ポカポカアホの子


修学旅行後、三日間の休みを経て月曜日。

昇降口では、桜橋先輩がハワイに行った二年生から大量にお土産を貰っていて、困った表情で俺を見てきたが、めんどくさくてスルーして教室に向かった。


「副会長!」

「ん?」 

「ハワイのお土産です!」

「え?俺に?」

「副会長!」 

「副会長!」

「私もお土産です!」

「あ、ありがとう!」


なんだ⁉︎女子生徒が俺にお土産だと⁉︎


「会長に人が集まりすぎていて渡せなかったので、代わりに渡しておいてください!」

「あ、はい」

「私のもよろしくお願いします!」


クソが‼︎‼︎‼︎


結局大量のお土産を持って生徒会室にやってきたが、さっき桜橋先輩を無視してるし、なんかめんどくさそうだな。


「双葉くん!さっきはどうして無視したのよ!」


やっぱり‥‥‥


桜橋先輩は両手に大荷物で生徒会室にやってきて、俺と目があってすぐに文句を言ってきた。


「邪魔しちゃ悪いかと思ったので」

「もう朝から大変よ!」

「これも桜橋先輩に渡してって頼まれました」

「ありがたいけれど、どうやって持ち帰ればいいのよ‥‥‥」

「美山がいるじゃないですか」

「そうね!全部持たせれば問題ないわね!」

「半分にしてあげて⁉︎」

「分かってるわよ」

「それじゃ、俺は教室戻りますね」

「ちょっと待って。学園祭の準備は順調?」

「はい。後は前日に教室のカーテンを紫に変えればいいだけです。マジックは順調ですか?」

「完璧よ!」

「スプーン曲げですか?」

「今回は帽子の中から鳩を出現させてみせるわ!」

「おー、見に行きますね」

「是非、鳩の餌を持ってエレナとね」

「学園祭に来るんですか⁉︎」

「来るとしたらその日のはずよ」

「マジか‥‥‥」

「あまり怖がらなくて大丈夫よ?」

「桜橋先輩、エレナの先が見えてます?」

「私に敗北することになるわ」

「願望じゃなくてですか?」

「願望かしらね」

「‥‥‥なんか、少し弱気ですか?」

「エレナは問題ないけれど、後の二人のことを考えると少しね」

「どんな人なんですか?」

「双子の姉妹で、二人で一人みたいな感じかしら。私より先の読める人が二人いると思っておけば大丈夫よ?」 

「全然大丈夫じゃないんですけど!」

「だけれど、まずはエレナよ。地獄を見せてあげるわ」

「こわっ‥‥‥」 

「そうだわ!ジッとしててね」

「な、なんですか?」


桜橋先輩は正面から俺に抱きつき、耳に口を近づけた。


「ちょっと⁉︎」

「んっ」

「ひゃ⁉︎」


エレナの真似なのか、耳を甘噛みしたり優しく舐めたりを繰り返して、まったく離してくれない。


「消毒♡」

「誰かに見られたらどうするんですか!」

「誰も来ないわよ♡久しぶりの双葉くんの味♡幸せだわ♡」

「そういうことしちゃダメだって話したましたよね!」

「毎日我慢してるんだから、たまにはいいじゃない!ねぇ双葉くん」

「はい?」

「これはキスなのかしら」

「キスの上です!」

「なら、それを受け入れてくれたってことは、キスも‥‥‥」

「受け入れた?無理矢理じゃないですか!離してください!」

「双葉くん、赤くなってる♡」


あー、うざい。でも俺はこの人が好きなんだよな‥‥‥


「あ、あの」

「なに?」

「学園祭、1時間だけでも一緒に‥‥‥」


思わずしてしまったデートの誘いに驚き、桜橋先輩は恥ずかしそうに俺から離れた。


「た、楽しみにしてるわ」

「ん、んじゃ、俺は行きますね」

「うん」


完全に勢いだったけど、自分から誘えた!

でも、楽しんでる時にエレナが来たら最悪だな。


それから時間は経って放課後になると、今日は久しぶりにオカルト部の活動で新作のホラーDVDを見てから生徒会室にやってきた。


「ふ、副会長!」

「え?」

「会長がおかしくなりました!」

「紬ちゃん?なんでおかしいとか言うの?」

「ほら!私のこと紬ちゃんって!ずっとニコニコしてますし!」

「双葉くーん!お話ししーましょー!」

「え、なんかキモい」

「もう!ひーどーいー!あ!桃ちゃん!今日も可愛いね!」

「桃ちゃん‥‥‥」

「なんとかしてください副会長!頭ポカポカアホの子になっちゃてますよ!」

「そう言われても‥‥‥美山に頼みましょう!」

「お疲れ様〜」


ナイスタイミングで美山登場だ!


「あーんなちゃん!あーそーぼ!」

「‥‥‥いーいーよ!」

「乗っかった〜‼︎‼︎‼︎‼︎」

「もう生徒会は終わりです‥‥‥!会長がこんなんじゃ‥‥‥」

「あはは‥‥‥」


なんか‥‥‥俺がデートに誘ったのが原因な気がしてならない‥‥‥多分浮かれて、頭にお花咲いちゃったんだ。


「ピョコ蕎麦の真似しーましょ!」

「ぴょんぴょん!」

「ぴょんぴょん!」


こ、これはこれで可愛いからいいか。桃だって嬉しそうに見てるし。

紬先輩だけは絶望してるけど、学園祭が終わったら生徒会も解散だしな‥‥‥会長の威厳って呪縛もなくなる。残り少ない生徒会活動‥‥‥好きにやらせておこう。


「楽しいね!」 

「はい!」

「桃ちゃんもぴょんぴょんする?」

「ぴょんぴょん」

「桃ちゃん可愛い〜♡」


結局こういうことやらせたら桃が一番可愛いわ!

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