変態な先輩が俺と結婚しようとエッチな誘惑をしてきます‼︎

浜辺夜空

おっぱいって怖い‼︎


双葉ふたばくん、目を開けちゃダメよ?」

「は、はい」


俺は今、同じ高校の一つ上の先輩、二年生の桜橋一花さくらばしいちか先輩に手を引かれ、桜橋先輩の家に来ている。


「今私の部屋に入ったわよ」

「目開けていいですか?」

「いいわよ」


目を開けると、部屋は真っ暗で何も見えないが、目の前に桜橋さくらばし先輩がいることは分かる。


「ま、真っ暗ですね」

「時期に目が慣れるわよ」

「ですね。それはそうと、どうして俺は家に連れてこられたんですか?」

「連れてきたかったからよ?」

「はぁ、なるほど」


いや、全然分からないよ‼︎ちゃんと教えてくれます⁉︎


桜橋さくらばし先輩は二年生にして生徒会長を務める実力と学校一の美貌の持ち主で、そんな桜橋さくらばし先輩がオタクな俺を家に招くなんていまだに信じられない。

桜橋さくらばし先輩とは、つい最近、桜橋さくらばし先輩が落とした携帯を届けた時から毎日挨拶されるようになった、挨拶を交わすだけの関係なのに。


「や、やっぱり電気付けましょうよ」


暗い部屋に桜橋先輩と2人きりの緊張に耐えられずに手探りで壁を触ろうとすると、少し強めに腕を掴まれ、壁に追いやられた。


「な、なんですか⁉︎」

「見た?」

「え?」

「携帯の中、見た?」

「見てないですよ!」

「それじゃ、なぜあの携帯が私のだって分かったのかしら」

「通りすがりの先輩が教えてくれたんです!」

「そうだったのね、私誤解していたわ」

「あ、あはは‥‥‥」


携帯になにがあるのか気になるけど、絶対触れない方がいい!てか、もし見てたらどうなってたの⁉︎


「本当によかったわ。もし見ていたら、このまま双葉ふたばくんを監禁するつもりだったのよ」

「かかか監禁⁉︎」

「私の秘密を知ったら逃がさない。でも、双葉くんには知ってほしい気持ちも少しはあったわ」

「どうしてですか?」

「だって、双葉ふたばくんと一緒に暮らせるなんて素敵じゃない?」

「な、なに言ってるんですか⁉︎」

「あっ、そうだわ。双葉ふたばくんは私と暮らすことになるんだったわ」

「なんでです⁉︎」

「だって、秘密を知っちゃうもの」

「‥‥‥」


話しているうちに目が慣れ始めて部屋を見回すと、壁中に紙の様なものがビッシリ貼られているのに気付いた。


「なんかの写真ですか?」

「電気付けるわね」

「はい」


電気が付いた瞬間、全身に鳥肌が立ち、体が固まった。

壁中に貼られていたのは、学校での俺や、外での俺の写真だった‥‥‥


「見ちゃったわね」

「‥‥‥見てないです‼︎」


携帯の中も絶対俺の写真じゃん‼︎

黒く長い髪!ガラス玉の様に綺麗な目!薄い桃色の唇!こんな美人な先輩と一緒に暮らせるのは確かに最高かもしれない!でも桜橋先輩は狂ってる‼︎

この場を逃げるために、目を閉じて必死に見てないフリを貫くことにしよう!


「あら、本当に目を開けてないわね」

「はい!一切見ていません!」

「少しも?」

「はい‼︎携帯の中も見てないので今日は帰ります‼︎」

「携帯の中も写真よ?」

「なんですか⁉︎ポメラニアンの写真とかですか⁉︎さよなら‼︎」


部屋を出て全力で階段を駆け下り、急いで靴を履いている時、ふと振り返ると、桜橋先輩は一階には降りて来ずに階段の上から俺を見下ろしていた。


「また明日ね」

「は、はい」


俺を見下ろす桜橋先輩の目を見て悟った。

あの写真は、俺が好きだからとかじゃない。なにか違う、嫌な‥‥‥なにかを感じる‥‥‥


桜橋先輩の家を出て自分の家に向かって歩いている時、前から歩いてくる、スーパーの袋を持った同じクラスの美山杏奈みやまあんなと目が合った。


文月ふづきくんじゃん!」

「買い物の帰りか?」

「夜ご飯の買い出し頼まれてさー。それよりなんか‥‥‥顔色悪くない?」

「普通だよ普通」

「そっ!ならいいけどね〜」


美山は俺がなかなか周りと馴染めないのを見て話しかけてくれた、超可愛い友達だ。茶髪ロングでクリッとした目が可愛い!


「それより最近、会長と仲良さげ?」

「あぁー、挨拶する程度にな」

「でも会長って、結構怖い噂あるよ」

「ど、どんな?」

「告白してきた相手を無言で見つめただけで泣かせたとか」

「なにそれ。超能力でも使えんのかな」

「いや、あの目だよ!綺麗な目してるけど、興味ない人を見る時の目は死んでる!」


階段の上から見下ろす時の目つきがフラッシュバックして身震いがした。


「あ、あんま大きな声で言うな!」

「どうして?」

「とにかく俺は帰るわ」

「う、うん!また明日ね!」

「おう」


早く帰って、1人になって現実逃避しよう!


そして翌日。今日は七夕で、昇降口の前に笹が立てかけられ、自由に願い事を書いた短冊を吊せる様になっていた。


「文月くん!おはよう!」

「おはよう」


美山も願い事を書いた短冊を吊るしていたみたいだ。


「なに書いたんだ?」

「文月くんに友達ができますようにって!」

「なんだそりゃ」


めっちゃうれすぃ〜‼︎俺のこと書いてくれたの⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎なにそれ最高かよ‼︎


「文月くんも書きなよ!」

「俺はいいよ。みんなに見られて恥ずかしいし」

「つまんないのー」

「だって、願い事丸見っ‥‥‥」

「どうしたの?」

「桜橋先輩に謝った方がいいぞ」

「え?」


たまたま目に入ったピンクの短冊には、名前は書いていなかったが【貴方を見る私の目は死んでいますか?】と書いてあった。多分、昨日の話を聞かれていたんだ。


「あ、謝らなきゃ!文月くんも一緒に来て!」

「嫌だよ!」

「お願い!」


上目遣いで不安そうにお願いしてくるとは、男心を分かってやがる。


「ダメ?」

「‥‥‥分かったよ」

「生徒会室かな」

「朝だし教室じゃないか?」

「私になにか用かしら?」

「ヒッ!」

「どうしたの?双葉くん。そんなに驚いて」

「い、いや!なんでもないです!」


背後から急に現れた桜橋先輩に驚き、美山は青ざめながら頭を下げた。


「すっ、すみませんでした!」

「なにに対して謝っているのか理解できないわね」

「えっと、昨日は会長のいない所で変なこと言ってしまって」

「なにを言ったのかしら?」

「それは‥‥‥」


このままじゃ美山が可哀想だな‥‥‥


「あ、あの!」

「どうしたの?」

「美山も謝ってるので‥‥‥」

「そうね。それじゃ双葉くん、お茶でもしましょ?美味しい紅茶を持ってきたから」

「は、はい」


美山に目で助けを求めるが、美山は恐怖の余韻でそれどころじゃなさそうだ。

それもそうだ。この学校は有名な金持ち高で、生徒会長は絶対的権力を持ち、ほとんどの生徒の憧れで崇められる存在。決して逆らっちゃいけない人だ。


それから桜橋先輩について行き、三階の1番奥に堂々と存在する大きな扉を開き、真っ赤な絨毯じゅうたんの高級感が半端ない生徒会室へ招待された。


「水槽大きいですね」

「2メートルあるそうよ」

「そ、そうなんですか」


生徒会室の隅には大きな水槽が置かれてあり、金色のアロワナが1匹だけ泳いでいて、昔ドラマで見た、悪い社長がアロワナを飼っていたのを思い出した。


「さぁ、座って」


座り心地の良い黒く大きなソファーに座り、桜橋先輩は高そうなティーカップに紅茶を注いでくれている。


紅茶を作る姿も様になってるな‥‥‥


「どうぞ」

「ありがとうございます」


紅茶とクッキーを出してくれたが、こういう時に出されたものって手を出しにくいんだよな。


「いつも、あの美山さんって生徒と一緒にいるわよね」

「はい」 

「お付き合いしているの?」

「し、してませんよ!」

「そうなのね。ちなみに、大きいのと小さいのならどっちが好き?」

「なんの話ですか?」


桜橋先輩は自分の右胸を下からクイっと持ち上げ、淑やかな表情を見せた。


「ど、どっちも好きです!」

「つまらない回答ね」

「ご、ごめんなさい!」

「美山さんはあまり大きくないみいだけれど‥‥‥そうね、質問を変えるわ。美山さんの胸と私の胸、どっちが好きかしら?」


選べない‥‥‥どっちの胸も魅力的だ‼︎美山は第二形態ぐらいの進化途中で魅力的‥‥‥桜橋先輩は完全体ボイン‼︎どっちにも良さがある!どっちにしろここは桜橋先輩を選んだ方がいいだろう。


「顔を赤くしてないで、素直に答えなさい」

「さ、桜橋先輩のが」

「なに?」

「いいです」

「好きかどうかを聞いているのよ」

「す、好きです!」

「ちゃんと、誰の何がどうなのか教えてちょうだい」


この人ドSだ‼︎言わせて楽しんでやがる‼︎でもそんなに嫌な気はしない‼︎


「‥‥‥桜橋先輩の胸が好きです!」

「ありがとう」


桜橋先輩はお礼を言ってテーブルの下からボイスレコーダーを取り『桜橋先輩の胸が好きです!』と俺の声を流した。


「これ、校内で流しちゃおうかしら」 


ハ‥‥‥ハニートラップ‼︎‼︎‼︎


「なにが目的ですか⁉︎」

「私の婚約者になりなさい」

「はい?」

「私と将来的に結婚しなさいと言っているのよ。私に愛を教えて」

「なに言ってるんですか⁉︎」

「双葉くんは、他の生徒と違って親御さんが普通のサラリーマンよね」

「はい」

「随分無理して学費を払っているんじゃないの?」

「多分無理はしてます。俺は普通の高校でよかったんですけど、この桜浜さくらはま学園を卒業したら、将来が約束されるからって理由で」

「私と結婚すれば、家庭も楽になるわよ?」

「そういうので結婚はちょっと‥‥‥それにどうして俺なんですか?」

「私が双葉くんを選んだ本当の理由」


桜橋先輩は立ち上がって俺に近づき、俺も思わず立ち上がって後退りしてしまった。

だか、そのまま生徒会室の扉に追いやられ、桜橋先輩は俺の左胸に右手を添えて、弱い生き物を見下すような目をした。


「それは、双葉くんが憎いからよ」

「憎いから⁉︎」

「双葉くんは私が欲しいものを、なんの努力もせず、ただ机に顔を伏せているだけで手に入れた」

「‥‥‥もしかして、美山のことですか?」

「美山さんそのものが欲しかったものではないわ。美山さんのように、純粋に大切に想ってくれる存在が羨ましいのよ」

「えっとー、桜橋先輩は校内でかなり人気ありますよ?みんなの憧れの存在になってますし!」

「だけれど、私の周りには誰も居ない。憧れられるのは嫌な気はしないけれど、結局みんな、権力者が怖いのよ。誰も近づいてこないわ」

「それで俺を羨ましがって憎いから昨日家に連れて行ったんですか⁉︎なにする気ですか⁉︎グリンピース食べさせる気ですか⁉︎」


俺はグリンピースが世界で一番嫌いなんだ‼︎


「質問が多いわね」

「ごめんなさい!と、とにかく結婚とかはまだ考えられませんよ?」

「もっとお互いを知らないと。そう言いたいのね?」

「は、はい!そうです!」

「双葉くんの誕生日は今日、7月7日。身長174cmで血液型はB。一ヶ月に一回、家の近くの散髪屋で髪を切り、そのまま家には帰らずにリサイクルショップで美少女フィギュアを買うのがお決まりルート。大好物はお寿司のタコで、親御さんとお寿司屋さんに行くと、タコを四皿食べてからマグロを食べる一皿食べる」


どこまで知ってるんだ⁉︎怖いすぎるよ‼︎

早めの口調で言葉を挟む暇もないし‼︎


「嫌いな食べ物はグリンピース。私服は地味な色でシンプルなものしか着ない。美山さんしか友達がいなくて、よく仲良く話しているのを周りの男子生徒はよく思っていない」

「そうなんですか⁉︎」

「えぇ、そうよ」


俺の知らない、知りたくなかった情報まで知ってるし。


「私はこれ以上のことを知っているの。あとは、双葉くんが私を知るだけよ」


ここで完全否定で断ったら、今後の学園生活に計り知れない影響が出る。ここはやんわりと!


「し、しばらく考える時間をください」

「やっぱり双葉くんも私が怖いのね」

「当たり前じゃないですか!憎いから俺のこと調べまくって、ストーカーみたいなことしてたんですよね!めちゃくちゃ怖いですよ!」


写真も俺を詳しく知るためのものだったってことだ!


「‥‥‥」

「さ、桜橋先輩?」


やばい‥‥‥怒らせた‥‥‥退学だ〜‼︎


「ふっ、ふふ。あはははは!」


桜橋先輩が人間みたいに笑ってる〜‼︎可愛い‼︎なにその笑顔‼︎でも待って⁉︎初めてダメージを与えられたボスキャラとか、怒って笑いだすシーンあるよね⁉︎それだったらヤバくない⁉︎


「私にそこまでハッキリ言った人、双葉くんが初めてよ!」

「なんかすみません。桜橋先輩って笑うんですね」

「笑ってないわよ」


あれ?これまた意外にツンデレ?なにそれ可愛い。ギャップ萌えバンザイ。


「でも、どんな言葉でも本気で言ってくれると嬉しいわね!」

「意外です。怒ると思いました」

「ふふっ。心配しなくて大丈夫よ」

「あ、気になってたんですけど、昨日帰る時、階段の上から睨んでたのって‥‥‥」

「双葉くんに逃げられたことが悔しかったのよ」


俺をストーカーしてたのは事実だけど、本当に誤解されやすい人だな。


「俺はこれから拷問とかされるんですか?」

「そのつもりだったけれど」


そのつもりだったの⁉︎


「やめたわ」

「それは良かったです!」

「今日からよろしくね。双葉くん」

「はい」


俺は今、なにをよろしくされたのだろうか。多少不安が残る。


「さっそくだけれど、私ネットで見たことがあるわ!胸を揉まれることが愛って!愛し合う2人の行動らしいの!」

「いや!無知すぎません⁉︎」


そもそも俺達は愛し合ってないし‼︎

それに桜橋先輩ってこんな明るく喋るの⁉︎意外すぎてビビるわ‼︎


「無知?私が?」

「冗談でございます‼︎」

「そうよね!」

「はい!」


笑顔で楽しそうに話す桜橋先輩が可愛すぎて、思わず見惚れてしまいそうになる。


「早く揉んで!」

「ダメですよ!」

「優しくでも強くでもかまわないわ!さぁ、揉んで愛を教えてちょうだい!」

「そういうのはこの人って決めた、好きな人にしてもらうものなんです!」

「双葉くんを選んだのよ?」

「いやいや!俺のこと好きじゃないじゃないですか!元々は嫉妬みたいなので拷問しようとしてたんですよね!」

「それが不可能だと分かったから愛を教えてほしいとお願いしてるのよ。さぁ!早く愛を!」


桜橋先輩は制服のリボンを取り始め、俺は慌てて扉に手をかけた。


「お願いする相手を考え直してください!それじゃ失礼します!」


結局、逃げたい気持ちが勝ち、紅茶とクッキーには手を付けずに生徒会室を飛び出して教室に戻り、いつものように机に顔を伏せた。


文月ふづきくん、大丈夫?会長にいじわるされなかった?」

「いや‥‥‥おっぱいって怖いなって‥‥‥」

「えっ⁉︎」

「ハニートラップカードで精神にダイレクトアタックされて、俺のHPはマイナス5億。【無知は罪で無敵】カードも使われた‥‥‥」

「へ、へー。と、とにかくなにか悩み事があるなら話聞くからね!」

「ありがとう美山。それよりあれだ、俺とあまり話さない方がいいぞ」

「どうして?」

「俺と話すことを周りがあまりよく思ってないんだってよ」

「私は気にしないよ?」

「俺が気にするから」

「そ、そんなこと気にしなくていいのに!」


美山の声が少し怒っているように感じた。


「なんか怒ってるか?」

「お、怒ってないよ?それじゃ授業始まるから頑張ろうね!」

「おう」


はぁ‥‥‥こうなったのも、全部おっぱいのせいだ‥‥‥おっぱいは男をダメにする。

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