変態な先輩が俺と結婚しようとエッチな誘惑をしてきます‼︎

偽りの愛哀愛哀

桜橋先輩の反応を見るに、なにかを知っているのは間違いないけれど、桜橋先輩は言わないと言ったら絶対言わないタイプだ。

「やめてはないんですよね」

「それはないわ。安心して？」

「それならとりあえず良かったです」

「‥‥‥来たわね」

「え？」

朝から廊下が騒がしくなり、桜橋先輩が見る方を振り向くと、身長150cmぐらいの透き通る綺麗な白髪のロングヘアーで、真っ白な制服を着た二人組がこちらへ向かってきていた。

「エレナ姉様は」

「相変わらずダメね」　

「でもでも」

「情報を手に入れるには」

「ちょうど良かった」

なんだあの二人‥‥‥

「一花姉様」

「お久しぶりです」

「ユク、ユネ、久しぶりね」

もしかして噂の双子か⁉︎二人ともそっくりだし、やっぱり桜橋先輩の目に似てるかも‼︎

「この日を」

「待ってました」

「一花姉様が」

「生徒会長じゃ」

「なくなる日を」

一つの言葉を二人で喋る異様な光景に、謎に鳥肌が立つ。

「貴方が」

「双葉文月さん？」

「は、はい。そうです」

「嫌い」

「貴方」

「嫌い」

「いきなり嫌いとか言われても‥‥‥」

「二人は」

「結ばれない」

「結ばれては」

「いけない」

「‥‥‥桜橋先輩！この二人超能力者です！お互いに言いたいことを全部理解してます！」

「二人で一人の意味が分かったんじゃないかしら」

「そういうこと⁉︎」

「会話も半分、食事も半分、全てが半分なのよ」

「双葉文月さん」

「はい？」

「美山杏奈さんを」　

「知っていますね？」

「そりゃ知ってるけど」

「ユク！ユネ！なにをしたの！」

「登校するように」

「言ってあげただけです」

「なぜ？」

「一花姉様と」

「双葉文月さんが」

「そう望んでいるからです」

この二人がなにを考えているのか全く読めない。

「それでは」

「また」

二人はそう言って、一年生の教室に入っていった。

「桜橋先輩？」

「‥‥‥」

「先輩！」

「はっ！な、なに？」

「大丈夫ですか？」

「えぇ。あの様子だと転校してきたのね」

「制服違いましたけど」

「あんな制服の学校はそもそも存在しないわ。あの二人と会話していると、二人で一つのことを話すから、どんどんなにがなんだか分からなくなるの。それで先生も許可してしまったんでしょうね」

「なるほど‥‥‥美山を呼ぶってこと、読んでました？」

「予想外よ。私にもあの二人が何を考えているのか分からないわ」

「あの二人が警戒してるのはきっと桜橋先輩だけです。俺には舐めてかかって来るはずなので、俺が強気でいれば大丈夫です」

「私‥‥‥」

「どうしました？」

「いや、あの二人に勝ったら、またデートしてくれる？」

「もちろんです！」

「ありがとう！とにかく今は、美山さんが来たら、あの二人になにを言われたか聞き出してほしいわ」

「分かりました」

そしてお昼になり、教室から一人で門を眺めていると、のんびり歩きながら登校してくる美山が見えて、急いで昇降口に走った。

「美山！」

「文月くん⁉︎」

「教室から見えたからさ。なんで休んでたんだよ」

「私がいると、一花先輩がいなくなっちゃうから」

「は？意味わかんないぞ。それより、ユクとユネって二人に会ったか？」

「会った！なんで知ってるの？」

「その二人は桜橋先輩の従姉妹なんだけど、今日、桜浜学園に転校してきたんだ」

「そうなの⁉︎でもあの二人、すごい優しかった！」

「なに言われたんだ？」

「文月くんが待ってるって！私がいないとダメなんでしょ？もう、一花先輩のことは好きじゃなくなったって！」

あの二人‥‥‥俺がここで『それは違う』なんて言えないところまで読んでそうだな。

そんなこと言ったら、美山はまた学校に来なくなっちっまう。考えろ‥‥‥

「さっき、美山がいると桜橋先輩がいなくなっちゃうとか言ってたけど、あれはなんだ？」

「前にも似たようなことがあったから話すね」

「おう」　

「一花先輩は、文月くんと付き合うことになれば日本に留まるけど、そうじゃなかったら、卒業後は海外留学するみたい。学園祭の時の手紙に、海外留学が決まりましたって書いてあったら、そのつもりなんだと思う」

「それを阻止しようと思って休んでたのか？」

「うん！だから‥‥‥ユネちゃんとユクちゃん、あの二人は嘘つき。文月くんがそんな簡単に好きな人を変えるわけない！」

「わ、分かってるのか」

「でもいい人だとは思う。なんかそんな気はするの」

「そうかな？」

「とにかく私は今日、淡い期待で登校してきた最低女！一花先輩と会えなくなるのは嫌なのに、嘘って分かりながらも、文月くんが振り向いてくれるかもって思っちゃった最低女！」

「自分のこと最低とか言うなって」

「最低なの。だからこのけじめは自分でする。あの二人が転校してきたなら好都合！」

「なにする気だ？」

「文月くん！私と付き合って！」

「は、話がまったく分からないんだけど⁉︎」

「期間限定で彼女にして。あの二人はエレナちゃんみたいに、一花先輩と文月くんを引き離すのが目的なんでしょ？」

「まぁ‥‥‥」

「計画通りに進んでると思わせておいて、ここぞという時に、計画に狂いを出させるの」

「上手くいくか？」

「分からないし、一花先輩にも偽りの付き合いってことがバレないようにした方がいいから、悲しむ顔を見ることになるかもしれない。それでも協力してほしい」

それで色々解決するなら‥‥‥

「‥‥‥分かった。やろう」

俺が決断すると、美山は堂々と俺に抱きつき始めた。

「この件が終わったら、一緒に謝ろう？」

「そうだな」

「そして文月くんは、一花先輩にちゃんと告白すること」

「考えておく‥‥‥」

「ダメ。そういうところは嫌いだよ」

「美山に初めて嫌いとか言われたな」

「これ以上曖昧にしたら、私は最低らしく、このまま文月くんを自分のものにしちゃうからね」

「そ、それは困る」

「よろしい！」

「でもあれだ」

「なに？」

「俺が生徒会長になって、美山を救う約束は忘れるな」

「‥‥‥うん‥‥‥」

その頃、一年生の教室でユネとユクは、門付近で抱きつく二人を見下ろしていた。

「計画」

「通り」

「あの二人が結ばれれば」

「一花姉様は」

「諦めるしかない」

「元会長がなんだって？あまりコソコソして悪いこと企んでるようならやめてくれる？」

「貴方は？」

「私は鈴穂」

「鈴穂」

「厄介」

「は？」

「なんだか」

「怖い」

「なんなのその喋り方。二人ともロボットなの？」

「この人が」

「双葉文月さんの」

「好きな人」

「はっ、は⁉︎アイツ私が好きなの⁉︎」

「知らなかった？」

「知らなかったけど‥‥‥く、詳しく教えて！」

「もちろん」

「喜んで」