結婚⁉︎
美山との間に気まずい空気が流れる中、美山は話を続けようとした。
「あ、あとは?」
「優しい」
「へ、へー」
「なんだよ!」
「私、いじめられてるのに、どうして仲良くしてくれるの?」
「俺には関係ないし、誰かに攻撃されて心が痛む感じ、俺は知ってるからな。正直、いじめられてるってこの前知ったんだけど」
「そうなの?」
「うん。でも、知ってからの方が仲良くしたいって思った」
「‥‥‥本当に優しい」
「いや!俺は別になにもしてないから!」
「文月くんは、なんでいじめられてたの?」
「あー、元々趣味で、ネットで配信活動みたいなのしてたんだけど、ハニートラップみたいなので、ないことを言いふらされて、周りが一気に敵になった」
「なにそれ最低!」
「でさー、もう騙されねーとか思って生きてきたけど、まんまと桜橋先輩にハニートラップ仕掛けられて、本当のアホは俺かもな」
「やっぱり会長許せない!」
「いやいや、桜橋先輩は案外いい人だと思ってる。あまり悪意を感じないし」
「ならいいんだけど」
「だからさ、今の時代で誹謗中傷を無くすのは多分無理だけど、いつか、自分の周りの人間だけでも、優しい心を持ってもらいたい。なんか、そういう仕事とかあればなって思う」
「でもさ、そういう活動したら、すぐ偽善者って言われない?」
「そういう人間は誰の心も動かせない。人を落として自分は間違ってないって安心したいだけだから」
「文月くんって、思ったより大人だね」
「そうか?でもまずは、俺が人を信じないとな!」
「それじゃ、私を信じて!それで私にアドバイスちょうだい!正直私は、誹謗中傷で毎日辛い。どうしたらいい?」
「逃げればいいよ」
「逃げる?」
「逃げたあとに前に進めばいい。逃げれなくなるまで追い込まれると、人は悲しい決断をしてしまうからな」
「そっか。逃げた先が辛かったら?」
「また逃げればいいんじゃね?」
「それじゃ意味ないじゃん!」
「自分はここから逃げたくない。そう思えるものと出会うまで逃げていいんだよ」
「‥‥‥今日からしばらく、SNS見ないようにしようかな」
「それがいいよ。美山は優しいからさ!きっと仲良くしてくれる人もいっぱいいる!」
「だといいな!」
「そもそも、なんでいじめられてるんだ?」
「それは分からない」
「教えてあげるわ」
「あ、会長戻ってきた」
「美山さんは可愛いからよ。実際、男子生徒からはいじめられてないじゃない」
「わ、私が可愛いだなんて!」
「ただの嫉妬だから、ほっとけばいじめは無くなるわよ。悪口を見た美山さんが辛そうな顔するから相手も続けるの」
「そうだぞ。三人で逃げよう!」
「私を巻き込まないでくれるかしら」
「俺を巻き込みまくってる桜橋先輩が言います⁉︎それより、もうメダルないじゃないですか」
「だいぶ楽しめたわ」
「それじゃ、今日はこの辺で解散しますか」
「もう帰るの?」
「久しぶりに人と遊んで疲れた」
「そっか、んじゃ解散で!」
今日は帰ることになり、家が真逆にある美山とは先に別れることになった。
「私こっちだから!今日は楽しかったよ!」
「おう。また月曜日な」
「月曜日は海の日で休みだよ!バイバイ!」
「さよなら」
「アホ会長もバイバイ!」
「‥‥‥」
美山は最後の最後で桜橋先輩に喧嘩を売って走り去った。
「アホじゃないのに」
「自覚しましょうね」
「ふん。でも、今日はありがとう」
「いいえ」
「こんな風に誰かと遊ぶなんて初めてだったから、とても楽しかったわ」
「これが友達、分かりましたか?」
「えぇ。次は恋人ね。火曜日までに調べておくわ」
「段階と同意の意味を調べてからにしてください」
「分かってるわよ。それと、美山さんとも遊べて楽しかったし、いじめをやめさせてあげるわ」
「美山は嫌がると思いますけど」
「大丈夫。私は仮にも生徒会長よ?火曜日を楽しみにしていなさい」
「分かりました」
「さぁ、帰りましょう」
「はい」
そして桜橋先輩と帰り始めたが、いつまでもずっと付いてくる。
今思えば、桜橋先輩の家も美山が帰っていった方にあるはずなんだけど。
「桜橋先輩、今どこに向かってます?」
「双葉くんの家に決まってるじゃない」
「なんで⁉︎どうして⁉︎何故に⁉︎」
「行ってみたいからよ?」
「来ないでください!」
「それじゃ、美山さんへのいじめを無くす話は無しね」
「はー⁉︎マジで子供じゃないですか!」
「ちょっとご挨拶するだけよ」
「挨拶なんて必要ないですよ」
「ありありのありよ」
「なしなしのなし!」
結局家まで付いてきやがった‥‥‥
「ただいま〜」
「おかえりー‥‥‥会長さん⁉︎」
「お世話になっております。桜浜学園、生徒会長を努めさせていただいている桜橋一花です。双葉くんのお母様でしょうか」
「は、はい!文月がなにか迷惑になるようなことでもしましたか?」
「いえ。私と双葉くんは将来結婚しようと考えています。これから長いお付き合いになりますので、ご挨拶に来ました」
「‥‥‥け、結婚⁉︎」
「はい」
俺は桜橋先輩が持っている、にんじんの抱き枕を奪い、桜橋先輩の後頭部目掛けて振り下ろした。
「にゅっ!痛いじゃない!」
「マジで勝手すぎるわ‼︎」
「ちょっと!会長さんになにしてるの‼︎怪我なんてさせたら大変よ!」
「大丈夫だよ!こいつマジのアホだから!」
「会長さんがどれだけ凄い方か分かってるの⁉︎それに女の子に手出して!文月は男でしょ!」
「このにんじん、ふわふわだからいいんだよ!」
「まぁまぁ、喧嘩なさらず。それで、私達の関係をお許しいただけないでしょうか」
「もちろんです!会長さんのような方が結婚していただけるなら今すぐにでも!」
「おい!」
「ありがとうございます。それでは今日は失礼します」
桜橋先輩が玄関を出て行き、俺もすかさず玄関を飛び出した。
「なにしてくれちゃってるんですか!」
「お礼ならいいのよ?」
「もうダメだ‥‥‥桜橋先輩には付き合ってられません」
「まだ付き合ってないのに?」
「いい加減にしないと、友達やめますよ」
「‥‥‥それは嫌」
「なんですか、急に悲しそうにして」
「だって、今日楽しかったから‥‥‥間違ったことをしたら分かるまで教えて‥‥‥突き放さないで‥‥‥」
桜橋先輩はふざけてるんじゃなく、本当にどうすればいいのか分かっていない。
それに俺は、突き放されて一人になる苦しみは、誰よりも分かってるつもりだ。
「分かるまで教えるので、勝手な行動はしないでください」
「分かったわ‥‥‥今日は帰るわね」
「はい」
桜橋先輩は帰ろうと歩き出すと、何故かすぐに振り返った。
「どうしました?」
「いつか、ちゃんと貴方を好きになるわ」
「え‥‥‥」
「だから、好きがなんなのか、ちゃんと分かるまで教えてね」
「‥‥‥」
どうしてだ‥‥‥桜橋先輩が放った言葉に、一瞬ドキッとしてしまった。
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