美少女会長の尻はプルンプルン


8月26日、夏休みも終わって二学期の始業式を済ませ、さっそく普通授業が始まった。

夏休み明けの学校のダルさは何年経験してもダルい。ダルいとしか言いようがない。


そして午前の授業が終わると、教室に桜橋先輩がやってきて、俺の机になにかを置いた。


「新しい紋章よ」

「ありがとうございます」

「放課後は生徒会室に来るように」

「はい」


桜橋先輩はそれだけ言って教室を出て行った。


美山もさすがにみんなの前じゃ桜橋先輩に喧嘩売ったりしないんだな。貧乏ゆすりすごいけど。


「いてっ」


消しゴム‥‥‥?


誰かに消しゴムを投げられて周りを見渡すと、三人の男子生徒がニヤニヤしていて、俺は消しゴムを拾って教室のゴミ箱に一発シュートを決めた。


「は?なにやってんだよ」

「ごめん。いらないから投げたのかと思った」

「双葉、お前調子に乗りすぎだろ」


男子生徒は俺に近づき、胸ぐらを掴んで俺を立たせた。その時、教室の外に桜橋先輩の長い黒髪がチラッと見えたが、助けてくれる気配が一切ない。

美山は不安そうに俺を見ているだけだ。


「調子に乗った覚えはないよ」

「とりあえず屋上でも行くか」


絶対屋上でボコボコにされるー‼︎‼︎‼︎‼︎


「ほら行くぞ」

「待って‼︎」

「美山?」


美山は震えた脚で立ち上がり、俺と男子生徒の間に立ちはだかった。


「やめて」 

「杏奈には関係ないだろ」

「みんなには関係あるの?みんな文月くんになにかされた?直接被害もないのにかっこ悪いことしないで!‥‥‥私をいじめてる人もだよ!もうやめて‼︎」

「‥‥‥わ、分かったからムキになるなって」

「文月くん行こう」


そのまま美山と一緒に教室を出ると、桜橋先輩の姿は無く、俺はそのまま屋上に連れて行かれた。


屋上に着いても美山は脚が震えていてる。


「まさか美山が俺をボコボコに⁉︎」

「なんで私が!‥‥‥本当‥‥‥怖かった」


あれ?冗談だったんだけどな。


美山は俺の胸に飛び込み、体を震わせて涙を流してしまった。


「‥‥‥頑張ったな」

「うん‥‥‥もう怖くない。なんか、立ち上がった瞬間に自分が変われた気がしたの」

「きっと変われたよ。美山は凄い奴だ」

「これからは前向きに悪口なんて無視して生きる。なにかあれば、これからも文月くんのこと守る」

「ありがとう。さっき、本当助かったよ。だからとりあえず離れてくれないか?」

「どうして?」

「ど、どうしてって」 

「私に抱きつかれて嫌だ?」

「嫌じゃないけど、普通に恥ずかしい」

「しばらくこのままいさせて」

「お、おう」


心臓の音、絶対聞こえてるよな‥‥‥あー!恥ずかしい‼︎

にしても、桜橋先輩はなんであの時しばらく様子を見てたんだろう。もしかして、俺が生徒会に入ったのを広めたのはやっぱり桜橋先輩で、美山が恐怖に勝つことを踏んで‥‥‥なわけないか。でも後で軽く聞いてみよ。


「ねぇ文月くん」

「なんだ?」

「私のこと好き?」

「え」


その瞬間屋上の扉が開き、桃が顔を覗かせた。


「うわ!びっくりした!」

「双葉さん、会長が呼んでました」

「あ、あぁ、ありがとう」

「この子誰?身長低っ!座敷童みたい!」

「いきなり二つも悪口言われて悲しいです」

「ご、ごめん!そういうつもりじゃなかったの!」

「分かってます」

「そ、そっか」

「んじゃ俺は行くわ」

「行っちゃいや!」


美山は俺の腕にしがみつき、それを見た桃は首を傾げた。


「お二人は付き合ってるんですか?」

「そうだよ!」

「はい⁉︎」

「だから文月くんに手出さないでね!」

「出しませんよ。双葉さんとは心霊友達です」


そんな友達になった覚えはないけど、まぁいいや。


「俺と美山は友達だ」

「え⁉︎」

「なんで美山が驚いてんだよ!早く行かないとめんどくさそうだから行くぞ」

「私も行く」

「分かった分かった」


流石に校内に戻ると腕から離れてくれたが、ピタリと隣を歩かれて、結局周りの視線が痛い。

そして美山と一緒に生徒会室に入ると、桜橋先輩は無言で立ち上がり、美山の体を生徒会室の外に押し出した。


「なんで出すんですか⁉︎」

「美山さんは呼んでないわ。数分でいいから出ていなさい」

「また文月くんに変なことする気ですよね!」

「そうだそうだ!」


調子に乗ると、ギロッと鋭い目つきで睨まれ、怒っても怖くないことを知っているのに怖すぎて、美山を廊下に残して扉を閉めた。


「閉めてくれてありがとう」

「いえ」

「美山さんのことだけど、もう大丈夫そうね」

「やっぱり桜橋先輩が一枚噛んでましたか」

「本当は言うつもりはなかったんだけどね。美山さんはあの後も逃げずにやりきったのよね」

「はい。最初からこうなるって分かってて、俺が生徒会に入ったことを広めたんですか?」

「もちろん」

「‥‥‥天才!マジで天才!そういうところは尊敬します!」

「え、あ、ありがとう」

「照れないでくださいよー」

「照れないわよ!」

「顔赤いですよ?」

「熱があるのよ」

「んじゃ帰ってください。さよなら」

「いきなり冷たくしないでよ!」

「はいはい。でも、言うつもりないのに、なんで話してくれたんですか?」

「それは‥‥‥」

「それは?」

「ご、ご褒美に愛を感じたくて」

「今変なことしたら、すぐに美山が入ってきますよ?」

「大丈夫よ?ここは防音だと言ったでしょ?」


嫌な予感がしたその瞬間、桜橋先輩は俺に抱きつき、俺の右手をスカートの中に入れてお尻を触らせ始めた。


「お尻⁉︎」

「好きなだけ触って!私も双葉くんのを触る!」

「待って⁉︎」


ズボッとズボンの中に手を入れられ、お尻を撫でられてしまった。


「なんの記事読んだんですか‼︎」

「恥ずかしいところを触り合うのは、心を開いた証拠なのよ!舐め合って触り合うのは常識!前から言ってるじゃない!」

「無理やり心開かせてどうするんですか‼︎」

「ほ、ほら、パンツの中に入れていいのよ?」

「できませんよ!」


やーわーらーけー‼︎‼︎‼︎モッチモチのプルンプルンだ‼︎‼︎嫌なふりしながらしばらく触らせてもらお‼︎


「できないなんて言って、揉んでるじゃない!」

「それは男の本能が働いてるだけで俺は悪くないです!」


桜橋先輩はズボンから手を抜き、俺の前右太ももを撫で始めた。


「次はお互いに前を」

「それは絶対無理‼︎死んじゃう‼︎」


無理やり桜橋先輩から離れると、抱きつかれていたせいで見えていなかった顔が見え、桜橋先輩は顔を赤くし、少し涙目になっていた。


「なんで泣きそうなんですか⁉︎」

「だ、だって、双葉くんが予想よりも触るから!なんか、胸がキューってなって。分からないけど、抱きつくだけでも、前までと違うよく分からない気持ちが込み上げてくるのよ!」

「本当は心の中で俺を拒絶してるんじゃ⁉︎」

「え?私はそんなこと思ってないわよ‥‥‥」

「んじゃなんで⁉︎」

「自分で分かってなくても、拒絶してることってあるのかしら」

「あると思いますけど」

「そう‥‥‥私、自分の気持ちがよく分からないわ。花火をした日からなにか変なのよ!」

「主に頭がですか?」

「違うわよ!何をしてても双葉くんが頭に浮かんで、浮かぶたびに体がソワソワするのよ」

「殺意に満ち溢れてるんじゃないですか⁉︎俺、お昼まだなので!」


生徒会室を出ようとすると腕を掴まれ、振り返ると桜橋先輩は左胸を押さえて俯いていた。


「立ち去ろうとする双葉くんを見ても、胸がキューッとなるの。抱きついても、離れても‥‥‥よく分からないのよ」

「分からないなら調べたらいいじゃたいですか」

「このよく分からない感情は、双葉くんが教えてくれた。だから、理解できるまで双葉くんが教えて」

「‥‥‥‥‥‥俺のこと‥‥‥‥‥‥いや、俺も分からないです」

「双葉くんも分からないの?」

「はい。きっと時間が経てば分かるんじゃないですか?」

「そうね‥‥‥分かるまで、この胸の締め付けを経験しなければいけないのね。やっぱり一番恥ずかしいところを触り合いましょう!」

「パーンツ脱がないで〜⁉︎」

「いつでも触って?」


か‥‥‥可愛い‥‥‥

下着を握って顔を赤くしながらモジモジする桜橋先輩は、男心をくすぐる塊だ。

でもここで本当に触ったら、その後の関係の責任を取らなくちゃいけなくなる。やっぱり逃げよう。


「お、お腹すいたので!」


勢いよく生徒会室を飛び出して扉が閉まると、美山は不思議そうな表情で俺を見つめた。


「な、なんだ?」

「文月くんが出てくる時、会長の様子が変だったよ?」

「え?」

「なんか、胸に手を当てて蹲ってた」

「‥‥‥き、気にすることないよ」

「だよね!一緒に食堂行こ!」

「おう」


桜橋先輩はきっと、俺のことが‥‥‥いや、まだ分からない。ただ尻触られて興奮して訳分からなくなってただけかも。


美山と食堂に行き、きつねうどんを食べている時も、頭の中はそればっかりだった。


「美山」

「んー?」

「お尻触っていいか?」

「‥‥‥」


俺はなにを⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎


「ち、違うんだ!ちょっと確かめたいことがあったというか!忘れてくれ‥‥‥」

「いいよ。文月くんならなにされてもいい」

「だから冗談で!」

「食べ終わったら、また屋上行こうか。で、でも、ちゃんと付けてね?私初めてだし、これでも緊張してるんだから」

「‥‥‥」


アウトだよ‥‥‥これはヤバイ。断っても怒るんじゃないか⁉︎


「や、やっぱりさ、まだ早いよな!」

「え?」

「女の体は大切にしなきゃ!」

「文月くん♡私のこと大切に思ってくれるんだね!やっぱり文月くんは私が好きなんだ♡私は文月くんのタイミングでいいからね♡」

「は、はい」


隅の席を選んで正解だった。今日は人も少ないし、こんな話聞かれたら死んでたわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る