会長はムラムラしている!
「文月くん!雪!」
「そうだなー」
「初雪だよ!」
「本当ね。千葉はそんなに積もらないし、気にすることないわね」
「会長、夢無さすぎなんですけど」
美山と桜橋先輩と一緒に、放課後に生徒会室に集まっているが、あの半分子供事件以来、紬先輩が顔を出さない。
「雪ではしゃぐなんて、小学生までよ?」
「えー」
「それより伊角さんは?最近顔を出さないけれど」
「ちゃんと生えたら来るって言ってましたよ」
「そっ」
会話が生々しいな‥‥‥
「そういえば帰り道のケーキ屋さんに、雪だるまの形したケーキがあるみたいですよ!あっ、でも会長は雪とか興味ないだろうから、私一人だけ買いますね!」
「それじゃ双葉くん。私のお気に入りのケーキ屋さんに行きましょ?」
「奢りですか?」
「もちろん!」
「行きます」
「ふ、文月くん!雪だるまのケーキ奢るよ?」
「一流の人間が作る高級ケーキに興味はない?」
「ケーキ全種類奢ってあげるよ!」
「ケーキを食べて満たされたら、一緒にフィギュアを見に行きましょう」
「会長!それはズルい!」
「美山さんは一人でお子ちゃまケーキでも食べていなさい」
「は?」
「は?」
「はー?」
「はー?」
また始まったよ‥‥‥
「仲良く三人で行きましょうよ」
「それじゃ美山さんの行きたいケーキ屋さんでいいわ」
「最初から行きたいって言えばいいんですよ」
「そうそう。桜橋先輩、雪だるまの形したケーキって聞いた時、トキメイた乙女の顔してましたよ?」
「してないわよ!」
「んじゃやっぱり美山と二人で行きますね」
「さすが文月くん♡」
「だったら勝手にすればいいじゃない‼︎」
桜橋先輩は大きな声を出し、勢いよくパソコンを閉じて帰ってしまった。
「まさか怒った?」
「会長が怒って帰るなんて初めてだね」
「一緒に暮らしてるなら、ケーキ買って行ってあげろよ」
「12月に入ってからは泊まってないよ」
「マジかよ」
まぁ、トドメの一発は俺が与えたっぽいけど。それに多分、俺に怒ってたし。
美山とケーキ食べて、帰りに桜橋先輩の家寄るか。
「ケーキどうする?」
「とりあえず行くか」
「うん!」
美山の家の方に向かって二人で歩き、ケーキ屋さんを目指した。
「雪だるまのケーキ、数量限定みたいだから少し急ご!」
「おう」
小走りでケーキ屋さんにやってくると、すでに8人のお客さんが並んでいて、美山が不安そうな表情でソワソワし始めた。
「大丈夫かな、無くなっちゃうかも!」
「無くなったら普通の食べればいいよ」
「すごい可愛いの!絶対雪だるまがいい!」
その時、最後の一つが売れるところを見てしまい、前に並んでいたお客さんもガッカリして帰って行った。
「私の雪だるまが!」
「ざ、残念だったな。他の食べようぜ」
「もう食べる気無くなった」
「えぇ‥‥‥」
俺は結構、ケーキ食べる気満々だったんだけど。
「帰るか?」
「せっかくだからなにか食べるけど、文月くんなにがいい?」
「俺はチョコレートケーキかな。冬って不思議と甘い物食べたくなる」
「分かる!私もチョコレートケーキにしよ!」
「今回は自分でお金払うよ」
「奢るのに」
「大丈夫だ」
美山と他のレジで注文することになり、男一人でケーキ屋で注文をすることに、若干の恥じらいを感じながらも注文を始めた。
「チョコレートケーキ二つと、シュークリーム一つお願いします」
「かしこまりました!」
そしてケーキを受け取り、なんだかんだ機嫌が直った美山と店を出た。
「これやるよ」
「え⁉︎どうして⁉︎」
「なんとなく」
美山にシュークリームを渡し、うっすら積もった雪をかき集めて小さな雪だるまを作った。
「なにしてるの?」
「これで我慢しろ」
「‥‥‥文月くーん!」
「ばか!ケーキ潰れるっての!」
美山は喜んで大胆に抱きついてきたが、俺は嬉しさよりも周りの目が気になってそれどころじゃない。
「ありがとう!なんか、逆にケーキ売り切れて良かったかも!」
「そ、そうか。雪だるまは玄関前にでも飾っておけ」
「そうする!」
「んじゃ、ケーキも買ったし帰るか」
「わざわざ家と逆の方に来させてごめんね?」
「いいよ。たまには運動しなきゃな!」
「ならよかった!また明日ね!」
「気をつけて帰れよ」
「はーい!」
ルンルン気分で帰っていく美山を見送り、俺は桜橋先輩の家に向かった。
桜橋先輩の家に前に着いて、すぐにはチャイムを押さず、また小さな雪だるまを作ってチャイムを押した。
「ふ、双葉くん?」
桜橋先輩は扉を開けずにインターホン越しに喋りかけてくる。
「入れてもらっていいですか?」
「い、今行くわ」
桜橋先輩は、何故か俺と目を合わせず玄関の扉を開けた。
「雪だるまあげます」
「私に?」
「はい。溶けるので外に置いてくださいね」
「今すぐ置くわ!」
テクテクと外に歩いて行き、雪だるまが壊れないように、そっと玄関前に雪だるまを置いて戻ってきた。
「雪だるまのケーキは目の前で売り切れちゃったので、チョコレートケーキ買ってきましたよ!一緒に食べません?」
「どうして優しくしてくれるの?私、あんなきつく当たっちゃったのに」
「いやー、さっきは怒らせちゃったので、ごめんなさいの意味も込めて」
「私が悪いのよ」
「おちょくった俺が悪いです」
「ううん、違うの。最近忙しくて、少しイライラしていたの。ごめんなさい」
「生徒会メンバーも増えたんですから、ちゃんと頼ってくださいよ」
「ごめんなさい‥‥‥」
「と、とにかく食べません?あと、仲直りってことで!」
「そうね!ありがとう!」
なんとか桜橋先輩は明るい顔を取り戻し、リビングで一緒にケーキを食べ始めた。
「美山さんと買いに行ったの?」
「はい。ちなみに、後から喧嘩にならないように言いますけど、雪だるまは美山にもプレゼントしました」
「ま、まぁ、それは同じことなら文句言わないって約束もしてるからいいわよ」
「めっちゃ不満そうですけど⁉︎」
「‥‥‥私、2番目なんだ。どうせ私は2番目」
「メンヘラみたいになってますよ⁉︎ケーキ食べて元気出して⁉︎」
「で、でも、それでも双葉くんが好きよ」
「‥‥‥ケ、ケーキうまっ」
「スルーしないでよ!」
「しますよ!そんなこと言われたら俺だって恥ずかしんですから!」
「ごめんなさい」
「いや、今日謝りすぎですから」
「確かにそうね。それに、美山さんのこともちゃんと好き。もしも私の願いが叶ったら、私は美山さんに頭が上がらないわ」
「どういうことですか?」
「あっ、いや‥‥‥ケーキ美味しいわね!」
今、完全に話流した。
そして俺は思った。美山と桜橋先輩が二人でした約束、俺に教えてくれた内容以外にも、約束、または話がなにかある気がする。
「今、なにか隠しましたよね」
「なにも?」
「俺、嘘つく人嫌いです」
「私‥‥‥嫌われちゃうの?」
「やっぱりなにか隠してるじゃないですか!」
「い、言えないの!これは絶対に!ごめんなさい‥‥‥」
「分かりましたから、もう謝らないでください」
「分かったわ。言えないかわりに、お尻触る?」
「お尻⁉︎」
「その、好きなんでしょ?最近は体で愛を感じることも少なくなったし、ムラムラするのよ」
「ムラムラって言った⁉︎」
「寂しいの間違いよ」
「美山と話すようになって、愛とムラムラの違いに気づいたならそう言ってください!」
「チョットニホンゴワカラナイ」
「おい‼︎」
まぁいいや。さっきの話はすごく気になるけど、女の子同士の話だしな‥‥‥でも桜橋先輩なら、いつかボロを出すだろ。
それからケーキを食べ終えてすぐに帰宅したが、その日は桜橋先輩と美山が俺に秘密にしていることで頭がいっぱいになって宿題が手につかなかった。
桜橋先輩ならまだしも、美山が俺に隠し事か‥‥‥
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