
「なぜ?私が怒るはずないじゃない」
「な、ならいいんですけど」
昨日、あんなに明るく話す姿を見たからか、いつもの凛とした冷めているよな表情と喋り方だと怒っているように感じてしまう。
「か、会長」
「あら美山さん。なにかしら?」
「今からお茶だと、朝のホームルームに遅れちゃうと思います」
なんだ美山!俺を助けてくれるのか⁉︎いいぞ!なんとかしてくれ!
桜橋先輩は無言で美山を見つめ続け、美山が一歩後ろに下がった時、桜橋先輩は一歩前に出た。
「それは心配?愛?」
「あ、愛⁉︎」
「美山さんのその行動は、どのような感情からきたものなのかしら。愛故?美山さんも胸を揉んでもらったの?」
「‥‥‥も?」
「桜橋先輩!それじゃ俺が桜橋先輩の揉んだみたいじゃないですか!」
美山⁉︎どうして睨むんだ⁉︎
美山どころか、クラスの男子全員が俺を睨んでいた。
「なにか問題があるのかしら」
「ありありですよ!もうお茶行きますから、何も言わないでください!」
「分かったわ」
このまま教室で話していたら、変な誤解されてしまう!
みんなに睨まれながら教室を出て、桜橋先輩と一緒に生徒会室へやってきた。
「今日こそ揉んでくれるわよね!」
「揉みませんよ‼︎それに、みんなの前で変なこと言わないでください‼︎」
「愛は変なことじゃないわよ」
「本当に桜浜学園の生徒会長ですか⁉︎常識無さすぎますよ!」
「あはは!そうなのかしらね!」
笑い事じゃねー‼︎‼︎‼︎にしても、みんなが居ない時は明るい性格になるのはなんなんだ。
「でも、揉んでくれないのなら、録音した音声流すけれど」
「それだけは勘弁してください!」
「なら揉みなさい?」
「あの、他の生徒にも同じことしてるんですか?」
「双葉くんが初めてよ?愛は一途で素晴らしいものらしいから、最初で最後ね」
「もっといろいろネットで調べてくださいよ」
「そうそう!調べたのよ!」
「嫌な予感しかしないんですけど、大丈夫ですよね」
「愛している人には素肌を見せるものらしいわ!双葉くんに裸を見せれば、愛を感じられるかもしれないわ!」
「なに考えてるんですか!」
「私に触れるのがそんなに嫌なら、こっちの方がいいじゃない。双葉くんは見るだけなのよ?」
「恥ずかしくないんですか⁉︎」
「恥ずかしいに決まってるじゃない。でもきっと、この気持ちも愛に繋がるのよね」
桜橋先輩はそういって、スカートのチャックを下ろし始めた。
「ストップストップ‼︎」
「なによ」
「ここ学校ですし!」
「ネットでは、学校でだと燃えるって書いてあったわ」
「どんなサイト見てるんですか!いいですか?桜橋先輩はいろいろ間違った考えをしてるので、俺がちゃんと教えます!」
「愛を教えてくれるのね!」
そんなキラキラした目で見ないでくれ〜!
「いや、そういうことじゃないです」
「え?」
「桜橋先輩はお金持ちの娘で、あまり人と関わってきたことがないんじゃないですか?」
「そうね」
「だから、生活するための常識はあっても、人と関わっていくうえでの常識がまるでないんです!」
「んー、そうなのかしら?」
「そうですよ!」
その瞬間、バサっと桜橋先輩のスカートが脱げてしまい、白生地にピンク色の小さな花が沢山プリントされた、これまたイメージと違う可愛らしい下着を見てしまい、とっさに目を閉じた。
「は、早く履いてください!」
「見られたのに、恥ずかしいだけで何も感じなかったわ。愛って難しいのね」
「本当に恥ずかしがってます⁉︎声からは全然感じませんけど!」
布擦れの音がして、チャックを閉める音が聞こえてゆっくり目を開けると、桜橋先輩は頬を赤くして少しだけ俯いていた。
「恥ずかしがるのもおかしいですからね⁉︎さっき裸を見せようとしたんですから!」
「わ、分かってるわよ!」
可愛いからいいけどね‼︎
「それに私は恥ずかしいって言ったわよ!」
「分かりましたから怒らないでください」
「ふん!」
頬を膨らませてそっぽを向く桜橋先輩を見て思った‥‥‥桜橋先輩って‥‥‥全然怖くねぇ‼︎‼︎やっぱり勝手なイメージで決めちゃダメだな。
「とにかく、教室には来ないでください」
「私は生徒会長よ?」
「来るならもう会長とは話しません!」
「やっぱりあれね。双葉くんを拘束して、裸を見せながら、私を愛すと言うまでグリーンピースを大量に食べさせるしかないわね」
「なんですか、その天国と地獄をいっぺんに味わえる拷問。考えた人天才っすね」
「だって私、生徒会長だもん!」
「なんでちょっと嬉しそうなんですか!とにかく俺は戻ります。遅れたら美山に怒られそうな気がするので」
「私より美山さんを選ぶのね」
「いや、そういうわけじゃ」
「世の中には奪って獲るというやり方があるわ。双葉くんから愛を奪って、双葉くんには私しか居ないという状況を作り出すことなんて簡単よ?」
「あ、はいはーい。さよならー」
「ちょっと!私の扱い雑になってるわよ!」
「だって思ったより怖くないんですもん!」
「そ、そうなのね」
桜橋先輩はまたそっぽを向いて、指で毛先をいじりながら、嬉しそうな顔をしている。
普段から今みたいな人なら、告白もバンバンされて、愛してくれる人もいるだろうに。
「そういえば美山から聞いたんですけど、告白されて無言で相手を泣かせたって本当ですか?」
「本当よ。興味がなかったから」
「こんなに愛を欲しがってるのに⁉︎」
「あの頃は双葉くんも一人で、私と同じような人がいるってだけで救われていたのよ」
「そ、そうなんですか。それじゃ戻りますね」
「またね」
やっと教室に戻って席に着くと、美山は机にバンッと手をついて話しかけてきた。
「さっきのどういうこと?」
「な、なにがだ?」
「会長の揉んだの?」
「誤解だよ!てか、なんで美山が怒るんだよ」
「怒ってない!」
「怒ってますよ⁉︎」
「それよりさ」
「え、なに」
「昨日誕生日だったよね」
「おう」
「なにもできなかったから、今日の放課後どこか行かない?今日お小遣い貰ったし!」
「いや、いい」
「せっかく誘ったのに!」
放課後に2人でどっか行ったら、また男子生徒を敵に回すし、それに金持ちのお小遣いって幾らだよ、10万ぐらい?
「めんどくさいからいいよ」
「とか言って、本当は会長と約束でもあるとか?」
「なんで桜橋先輩が出てくるんだよ」
「教室にまでお茶の誘いくるとか、実は付き合ってる?」
「ないないない!ちょっと愛をっ」
やべっ。
「愛?」
「いやー‥‥‥」
「教えなさい!」
「いてててて!」
頬を引っ張られて痛みのあまり、正直に話すことにした。
「話すから!」
「うん。聞かせて」
「桜橋先輩は愛を知りたがってるんだよ」
「どういうこと?」
「知りたがってっていうか欲しがってる?怖いイメージのせいで誰も寄ってこないから寂しいみたいなんだ」
「だからって、文月くんには関係なくない?」
「桜橋先輩からすれば、俺は嫉妬の対象だったみたいなんだ。今は‥‥‥変わったみたいだけど」
「結局会長はどうしたいの?」
「最終的には俺と結婚することが目的みたいだけど、別に俺を好きとかじゃないみたいだし、よく分かんない」
「‥‥‥」
「美山?」
美山は、美山が立ってる場所にだけ氷河期がきたかのように、瞬きもしないで固まっている。
「どうしたんだ⁉︎」
「放課後約束ね」
「話聞いてた⁉︎」
美山は何故か放心状態で自分の席に戻って行った。
そして放課後になり、結局美山と一緒に学校を出た。
「どこ行くんだ?」
「リサイクルショップ!前に、フィギュア集めが趣味の一つって言ってたでしょ?だから一つ買ってあげる!」
「いや!いいよ!」
「いいの!誕生日だったんだから!」
買ってもらうにしても、箱無し500円とかの一番安いやつ選ぼう。
そんなことより、さっきから桜橋先輩がコソコソと付いてきてる‥‥‥今までも、あんなに電柱から丸見えでストーカーしてたのかな。逆になんて気づかなかったんだろう。
「どうかした?」
「い、いや。なんでもない」
しばらく歩いてリサイクルショップに着き、2人でフィギュアコーナーにやってくると、美山はワクワクした様子でフィギュアを眺めだした。
「凄いね!いろんなのがあるんだね!」
「そうだな」
てか、やっぱりこの状況異常だよな!こんな可愛い人と一緒に買い物⁉︎これ、デートっていうんじゃねーの⁉︎いや、2人じゃないか。桜橋先輩も遠くから見てるし。
「どれが欲しいの?」
「本当にいいのか?」
「もちろん!友達の誕生日はお祝いしなきゃね!」
「それじゃ、この500円ので」
「500円⁉︎そんなに安いの⁉︎」
「幾らだと思ってたんだ?」
「10万あれば大丈夫って考えてたから」
「おい金持ち。普通の人は500円の買い物もそこそこ悩むんだぞ」
「そうなの?500円ならもっと買っちゃいなよ!」
「いいって!これだけでいい!」
「あのショーケースに入ってるの7万円だよ?クオリティーも凄いし、あれじゃなくていいの?」
思わず唾を飲んだ。俺が好きなキャラクターの高額フィギュア‥‥‥大人になったらいつか買えるだろうと思いながらもプレミアが付いていって絶望していたフィギュア!今なら手に入る‥‥‥
「遠慮しなくていいよ?」
「‥‥‥いや!大丈夫だ!500円の一つでいい。ありがとう」
「分かった!」
その時、桜橋先輩が俺達の視界に入った。
「このショーケースのフィギュア、全て買うわ」
「全部ですか⁉︎」
「お金はあるわ」
「か、かしこましました!」
「会長⁉︎」
「あら、美山さんと双葉くんじゃない。貴方達も来ていたの?」
「は、はい」
知ってたくせに白々しい!とりあえず気付いてなかったふりしてあげよう。
「桜橋先輩もフィギュア買うんですか?」
「双葉くんへ誕生日プレゼントよ。愛を与えてもらうには、それなりの対価を支払うべきだと思ったのよ」
「え⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎これ全部⁉︎」
「て、店員さん!隣のショーケースのフィギュア、全部買います!」
「美山⁉︎」
「それじゃ私は、その隣のも買うわ」
「その隣のも!」
「全て買うわ」
「か、かしこまりました〜‼︎」
金の殴り合いだ‼︎どうしてこうなった⁉︎
「そ、そんなに貰っても置く場所ないですよ!」
「そっ。それなら7万円の一つでいいわ」
「かしこまりました!」
何故だか分からないけど、美山が怒っている気がする‥‥‥
「双葉くん、受け取るからには、これからも私に付き合うのよ?」
「‥‥‥はい」
「ちょっと!受け取るの⁉︎私にはあのフィギュア断ったじゃん!」
「そ、そうだけどさ」
「んじゃもう買ってあげない!帰る!」
「み、美山⁉︎」
美山は怒って帰ってしまった。
「双葉くん」
「は、はい」
「愛を失ってしまったわね」
「桜橋先輩のせいですよ⁉︎」
「大丈夫よ。これからは私がいるじゃない!私達はもう1人じゃないわ!」
「そういう問題じゃないです!本当アホっすね!」
「‥‥‥アホじゃないもん‥‥‥」
「そんな子供みたいにいじけないでもらえます⁉︎」
「あっ、そうだわ!」
「なんですか?」
桜橋先輩は髪を耳にかけて、俺に耳を向けた。
「舐めて」
「なに言ってるんですか⁉︎」
「愛し合っている2人は、体を舐めたりするそうよ。まずは耳から責めると書いてあったわ」
「だーかーらー!記事の一部しか読まないで分かった気にならないでください!やってることヤバイですからね⁉︎」
「それじゃ私が舐めるわ」
「はい⁉︎ちょ、ちょっと!」
桜橋先輩に体を掴まれて耳に顔が近づき、桜橋先輩の息遣いが耳に当たる。その時、ギリギリのタイミングで店員さんがやってきた。
「あ、あのー、お会計の方を‥‥‥」
「そうね。双葉くんは入り口で待ってなさい」
「はい」
焦った〜‼︎一気に汗かいた‼︎桜橋先輩いい匂いするし!あんな美人に顔近づけられたら死んじゃうよ‼︎生きてるけど‼︎キスもやばいのに舐められたら、もう理性なんて保てる自信がない‼︎
それから数分後、会計を済ませた桜橋先輩が店を出てきて、笑顔でフィギュアを差し出してきた。
「お誕生日おめでとう!」
「本当にいいんですか?」
「もちろんよ?そのかわり明日、さっきの続きをしましょう」
「んじゃ受け取らないでおきます!」
「せっかく買ったのに、いらないの?」
「欲しいですけど‥‥‥」
「私、これから用事があるから帰らなければいけないの。とにかく受け取りなさい」
無理矢理フィギュアを持たされ、桜橋先輩はスタスタと歩いて帰ってしまった。
「凄いの貰っちゃったよ‥‥‥」
そして翌日学校に行くと、美山が買ってあげると言ってくれていた箱なしのフィギュアが下駄箱に入っていて、やっぱり優しいなと、気持ちがほっこりした。
「ヒッ!」
「あまり分からないわね」
「な、なにしました⁉︎」
フィギュアを手に取った瞬間、右耳にヌルッとした感触を感じて振り向くと、桜橋先輩が立っていたが、質問すると淑やかに笑みを浮かべて、どこかへ行ってしまった。
俺‥‥‥今舐められた⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎
「み、美山⁉︎」
美山は顔を真っ赤にしてドスドスと近づいてきて、ムッとした表情を見せた。
「今なにしてたの?」
「いや、よく分からん。それよりありがとうな」
「え、あ、うん!」
「大事にするよ!」
「でも、会長が買ったやつより安いよ?」
「値段より気持ちだし。美山は誕生日いつなんだ?」
「6月9日。もう終わったよ?」
「それじゃ、来年はなにかお返しするよ」
「本当⁉︎楽しみにしてる!」
「おう」
なんで美山は俺と仲良くしてくれるんだろうな。でも美山が俺以外の人と仲良く話してるのって見たことないような‥‥‥
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