寂しがり屋?


生徒会に入って数日が経ったが、全部の仕事を桜橋先輩1人でやってしまうため、やることがない。

それに毎日毎日、わざとパンチラしてきたり、俺の靴下を奪って匂いを嗅いだり、いつの間にかスクールカバンに下着が入れられてあったりと、困ることの連続だ。

そのせいで俺の家には、桜橋先輩の黒いパンツと水色のパンツが二枚存在している。

なかなか捨てるに捨てられない。


「9月に入っても暑いわね」

「だからってワイシャツのボタン外さなくていいですよ」 


今日も放課後は生徒会室で誘惑されている。

ただ少し変わったのは、恥じらいを持って頑張って誘惑してくるようになったことだ。

俺的にこっちのほうが興奮する‥‥‥


「私、8日から10日まで修学旅行でハワイに行くの」

「おー、さすが金持ち学園」

「私が居なくなって寂しいかしら?」

「別に」 

「なんでよ!寂しいでしょ!」

「やっと静かな放課後がきてハッピーでーす」

「もうやだ!」

「はいはーい、よちよーち」

「私は先輩なのよ?子供扱いしないで」

「はーい」

「本当に分かってる?」


桜橋先輩はテーブルに両手をついて身を乗り出した。


「分かりましたから」


分かったからワイシャツのボタン外したまま前屈みにならないで⁉︎谷間にしか目がいかない‼︎


「ならいいけど。私の修学旅行中、この学園を頼むわね」

「具体的になにすればいいんですか?」

「アロワナに餌をあげてちょうだい」

「それだけですか⁉︎」

「そうよ?」

「なら任せてくださーい」

「あと、必ず私からの電話に出ること」

「寂しいからですか?」

「ち、違うわよ!」

「へ〜」


そんなこんなで二年生の修学旅行初日、桜橋先輩が居ないからか、学園内の雰囲気が少し明るい気がする。


「文月くん!」

「おう美山、おはよう」

「おはよう!学園祭の準備頑張ろうね!」

「俺達のクラスってなにするんだっけ」

「聞いてなかったの?」

「多分寝てた」 

「ソフトクリーム屋さんやるんだよ!」

「へー、美味そう。準備ってなにするんだ?」

「教室をお店みたいに改造するんだって!」

「マジか。俺生徒会の仕事で忙しいからパス」

「えー⁉︎」


みんなで協力して作業するとか地獄だ!生徒会室に閉じこもろう!


早歩きで生徒会室に向かい、扉を開けると、何故か桃がアロワナの水槽の前に立ち、一人でアロワナを眺めていた。


「うわっ!」

「驚かないでくださいよ」

「すまんすまん。なにしてるんだ?」

「一度じっくり見てみたかったので」

「朝礼遅れるぞ」

「双葉さんはいいんですか?」

「俺が来てることは美山が伝えてくれるだろうから、多分大丈夫だ」

「そうなんですか」

「餌あげてみるか?」

「いいんですか?」

「あぁ、そこの袋から25粒あげるらしい。あげてみろ」

「分かりました」


桃はアロワナに餌を与え、嬉しいのか体を横に揺らし始めた。


「いいですね、大きい魚はカッコいいです。この魚が死んだら、きっと生徒会室の幽霊になるますね」

「縁起でもないこと言うな」

「すみません。そういえば、会長と双葉さんはセフレなんですか?」

「は⁉︎」

「会長が言ってました『私と双葉くんは、もうセフレに近い関係よ』って」 

「違うからな!桜橋先輩はセフレがなんなのか分かってないんだよ!」

「会長って可愛いですよね。憧れです」 

「憧れる相手考え直したほうがいいぞ」

「私、人間観察も好きなので、よく会長を見てるんです。会長は時々なにかを思い出したかのように女の子らしい表情になるんですが、生徒が近づいてきた瞬間、氷のような目つきになります。可愛いです」

「か、可愛いか?」

「副会長!大変です!」


突然勢いよく扉が開き、三年生の男子生徒が慌てた様子で入ってきた。


「副会長って俺ですか⁉︎」

「そうですよ!」


俺って副会長だったの⁉︎てか、副会長になると先輩からも敬語使われるんだ!生徒会すげー!


「学園に幽霊が出ました‼︎」

「どこですか」


桃が食い気味に聞いた。


「3年C組!」


場所を教えられると、桃はすごいスピードで走って行ってしまった。


桃ってあんな動きできるんだ‥‥‥


「副会長も早く来てください!」

「嫌なんですけど」

「んじゃどうすればいいんですか⁉︎」

「今走って行った桃はオカルト部です。なんとかしてくれますよ」

「そ、そうですか」


先輩は諦めて去って行ったが、なにか引っかかる。学園内には人がいっぱいいるし、そんな中で幽霊が出たとかなら助けなんて求めないだろう。むしろ仲のいい人同士で『見に行こうぜ』みたいなノリになるはずだ。

まぁ、考えても仕方ないか。


その時、桜橋先輩から電話がかかってきた。


「はい」

「ア、アロハ〜」

「ハワイに影響されすぎです」

「さっきハワイに着いたわ」

「そうですか。んで、どうしました?」

「なにしているの?」

「アロワナに餌あげてました」

「そうなのね」

「はい」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「用がないなら電話しないで⁉︎」

「あ、移動するみたいだから切るわね」

「はいはい!」


本当なんなんだよ‼︎やっぱりただの寂しがり屋じゃん‼︎


するとまた生徒会室の扉が開き、次は美山がやってきた。


「文月くん!」

「どうした⁉︎」

「幽霊が出たよ!」

「待って、マジで出てんの?」

「来て来て!」

「おう」


美山と一緒に三年C組にやって来ると、そこには人だかりができていて、人混みの後ろの方で桃が背伸びをしたりジャンプをして中を見ようとしていた。


「あ、副会長」

「ど、どうも」

「みんな副会長を通して!」


おー、なんか気分がいいぞこれ。


優先して教室に入ると、一体の血だらけのマネキンが立っていた。


「まさかあれが幽霊って言いたいんじゃないですよね」

「あれですよ!」

「お化け屋敷の道具じゃないんですか?」

「そうですけど、勝手に動いたんですよ!」

「勝手に‥‥‥」


そんなことある⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎


それから一限目のチャイムが鳴っても誰も教室に戻らず、むしろ先生達も怖いもの見たさで集まって来た。


「ちょっと双葉くん」

「はい」


担任の女性教師、川崎かわさき先生に廊下に呼ばれて教室を出た。


「なんですか?」

「みんなを教室に戻してくれる?」

「あ、はい。みんな教室に戻って自分達の作業をしてください」


その一言でみんなはばらけて行き、やっと中が見れた桃は、これでもかと写真を連写している。


「双葉くんと美山さんも教室戻りなさい」

「はーい。文月くん、行こ?」

「おう‥‥‥」


結局俺も教室に行くことになってしまった。

そういえば、美山と桜橋先輩に気を取られてたけど、川崎先生も若くて童顔で可愛いよなー、胸はまな板だけど。


結局、幽霊事件の謎は謎のままになり、俺も泣く泣くソフトクリーム屋の準備を手伝った。


「ねぇねぇ文月くん!学園祭当日は一緒にソフトクリーム作ろ!」

「あぁ、俺も美山がいてくれた方が助かるわ」

「ほ、本当?」

「他に友達いないし」

「文月くんは他に友達なんて作らなくていいの!私がいればいいでしょ?」

「まぁ確かに。美山と桜橋先輩が仲良くしてくれるし、それだけで割と充実してる」

「どうして会長の名前が出てくるの?」


美山は目を大きく見開き、周りに聞かれないように小さな声で会話を続けた。


「い、一応友達みたいな人だし」

「みたいな?」

「友達です」

「友達なの?」

「違います」

「だよね。よかった!文月くんが私以外の女の子と仲良くするわけないんだもん」


このタイミングで桜橋先輩から電話が〜‼︎‼︎‼︎


「あ、親だ。もしもし」


親と嘘をついて電話に出ると、ビデオ通話にされて、自動でスピーカーに切り替わってしまった。


「ハワイの砂よ」

「どうでもいいよ‼︎海見せろよ‼︎」


慌てて電話を切ると、美山はニコニコしながら携帯を奪い、桜橋先輩の電話番号を着信拒否にしてしまった。


「これでもう大丈夫だよ♡」

「あ、ありがとう」

「えへへ♡」


自分勝手とかじゃなく、美山の場合、本気で桜橋先輩が俺を汚してるって思ってそうなあたり怖すぎる‼︎多分逆らったら桜橋先輩がなにかされるし、俺は大人しくしておいたほうがいい。


そして1日中、学園祭の準備をして放課後にまたアロワナに餌をあげて家に帰ると、桜橋先輩から大量のメッセージが届いていることに気づいた。

メッセージにはなんの文字も書いていなく、不気味さを感じる。


桜橋先輩、もしかしてヘラっちゃったんじゃ‥‥‥


そして無視しようとした瞬間、メッセージの通知音が鳴って確認すると『見てるの分かってるわよ』とメッセージが届き、続け様に、顔が写らないアングルで体にタオルを巻いたお風呂上がりの写真を送ってきて、しっかり保存したうえで無視してフィギュアのホコリを取るのに集中した。


「文月ー?会長さんから電話よー」


家電にかけてきやがった〜‼︎


急いで一階に降りて子機を手に取った。


「なんですか?」

「ねぇ!なんで無視するの!電話も繋がらないし、私寂しい!じゃなくてアロワナ元気かしら」

「誤魔化すのド下手か‼︎」

「どうして電話にでないの?」

「美山に桜橋先輩の番号を着信拒否されました」

「解除しておきなさい」

「またされますよ?」

「それじゃ美山さんに伝えておいて」

「なにをですか?」

「私と双葉くんの電話を邪魔しないでいてくれたら、双葉くんのパンツをあげるって」

「言えるか‼︎まずあげたこと言わないでくださいね⁉︎」

「んー、うん」

「は?誰かに言いました?」

「岡村さんに」

「桃はいいですよ。多分誰にも言わないので」

「よかったわ。それじゃお土産買っていくからまたパンツちょうだいね」

「意味わからないんで切りますね」

「ま、待て」

「なんですかー」

「さっきの写真‥‥‥どうだったかしら」

「速攻消しました」

「頑張ったのに酷いわ!」


保存したなんて言ったら絶対調子に乗るし言わない方がいい。


「頑張りが足りないです」

「わ、分かったわよ‼︎」


急に怒ったように電話を切られ、水を飲んでから部屋に戻ると、桜橋先輩から一枚の写真が送られてきていた。

その写真は腕で胸を隠し、下半身はタオルを置いて隠しているスーパーきわどい写真だった。


「保存‥‥‥」


これを愛だと思ってるの、いい加減辞めさせないとな‥‥‥俺じゃなくて他の男に乗り換えでもしたら、その男が悪い男だった場合可哀想なことになる。でもこの写真はありがとうと言いたい。


そして次の日、下駄箱前で美山に携帯を見られて秒で写真を消されてしまった。俺の心は泣いている。


「こういうの見たいなら、いつでも私が見せてあげるから!」


あ、桜橋先輩のってバレてない。


「勝手に保存されてただけだよ」

「本当?」

「マジマジ」

「そっか!文月くんが嘘つくわけないもんね!」


すんげー罪悪感!なにこれ!


「そうだ!学園祭の日、大事な話があるから一緒に行動しよ?」

「え、うん。いいけど」

「約束ね!」

「おう」


美山は相変わらずニコニコして教室に歩いて行った。


まさか‥‥‥告白ですか⁉︎女が大事な話とか言い出す時は告白か別れ話って決まってるんだ!もしくは妊娠!この中で当てはまるのは告白だろ!俺はどうしたらいいんだ⁉︎

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